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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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976 オハナシタイム




「えー。お兄さま」

「何かな、クウ君」

「怒ってないですよね?」

「当然だろう? どうしてそんなことを聞くのかな?」

「いえ。はい」


 ならいいんですけど。


 というわけで。


 幼稚園児たちへの基本的指導がおわって、すっかり日は暮れたけど、ようやくお兄さまとのオハナシタイムとなった。


 風の大精霊なキオは、宙に浮かんで寝ていた。


 リトは疲れた顔で帰った。

 ありがとねー。


 ゼノもアリスちゃんを連れて帰った。

 というか、ゼノって黒猫姿でアリスちゃんと一緒にいたはずだけど……。

 さっきも思ったことだけど……。

 いつの間にか本当に少女の姿でも一緒にいるのね。

 まあ、いいけど。

 私は細かいことは気にしないのだ。


 ヒオリさんはお店の清掃をしつつ、キオの様子を見てくれている。


 水の大精霊なイルは、お兄さまの肩の上で寝ていた。

 うん。

 わたしの目の前にいるね。

 すやすやと、実に気持ちよさそうだ。


「で、えーと。なにからオハナシしましょうか……」

「そうだな……。事情はすでに理解したが、今後のことを聞きたい」

「と言いますと?」


 なんだろか。


「水と風の大精霊殿は、今後、帝国に住むことになるのか?」

「んー。水の子については、本人的には、お姉さまと契約してサンネイラに居座る気は満々みたいですけど……」

「そうか」

「……やっぱり問題アリアリですか?」

「なんとも言えんな」

「そかー」

「クウはどう思う?」

「リトとゼノがお勉強は施しましたので、さすがにもう、リヴァイアサンを召喚して地域一帯水没とかにはならないと思いますけど……。正直、ハッキリどうとは言いにくいですね……」


 なにしろ責任は取れない。

 正確に言うなら、取りたくないのです。

 めんどいし。

 大変そうだし。


「ふむ」


 お兄さまは考え込んでしまった。

 イルが乗っかったままなので、真面目な顔をしても……。

 うん。

 逆に笑えるけど。


「迷惑なら、すぐに帰らせますけど……」

「それには及ばん。大精霊殿の滞在は、むしろ歓迎したいところだ」

「それはよかったです」


 私としても、強引に閉じ込めるのは、あまりしたくない。

 責任は取りたくないけどねっ!


「アリーシャの婚約も成立させやすくなるしな」

「あー。ですねー」


 サンネイラは食の都として知られた立派な町だけど、一般的な地方領。

 トルイドさんのところは男爵家だ。

 第一皇女の嫁ぎ先としては、正直なところ格が低い。

 なので、お姉さまとトルイドさんの婚約話は、内々には進んでいてもまだ正式には決まっていなかった。

 なにか、こう、うまいこと、貴族社会が納得するような――。

 良い理由を探しているところだったのだ。

 水の精霊の帰還は、まさにうってつけの理由だろう。


「ただ、一方で懸念もある」

「大いに目立って、大いに信仰されることですよね。下手をすると神殿の権威ばかりが上がりそうですし」


 帝国としては、宗教勢力のこれ以上の台頭は避けたいところだよね。

 ただでさえ、聖女ユイリアの圧倒的な影響力で、難しい舵取りを迫られることも多かったようだし。


 私がそう言うと、なぜか驚いた顔をされた。


「あれ、違いました?」


 たずねると――。


「カラアゲをー。もっとカラアゲを持ってくるのー。イルは、カラアゲの山に囲まれて暮らすのー。カラアゲサイコーなのー」


 お兄さまの頭の上でイルが寝言を言った。


「いや、その通りだ。直接的に言うつもりはなかったが」

「イルの場合は、普通にふんぞり返って、食べ物をたくさん貢がせて、パクパクする気満々でしたからねー。よく言ってはおきましたけど、こういう子なので不安はありますよねえ」

「君が見てくれるのなら安心だが」


 お兄さまがにっこりと言った。


「あれ? 私ってそんなに信用ありましたっけ?」


 むしろ逆のような。


「あるに決まっているだろう。なければ相談などするものか。第一、俺がどれだけ君に命を預けたと思っている」


 ダンジョン耐久攻略とかやった仲でしたね、そう言えば。

 とはいえ、まっすぐに言われると照れます。


「あははー」


 私は笑ってごまかすのでした。


「いずれにせよ、クウがその認識を持っていてくれるのなら安心だな」

「私、めんどいのはイヤなので、むしろ安心せず、ちゃんと管理してくれるとありがたいのですけど」

「人間社会の方は任せておけ」

「いっそこのまま、お兄さまがイルと契約しては?」

「できるものなのか?」

「さあ。どうなんでしょうね」


 実は私は、よく知らない。

 ただ、懐かれているから、できるのならば、できそうだけど。


「まあ、やめておこう。サンネイラから水の大精霊殿を奪っては、地元の民から末代までの恨みを受けることになりそうだ。アリーシャからもな」

「あーそうですねー」

「というわけで、精霊のことは任せたぞ」

「やめてくださいよー。めんどいしイヤですからねー」


 私がガックリして、お兄さまが笑っていると――。

 ヒオリさんが声をかけてきた。


「ところでお二方、夕食はどうしますか? すでに良い時間ではありますが」

「ああ、済まんな。すっかり長居してしまった」

「せっかくだし食べていきますか? 出来合いのものになりますけど」


 まだ話はおわっていないし。


 この後は、イルとキオも含めて、みんなで食事を取った。

 今後のことも決めた。

 イルとキオは、いったん、精霊界に帰る。

 近いうちに私が精霊界で挨拶会を開くので、これからのことについては、またその時でお願いします。

 それまでは、大人しくしていてね。

 すなわち、先延ばしです。

 なにしろ今日もまた、大忙しの1日だった。

 私は疲れたのだ。





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― 新着の感想 ―
案外女王が暴力的なのは精神年齢が低いのに力は圧倒的に強い大精霊を躾けるためだったり?
[良い点] アリーシャのダイエットのやる気を出すためにサンネイラ行ったはずなのに、そこでイルが顕在化したら食いしん坊のイルにあわせた食事になってアリーシャの牛さん化はもう止まらない気がする。 [気に…
[一言] あれ?イル&キオが魔王騒ぎした現況のリトさんは許された? まあ、いずれ挨拶会ありますしねw
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