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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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955 ボーエーグンゴッコ




「じゃあ、みんな、まずは作戦会議するよー」


 私はあぐらをかいて座った。


 上も下も右も左も、見渡す限りに続いた輝く海の中のような精霊界だけど、不思議なことに――。

 座ろうと思えば、普通に座ることはできる。


 私が座ると――。


 私を取り囲むように、たくさんの小さな精霊さんたちが集まる。

 気のせいか、どんどん数は増えているようだ。

 まあ、いいけど。

 なんといっても、防衛軍ゴッコなのだ。

 軍なら、大勢でもいいよね。


 ボーエー!

 マモル!


 みんな、始まる前から盛り上がっている様子だ。

 たくさんの思念が届く。


 うーむ。


 しかし、どうするべきか。


 防衛軍ゴッコって、何をすればいいんだろう。

 まずは、属性ごとに集まってもらう。

 全色に見事にいた。

 光、闇。

 火、土、風、水。

 数は、火と土と風と水が多くて、光と闇は少なめだった。

 得意なことを聞いてみると……。

 だいたい属性から想像できる通りの答えが返ってきた。


 火の子は攻撃。

 土の子は防御。

 風の子は遊撃。

 水の子は支援。

 光と闇の子は、攻防一体の万能型。


 ふむ。


 こはれアレかな。

 普通に6人パーティーと考えて、遊んでみればいいのかな。

 とりあえず、やってみた。


 おっきな敵が攻めてきたと想定して……。


 まずは、土の子が全力防御で受け止める。

 それを水の子が支えて、風の子が敵の注意を反らして、隙が出来たところで火の子が果敢に攻める。

 光と闇の子は、状況に応じて動く。


 小さな精霊さんたちは、長い言葉を発することができなくて、伝わる思念はつたない印象のものばかりだけど――。

 頭はいいようだ。

 架空の状況をしっかりと理解して流れるように動く。

 小魚の群れを見ているかのように見事な連動だった。


 動けるようになった後は、いよいよ本番!


 と言っても、敵はいない。


 なので作ることにした。


 銀魔法『クリエイト・イメージ』で大巨人を描いた。

 砦に大巨人が攻めてきたぞー!

 守れー!

 という設定だ。


 精霊さんたちには自由に動いてもらって、私は大巨人の操作をした。

 腕を振るって、大地を踏み鳴らすように前進させる。


 ぶるん、ぶるん!

 どすん、どすん!


 戦いは白熱した。

 でも最後は、小さな精霊さんたちが見事に大巨人を打ち倒した。

 私たちの勝利だ。

 えいえいおー!

 みんなで勝どきをあげて、盛り上がった。

 こうして防衛軍ゴッコは――。

 大きな問題もなく、楽しくおわった。

 のだけど……。


「みんなー、今日はありがとうねー。楽しかったよー!」


 さあ、帰ろうかな。

 と思ったところで……。


 偵察役の風の子がヒュンと飛んできた。


 テキシュー!

 テキシュー!

 セッキンチュウ!

 セッキンチュウ!


 と、楽しそうに思念が飛んでくる。

 うん。

 楽しそうなので、緊迫感はまるでないんだけど……。

 とはいえ、何かが来たようだ。


「ねえ、精霊界にってさ、魔物みたいなのはいるの? 精霊にも襲いかかってくるような感じの」


 私はたずねる。

 すると一斉に返事が来た。


 ――イルヨ、イル。

 ――ゲンジュウ。

 ――ゲンジュウ、アバレモノ。


「へー。いるんだー」


 なら、その幻獣っていうのがこちらに来ているのかな。

 小魚の群れに襲いかかるシャチみたいに。


 と思ったら、ちがった。


 現れたのは、たくさんの風の子たちを引き連れた――。

 なんとなくヒオリさんの妹のような――。

 薄手の服と若葉色の髪を海の中に揺らめかせる、今年で6歳のアリスちゃんと同年代に見える幼女だった。


 彼女は、私をキッと睨みつけると――。

 肩をいからせて、こう言った。


「私は、この世界の風を司る者!

 風の大精霊キオジール!

 貴女ねっ!

 最近、この精霊界で好き勝手しているという――。

 シャイナリトー様がおっしゃっていた、邪悪な魔の化身は!

 この私が成敗してあげるんだからっ!」


 ふむ。


 見た目の幼さの割には、しっかりとした口調だね。

 キオジールちゃんか。

 キオでいいか。

 私もゼノもリトも二文字だし。


「えっと。私はクウだよ。一応、精霊のつもりなんだけど……」


 とりあえず私も、自己紹介してみた。


「嘘よね! 貴女のことはシャイナリトー様から聞いているんだから! 善良なみんなを騙して、何をするつもりなの!」


 なんにしても、だ。

 リトは帰ったら、うんと可愛がってあげる必要がありそうだね。

 うん。

 たくさん。


「さあ、私の可愛い風の子たち!

 大精霊に導かれし精霊の、その本当の力を――!

 見せてあげなさい!」


 キオが私に向けて、取り巻いた風の精霊の子たちをけしかける。


 ――セメル?

 ――ヒメサマ、セメル?


「そうよ! 騙されちゃだめ! アレは魔王なのよ!」


 それに呼応して、私のまわりにいた色とりどりのみんなが、練習した通りの見事な防衛体制を取る。


 ――ボウエイ!

 ――ボウエイ!

 ――ヒメサマ、マモル!


 小さな精霊さん同士が一触即発だ。


「こらぁぁぁぁ! 風の子はこっちに来なさーい!」


 ――コッチ?

 ――ドッチ?

 ――ソッチ?


 キオに怒られて、私の側で防衛体制についた風の子たちが困惑する。


 ふむ。


 私も試しに、呼びかけてみた。


「みんな、こっちおいで。一緒にあそぼー」


 にっこり。


 すると。


 ――ヒメサマ。

 ――ヒメサマ。

 ――ヒメサマ、アソブ。


 あ。


 みんな、私の側に来てくれた。









書籍版もよろしくお願いしますっ!

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― 新着の感想 ―
[良い点] いつも楽しく読んでます! 大精霊<姫様なのね(笑) 戻ったあとの誰かが地獄見そう(笑) クウちゃんが大精霊の子を泣かしそうな展開に! 味方に裏切られてねかわいそうに(笑)
[一言] まああの娘にとっては魔王だなあ
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