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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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989 友情!





「クロード、正直、見直したぜ。バカにしたようなことを言って悪かったな。見事な腕前だったよ」

「いや――。レオ、おまえの方が見事だった。俺は本当にギリギリだった。おまえは真面目に修練を積んでいたのだな」


 クロードとレオが互いの健闘を称えて握手を交わした。

 青春だ。

 素晴らしいね。


「ねえ、ゼノ。私たちも握手しようか」

「え。なんで?」

「ほら、健闘を称えてさ」

「あのさ、クウ。せっかくのボクのお披露目を、すべてなかったことにしたのはどこの誰なのさ?」

「あはは。いやー、だってさー」


 しょうがないよね、それは。


「ボクの方には残念ながら、クウを称える健闘がないね」

「また冷たいこと言ってー。友情の証、しよーよー」


 私はにこやかに手を差し伸べた。

 だけど返事はなかった!


「もー。無視ー?」

「ムシなんていないよ、ここはダンジョンだしね。あ、でも、そういえばクウってムシが苦手だっけ?」

「え」


 なんか急にゼノの声が、それまでの不機嫌から打って変わって、ニヤーっとした感じの愉しげなものに変わりましたが。


「まあ、いいや。ボクはもう帰るね。とにかくさ、クウ、キオとイルには優しくしてあげてよね。あの2人はまだ幼いんだから」


 ちなみに幼いといっても、105歳と405歳だ。

 私より遥かに年上なのですが。


 ゼノの気配が薄らいでいくのがわかる。


 本当に帰ってしまうようだ。


「あ、クウ」

「ん?」

「せなか。なんかついてるよ」

「え?」


 くすくすと笑いながら、ゼノの気配が消えた。

 なんかって、何だろ。

 私は素朴に、そう思った。

 ところ……。


 もぞ。


 もぞもぞ。


 と、背中に、嫌な感触を覚えた。

 まるで、それは……。


 もぞもぞもぞ。


 イモムシが這っているかのような、そんな想像のできる……。


 え。


 まさか……。

 壁にもたれていたせい……?

 イモムシに、背中にくっつかれたの、私……?


 …………。

 ……。


 もぞもぞ。


 …………。

 ……。


「ぎゃああああああああああああ!」


 私は悲鳴を上げた!

 床に転がった!

 だって、虫をなんとかしないと!

 はがさないとぉぉぉぉぉ!


「クウちゃん!? どうしたの!?」


 アヤが駆けてきた。

 ラハ君とダリオも一緒に来た。


「虫! 虫が背中にいるのおおお! もぞもぞしてるのー! 取って! 取ってえええええ!」


 私は助けを求めた!


「クウちゃん、落ち着いて! 背中を見せて!」

「ひー! ひー! ひー!」

「大丈夫。大丈夫だから。ね? 私、虫なんて平気だから、いたらちゃんと取ってあげるから安心して」


 みんなに見守られる中……。

 私はアヤに背中を見てもらった……。

 結果。

 虫はいなかった。


 もぞもぞは、やがて消えた。


 うん。


 冷静になってみれば、ただの闇の魔力だった気がする。

 ゼノのイタズラだったのだろう……。


「ごめんね、アヤ。ありがと」

「いいよ。気にしないで」

「何事もなくてよかった」

「本当だよ。僕、マイヤさんの悲鳴を聞いた時には、スケルトンに襲われたのかと思って心臓が縮んだよ」


 ダリオとラハ君が優しい言葉をかけてくれる。


「うう……。ご迷惑をおかけしました……」

「まったく、よ」


 腕組みしたレオには、最初、かなり呆れた顔をされましたが……。


「でも、なんにもなくてよかったぜ。クウ、怪我はしてないよな?」

「うん。なんとか」

「ならいいさ。もう気にすんなよ」


 と、ぶっきらぼうながらも優しくされて……。

 私、泣けました。


 というわけで。


 普通科1クラスと5クラスの共同ダンジョンツアーは……。

 私以外は何事もなく……。

 無事に楽しく、友情も育んで、おわったのでした。

 私はすっかり疲れて、アヤに腕を取られつつ、ダンジョンから出たのでした。


 ゼノめ……。

 今度会ったら覚えてろよ……。


 遺跡の広場に戻ると、エカテリーナさんが声をかけてきた。


「クウちゃん、アヤ、中はどうでしたか?」

「あはは。えっと」

「はい。まさにダンジョンでした。魔物も出てきて、凄かったですよ」


 苦笑いしかできない私に代わって、アヤが無難に答えてくれた。


「クウちゃんは、随分とお疲れなのね」

「こいつはビビリ散らしていたからな。だけど、たいしたことはなかったぜ。俺はますます自分の将来を確信した」


 横からレオが話に入ってきた。


「冒険者ですか?」

「おうよ! 冒険者の貴族に、俺はなる!」

「エカテリーナ様、レオ様は凄かったですよ! ダンジョンに湧いたスケルトンを1人で倒したんです!」


 クラスメイトたちが、レオの戦いを称える。

 レオは鼻高々だ。

 まったく。

 大いに勝ち誇るのは、せめて防御魔術なしで勝てるようになってからにすればいいのにね。

 レオは、本当に痛い目を見そうで、見ていて私は心配だよ。


 と、私が思っていると……。


「しかしよ、クウ。俺はおまえを見ていると心配になるよ。いいか? 好奇心猫を殺すって言葉、よく覚えておけよ。なんにでも首を突っ込む前に、まずは自分の力をよく知るんだぞ」


 レオに、妙に優しい目でそう言われたぁぁぁぁぁ!

 それはこっちのセリフだぁぁぁぁぁ!


「そうだよ、クウちゃん」

「そうだな」


 あー!


 アヤとダリオが、しみじみとレオに同意したぁぁぁぁぁ!

 ラハ君は困った顔をしているぅぅぅぅ!

 なぜだぁぁぁぁ!


 まあ、はい。


 私がダンジョンで醜態を晒したからですよね。

 わかります。


「……はい」


 私は仕方なく、うなずくのでした。






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― 新着の感想 ―
[一言] 自業自得だけど色々となぁなぁにしてるからジレンマが酷そうw
[良い点] 実はゼノ最強説が浮上?
[一言] >私がダンジョンで醜態を晒したからですよね。わかります。 クラスでのクウちゃんさまは最後までこのままでもいいような気がするのがこの作品の魅力の一つですね、あるいは真実が明らかになるのもそれは…
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