補論:プロローグとは何か。必要か不要か
うむ?質問があると。
ふむ、プロローグについてか。なるほど。プロローグという言葉をどう理解しているだろうか?
プロローグという言葉は元々の意味より変質し、オープニングと同義で使われている趣の強い言葉であると言える。
本来は演劇用語で、演劇が始まる前に、作品の舞台や理解に必要な情報を観客に伝えるもの、前説と言えば近いか。それがプロローグであった。
最も有名なのは「ロミオとジュリエット」の第一幕プロローグのソネット(14行詩)であろうかね?
えーと……、訳の版権が切れてるか分からないので私訳でいこう。
共に威厳ある二つの名家は
我らが舞台となるこの美しきヴェローナで
古き怨恨は新たな争いを生み
市民の血は別の市民の手を汚す
敵対する宿命の腹々から生を受け
結ばれぬ定めの星の下にある恋人たちの
不幸で哀れな生の転変
そして死を以って両家の不和を葬った
恐るべき道ゆき、それは死により縁取られた愛と
彼らの両親の果てしない憎しみ
それは子らの死を以ってしか終止符を打てなかったものを
今から2時間の我らが演目にてお見せ致しましょう
忍耐強く耳をお傾けください
ちょっとした失敗も我らが努力に免じて下さいますよう
こんな感じか?
まあ本来はソネットなんで韻を踏んでるんだがそこまでは表現できぬ。それを除けば内容としては上手く訳せているのではないか?意味合い的には多少間違ってるところもあるかもしれんがね。
こういった形式の序詞、まあ最後の3行は演劇ゆえなので無視しても、前半部分をプロローグの形式として考えた場合、それがライトノベル系の小説で表現されているのはぱっと2つ浮かぶわけだ。
「ロードス島戦記」の「ロードスという名の島がある……」の部分。
「マリア様が見ている」の「ごきげんよう……スカートの裾は乱さないように……」の部分である。
これがプロローグだ。
このパターンはWEB小説で一般的に受けるであろうか?好む人は好むであろうし長さにもよるだろうが難しいところだ。
雰囲気作りには良いので、書籍としては良いと思うがね。
例えば拙作の「なまこ×どりる」。主人公のどりる、ドリルヘアーの少女がなまこを使い魔として召喚するところから第一話が始まる。
それは魔術学校の4年生前期試験最終日、召喚術の試験というタイミングだ。
ある意味においてこれはホットスタート的であり、物語のスタート地点、起であると言える。
つまり、いわゆる学園ものであれば入学から描いたりするところであったり、せめて4年生の学期始まりから描くところであろうがそうではなく。私はそのタイトル「なまこ×どりる」が始まるところを第一話とした。
ただ私はそのサブタイトルを『第一話:ぷろろーぐ』としている。
全編通じて大半が主人公の一人称視点の作品であるが、ここだけ三人称視点、説明から入っているからである。書き出しは、
セーレム市のサウスフォード全寮制魔術学校4年生、つまり高等学部1年生の前期期末試験最後の科目は召喚術の実技試験と決まっている。
その内容は〈使い魔召喚〉と〈契約〉であり、教師が用意した〈守護の魔法円〉の上で、授業で学んだ通りに呪文を唱え、守護と召喚の魔術を発動させる。そして召喚したものと契約を結ぶというものだ。
というものだからだ。プロローグの定義的な説明でもあろう?
『舞台や理解に必要な情報』とは関係なくとも、物語の本筋に入るより前の部分を冒頭に書いた場合、それをプロローグと考えるのが現代の創作界隈においては一般的であろうか。
後述するが、それがホットスタートとして機能する作品もあれば、そうでない作品もある。
その是非はどうなのか?
簡単だよ。
面白ければ是、つまらなければ非だ。
無論、面白い、良いプロローグと言われる作品だって万人受けするとは限らない。
例えば「涼宮ハルヒの憂鬱」のプロローグ。一般的には評価高いんじゃないかな。「サンタクロースをいつまで信じていたか……」というもの。
私はあれがサリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」の劣化パチモンっぽく鼻についたので(個人の感想)、あの作品は1ページしか読んでいない。
後にあまりにも有名になったので1巻は読んだがね。
例えば悪しきプロローグとして有名なのはあれだ。
俺の名前は海山鼠田。どこにでもいるような平凡な男子校生だ。
(中略:内容は朝起きて歯を磨いて母親と妹と話をして学校に出かけて登校中に美人の同級生とすれ違って教室に入って友人と昨日の夜のゲームについて話して先生が来て席につき授業が始まるやいなや窓の外空を見上げて)
――この時は想像もしてなかったんだ。
――この平凡な日常がこんなに大切なものだったなんて。
で第一話を終わらせるタイプの作品だ。
ちなみに私は全部読み飛ばしてブラバする。
第二話のタイトルは「転校生」で第三話のタイトルは「覚醒」な気がするね。読んで無いけど。
なぜそう言えるかって?現代物舞台のTRPGのシナリオで死ぬほど見たからだよ。
アルシャードガイアのオープニングとかダブルクロスのオープニングとかな。
三話から書き出せ。
面白ければ是というのはあれだ、西尾維新の「物語」シリーズの特に2巻以降などがわかりやすいだろう。
本編に入る前に延々とだらだら主人公が本編とは別のキャラと話をしているだろう。下校中にだらだら八九寺(ヒロインの1人)と話していたりするようなやつだ。
プロローグと本編を比較して、プロローグの方が長いくらいだったりするほどだが、そこの軽妙な会話が面白いから成立するのだ。
結論としては本編前のプロローグに関してはつまらないものを書くくらいならいきなり本題からスタートする方が良い。
書くなら短くさっと終わらせるか、読者を惹きつけるものを書くこと。
以上だ。