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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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96 エミリーの必勝ショートコント(アンジェリカ視点)




 さあ、始まった。


 第2回シルエラさんを笑わせようの会!


 クールなシルエラさんを笑わせるのは大変かなぁと思っていたんだけど。

 なんと第1回大会において……。

 必殺「にくきゅうにゃ~ん」でクウが勝利したとのことだった。


 これは、負けられないわね。


 クウが笑わせたというなら、私も笑わせないとね!


「1番っ! エミリーっ! いきますっ!」


 さあ、まずはエミリーだ。

 勇敢にも自らトップを名乗り出た最年少8歳の女の子。


 長く着られるようにと大きめに作られたパジャマをゆったりと着こなし、今、シルエラさんの前に立った。


「何発かいきますっ! よろしくね!」

「がんばれー! エミリーちゃーん!」

「うん!」


 クウの声援を受けて、エミリーがキュッと表情を引き締める。


「1発目! ショートコント、森の奥」


 まずは、タイトルコール。


 森の奥か……。


 まったく想像がつかない。


「ああ、もう、嫌になっちゃう、迷子になっちゃったわ。

 ここ、どこだろう」


 不安げな顔であたりを見回しつつ、エミリーは迷子を演じる。


「うおおおお! オークだぞー! がおー!」


 お。

 そこに魔物が現れたようだ。

 もちろんオークを演じるのもエミリーだ。


「きゃー!」


 迷子が悲鳴を上げる。

 するとオークが肩をすくめた。


「やれやれお嬢さん、こんな森の奥に来てはいけないよ。

 案内してあげるから早くお帰りなさい」


「ありがとう!」


「奥だけにオークだよっ!」


 エミリーの渾身のVサインで、終了。


「あははははははははははは! 奥だけにオーク! ひゅーひゅー!」

「素敵ですっ! 感動しましたっ!」

「言葉遊びとしては、なかなかによいものですね。某、感服しました」

「ボク、慣れていないけど、笑えばいいんだよね? あはは」


 クウたちは大いにエミリーを称えた。

 いけないけなけい!

 私も、ボーッとしてちゃダメよね。

 私も拍手した。

 つい、奥だけにオークの意味を真面目に考えようとしてしまったけど、そういうものではないわよね。


「2発目! ショートコント、朝」


「ふれー♪ ふれー♪ 人生っ♪ おはよう♪ いい朝いい朝こけこっこー♪」


 元気いっぱいにエミリーが踊る。

 と思ったら。

 うなだれた。


「……まあ、私、今日出荷されるニワトリなんですけどね」


 わー!

 ぱちぱちぱち!

 突然の直下降なオチが、けっこうよかったわね!

 真面目に考えると、ニワトリが可愛そうだけど!


「3発目! ショートコント、バード・アンド・ウィンド」


 エミリーがさらに芸を続ける。


「わたしは鳥! わたしは飛ぶっ! この風と一緒に! この風よりも速く!」


 エミリーがその場で両手を広げる。

 飛んでいるのだろう。


「イエス! スピードマックス! イエス! ウィンド!」


 調子はいいようだ。


 と思ったら。


 なにかにぶつかって、そのままずるずると沈んだ。

 もちろん演技としてだけど。


 ……なにがあったんだろ?


 エミリーが最後に、倒れたままつぶやく。


「……こんなところに窓があるなんて。

 ……まぁ、どうしよう。

 まどだけに」


 力尽きたようだ。


 力尽きた後で、元気よく立ち上がってエミリーは一礼した。

 私たちは拍手と喝采で迎えた。


「4発目! ショートコント、クウちゃん」


 お。


 クウのモノマネ?


「そかー」


 ほとんど寝てる顔で、エミリーが力なく頭を左右に揺らした。

 ぷっ。

 思わず私は吹き出した。

 身構えて見ていたのに、完全な不意打ちだった!

 なんかすごく、クウっぽかった!


「うっ! 悔しいけど、なんとなく私っぽかった!」

「ふふ。そうですね。まさにクウちゃんみたいでしたね」


 クウとセラにも大いにウケたようだ。


「じゃあ、最後! いきまーす! ショートコント、希望」


 神妙な面持ちでエミリーが私たちを見つめる。


 なにが始まるんだろう。

 希望。

 タイトルからは何も想像できない。


 クウの部屋を見渡し、テーブルに置いてあった一本の串を手に取る。


「これって、木?」


 え。

 まさか。


 一気に予測が膨らんで、私は戦慄した。

 即座に予測は的中する。


「棒?」


 エミリーが串を見て首を傾げる。


 そんな……。


 安直な……。


「いやこれって串だよね。木でも棒でもないよ?」


 そんな。

 私の予測が外れた!?

 一気にキボウにいかないなんてっ!


 エミリーは言葉を止めた。


 私は息を呑む。


 ここからどうやって笑いにつなげるのか。

 まるでわからない。


 するとエミリーがあきらめたような顔で言った。


「悲しいね。夢も希望もないなんて」


 希望が来たっ!

 でも、オチじゃないわよね、今の!?


「……でもね、あったんだ、希望」


 どこにだろう。


「クウちゃん、死にかけていたわたしを助けてくれて、ありがとう。

 わたし、元気になれたよ」


「うん」


 クウが優しくうなずく。


「ありがとうっ!」


 ぺこりとエミリーがおじぎをする。


 ヒオリさんが拍手をする。

 私も拍手をした。


 エミリーは、病気で苦しんでいるところをクウの魔法で救われた。

 今のは、そのお礼ね。


 まさに希望。


 お笑いではないけど、うん、いいわよね。


 私の顔も自然にほころんでいる。


 シルエラさんも拍手をしていた。

 シルエラさんの表情も柔らかい。


 とはいえ結果、残念ながらシルエラさんは笑わなかったようだ。

 私は笑っちゃったけど。

 正直、クウのモノマネは面白かった。


 出番をおえたエミリーがうしろにいた私のところに来る。


「よかったわよ、エミリー」

「ありがとう、アンジェちゃん」


 頭を撫でてあげると、目を細めて喜んでくれた。






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― 新着の感想 ―
[一言] 木 棒 ! 
[一言] 腹痛い~
[一言] ウィンドウは良いんじゃないかと思った
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