985 クラスメイトとダンジョン突入!
さあ、いよいよ、ダンジョン『マーレ古墳』への突撃だ。
最初に、『黄金の鎖』のリーダーさんから注意を受けた。
「中に入ると、まずは通路がある。通路では、俺たちが前後に3人ずつ立つから君たちはその間に2列で並ぶこと。途中で分岐があったりするけど、絶対に別の方向へは行かないこと。通路にも魔物は出るからな」
「はーい」
私は元気にお返事した。
「広間では、各々での自由な見学が許可されている。敵については、滞在する冒険者が即座に倒すから安心してもいい。広間からは絶対に出ないこと。間違っても勝手に奥に行ったりはするなよ。あと、戦闘中の冒険者には近づくな。何かの拍子で斬られたら大変だ」
「はーい」
私は元気にお返事した。
私は何度も行っているのでよく知っているけど、マーレ古墳の最初の広間は実にほのぼのとしている。
敵のポップ情報を把握した冒険者たちが、それぞれの場所に陣取って、湧いた敵を各個撃破している。
待ち時間には、魔石コンロで肉を焼いて食べたり……。
お酒を飲んだり……。
大勢が気楽に小銭稼ぎをしていた。
むしろ危険よりも、レオがますます冒険者なんて楽勝だぜ!と誤解をしてしまわないかの方が心配なくらいだ。
「……おまえ、完全に遊び半分だろ?」
「はーい」
あ、しまった。
ついうっかり、レオの言葉に笑顔でお返事してしまった。
「おまえなぁ。ダンジョンは危険なんだぞ、本気でしっかりしろよ」
レオに心底呆れた顔をされたぁぁぁぁぁぁ!
「そうだよ、クウちゃん」
アヤに心配されたぁぁぁぁぁ!
気のせいか、ラハ君とダリオの目が冷たいぃぃぃぃぃ!
これはもうアレですよ。
クウちゃんだけに、クウ……。
最近乱発されていたから、ちゃんと使うのは久しぶりな気がするよ……。
うん……。
ともかく、いよいよ、私たちの突入する番が来ました。
衛兵さんの守るゲートを越えて、崩れかけた遺跡の前に立った。
遺跡の中には暗闇が広がる。
その暗闇こそがダンジョンへのゲートだ。
「気負う必要はないからな。普通に入ればダンジョンの中だ。ただ、視野が暗転するから転ばないようには気をつけろよ」
リーダーさんが気さくな笑顔を見せつつ、最初に中に入った。
「さあ、どうぞ」
『黄金の鎖』のメンバー、ローブを身に着けた魔術師のお姉さんが、優しい態度で私たちの突入を促す。
「よ、よし……! 俺が最初に行くからな……!」
勇気を出したレオが、思いっきり緊張しつつ、足を少しだけ入れて――。
様子を見ようとして――。
「うお! うおおおおお!」
吸い込まれていった。
あー。
今のは、向こうですっ転ぶパターンだねえ……。
「普通に入った方が楽よー」
お姉さんが笑って言った。
次のカシムは目を閉じて、大きな声をあげて、タックルするみたいにゲートの中へと飛び込んでいった。
他の男子たちも、それぞれに突入していった。
最後に残るのは、私とアヤだ。
「ねえ、クウちゃん……。どっちが先に行く……?」
「アヤ、お先にどうぞ。最後だと逆に怖いよ」
「う、うん……。私でいい?」
「どうぞー」
アヤは、レオと同じように、中途半端に様子を見ようとして、
「やあああ! クウちゃーん!」
吸い込まれていった。
うん。
向こうで転んじゃうパターンだね……。
私は少し待ってから普通に入った。
「よっと」
そして、普通に、ダンジョンのエントランスの小広間に出た。
「ん? どしたの、みんな?」
ふと見れば、レオたちに驚いた顔をされていた。
やがて自然に拍手された。
ぱちぱちぱち。
「……えっと。なに?」
バカにしている感じではないけど。
不審だ。
「おまえ、運動神経はいいよな。この俺様ですらバランスを崩して、危うく転びかけたってのによ」
レオがしみじみと言う。
「ごめんね、クウちゃん。私は転んじゃったから、クウちゃんが普通に入ってきてすごいなーと思っちゃって」
「僕もだよ。すごいね、マイヤさん」
「うむ。感心した」
「まあ、いいけどさあ。いきなり拍手するから、何かと思ったよ」
私が苦笑すると、『黄金の鎖』のリーダーさんが言った。
「入場については、君が一番だったぞ。まるでダンジョンなんて慣れっこみたいな雰囲気すらあった」
「あはは。どうも」
実際、慣れていてごめんなさい。
余計なことは言わないけど。
今日は大人しく、みんなの後をついていこう。
外にいた『黄金の鎖』のメンバーさんたちも中に入ってきた。
私たちは、打ち合わせの通りに隊列を組んだ。
さあ、出発だー!




