表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

936/1360

936 閑話・アンジェリカは白い世界で目覚めて……。





 ……ここ、どこだろ。


 目覚めると、そこは夢の中のような世界だった。

 私、アンジェリカは、不思議な感覚に囚われながらも――。

 のろのろと、寝ていたベッドから身を起こした。

 部屋は明るかった。

 壁も床もベッドも、何もかもが白で統一された綺麗な部屋だった。


 うん。


 それこそ、夢の中みたい……。


 でも、浮上した私の意識はちゃんと働いている。

 手の感覚も足の感覚もあった。

 私は、半袖半ズボンの、白い服を着ていた。


 身を起こしたところで――。


 脇の椅子に座っていた20代前半に見える女性と目が合う。


「おはようございます、アンジェリカさん」

「あ、はい……。おはようございます……」


 優しく微笑まれて私は返事をしたけど、それは私の知らない人だった。

 誰だろう……。

 と、考えて、私は彼女に2本の角があることに気づいた。

 その角は、フラウさんと同じものだ。


 ということは……。


「あの、失礼ですが、竜族の方でしょうか?」


 私はたずねた。


「ええ。そうです。竜族のナルシオールと申します」

「私は、アンジェリカ・フォーン――」

「ええ。存じていますよ」

「あの、ここは……?」

「ここは、竜の里です」

「あと、あの――」


 私のとなりには、エルフの少女がいた。

 イレースだ。

 イレースはまだ寝ていて、意識を取り戻していない。


「ああ、その子はもう大丈夫なので、警戒しなくてもいいですよ。憑依していた悪魔はすでに抜けています」

「そうですか……」

「さあ、まずはこれをどうぞ。背負ってください」

「……はい、ありがとうございます」


 私は言われるまま、なぜか……。

 ショルダーベルトで固定して、カメの甲羅を背負った。

 ずっしりと重い。


「あと、これをどうぞ。箒です」

「はい、ありがとうございます……」


 私は言われるまま、箒も受け取った。


「立てますか?」

「はい」


 さらに言われるまま、私はカメの甲羅と箒姿で立ち上がった。

 重いけど、うん、ちゃんと立てる。

 歩くこともできそうだ。


「その格好は、竜の里に滞在する時の正装です。その格好をしていれば、皆、アンジェリカさんに不審の目を向けることはないでしょう。誰かと問われた時にはカメの子4号と答えてください」

「はい。わかりました……」


 4号ということは……。

 1号と2号と3号、3人のカメの先輩がいるのね……。


 いったい、誰なのかしらね……。


 聞いてみようかな、と、思ったけど……。


 ここで私に続いて、となりで寝ていたイレースが目を覚ました。

 イレースも言われるまま――。

 ベッドの縁に腰掛けて――。

 甲羅を背負って、箒を手に持って――。

 カメの子5号と命名された。


「ちなみに貴女達は臨時のカメの子です。その名が許されるのは、迎えが来る明日の朝までなので、その点にはご留意を。では。歩ける範囲であれば、自由に歩いてくれて構いません」


 そう言うと、ナルシオールさんは部屋を出ていってしまった。

 ドアが開いて、閉まる。

 私はイレースと2人きりになってしまった。


 正直……。


 私はイレースに殺されかけたわけで……。

 その記憶はまだ生々しい。

 ものすごく緊張するんだけど……。


 立っている私と、ベッドの縁に座っているイレース。


 カメ同士の目が合った。


「ねえ……」


 最初に口を開くのはイレースだった。


「あ、ええ……。似合ってるわよ……」


 私はそんな返答をした。

 イレースが言う。


「おトイレって、どこかしら……。私、漏れそうなんだけど……」

「あ。え?」

「ごめん、早く教えて……。出ちゃう……」


 なんか、うん。

 慌てて急いで外に出て、トイレを探す内――。

 なんとなくイレースとは打ち解けてしまった気がする。


 いろいろと落ち着いた後――。


 イレースとは、ゆっくりとおしゃべりをした。


 イレースは、私のことを覚えていなかった。

 悪魔に乗っ取られていた間の記憶は、何もないようだ。

 ただ、悪魔に体を譲り渡したことは覚えていた。

 悪魔が言っていた通り、それは自分の意思で行ったことのようだった。


「……どうして、そんなことをしたの? 酷い扱いとかされたの?」


 私は、おそるおそるたずねた。


「酷い扱いなんて、何もなかったわ。みんなに期待されて、それが嫌で。何もかもを捨てたくなったのよ。もう全部、まだここにいる私も含めて、何もかも本当に本気でどうでもいいのよ」

「その割には必死だったわよね」


 トイレ探しには。


 私がからかってそう言うと、イレースは顔を伏せた。


「そうね……。漏らすのだけは嫌だったわ……」

「あはは」

「笑わないで」

「ごめん」


 怒らせちゃったかな?


 私はちらりと、イレースの横顔を見た。

 再び目が合った。


「――ねえ、アンジェリカ」

「どうしたの?」

「私たち、なんで、こんなにも不思議な空間で、重いカメの甲羅なんて背負わされているのかしら? あと箒も」

「さあ」


 私は肩をすくめた。





書籍第1巻、発売中です!

どうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
だからって他人を巻き込むのはいただけないぞ。自殺も投身や首吊りは後始末大変なんだから。せめて一人で消えればいいだろが。 その勇気がなくて悪魔を呼び寄せたくせに、なに達観してるんや。こいつは故意だったか…
[一言] 伝統ってこうやって生まれていくんやなって
[一言] 書籍はクウちゃんの学校生活を見てから考えます! 今回の演習も周りから見たら不参加だから、ちょっとなーって扱いになりそうで。今のところくうちゃんの扱いに んーってなるんですよね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ