表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

930/1359

930 クウちゃんさまの事情




 こんにちは、クウちゃんさまです。

 お話は少し戻ります。

 ウツロ村へと続く森に入って、ほどなくして先生たちと合流して、今からウツロ村に行っても活躍の場がないと言うことで――。

 先生たちからの指示もあって――。


 がたがた。

 ごとごと。


 私たちは馬車に揺られながら、来た道を引き返すことになった。


 道中、私はいくらか寝て……。

 結局、揺れに呼び起こされて目は覚めちゃったけど……。

 なんとか頭をすっきりさせることができた。

 今日はまだこれからなのだ。

 頑張らねば。


「わたくしたちは幸運ですわね。不気味な森に関わらず、町でギルドの仕事をするだけでいいなんて」


 オーレリアさんは心から嬉しそうだ。

 野宿、嫌がってたしね。


「そうですね……。正当な評価はいただけるとのことですし……。我々は、とにかく指示に従って全力を尽くすのみですね……」


 マウンテン先輩は複雑な心境なのだろう。

 元気は明らかになかった。


「しかし、皆は大丈夫なのでしょうか……。森は明らかに不気味で、アンデッドまで出たとのことでしたが……」


 マウンテン先輩がつぶやく。


「騎士とは任務に忠実であり、ひたすらに公であるもの。マウンテン先輩は騎士を目指すのであれば、心配するのは結構だが、それよりもギルドの任務をこなすことを考えるべきでしょう」


 サクヤの言いようはまったく生意気な後輩だけど、一応、先輩とは付けているので私はスルーした。


「そうですね、その通りです。気を取り直して頑張りましょう」


 マウンテン先輩も納得しているし。


「うむ! 実は私は、前々から冒険者の仕事には興味があったのだ! 実はむしろ望むところなのだ!」


 あーうん。

 サクナは夏休みに、冒険者にさせろとギルドで騒いでいたよね。


「でも、冒険者ギルドの仕事ってさー。初心者に回ってくるのって、勇ましい仕事とは限らないよー」

「と、言いますと?」


 私がぼやくと、サクナが聞いてきた。


「下水道の掃除とか、ゴミ捨て場の掃除とかね」

「それはスルーしましょう!」

「そうですわね!」


 サクナが叫ぶと、すぐさまオーレリアさんが同意した。


「……しかし、せめて聖水だけでも、先生に渡すべきでしたね。せっかく購入したのに無駄になってしまいました」


 マウンテン先輩は町で情報を収集して、最近、ウツロ村の周囲にアンデッドの出ることを聞いていた。

 なので私たちの馬車にはたくさんの聖水があった。


「今からでも渡しに行きますか?」

「そうですね……。できれば、そうしたいところですが……。昼からゾンビが出るのであれば、夜はさらに出そうですし……」


 道を引き返して、すでに結構な時間が過ぎている。

 ここからまたウツロ村に向かうのであれば、到着はきっと夕方だ。

 とはいえ、夜には間に合う。


 私は馬車の後ろ側の手すりに顎を乗せて、ぼんやりと、街道のずっと先のウツロ村の方に目を向けた。

 私も正直、よかったかなぁ、とは思っている。

 瘴気の漂う森を放置してしまって。

 森の中の村にはアンジェもいるし、けっこう心配だ……。


 アンジェ……。


 今頃、何してるのかなぁ……。


 そう思った時だ。


 ――クウ! 助けて!


 どこかから、アンジェの声が聞こえた。

 ような気がした。


 え。


 なんだろ。


 私は一瞬、アンジェが近くにいるのかと思って……。

 思わずあたりを見回してしまった。


 だけど、街道にも周囲の丘陵にも、当然ながらアンジェの姿はなかった。


「クウちゃん、どうかしましたか?」


 オーレリアさんに聞かれた。


「あ、いえ……。今、一瞬……」

「魔物ですか! それならば、このサクナにお任せを!」

「ううん。ちがうけどね……」

「そうですかぁ」

「サクナさん、そこは落胆ではなく、安堵するところです」

「何を言いますか、先輩! 戦士たるもの戦ってこその本領です! 我々はまだ蚊としか戦っていません!」

「わたくしたちは、ただの学生ですからね?」

「何を言っているのですか、先輩。野外研修に参加している以上、我々は否応なしに戦士なのです。覚悟を決めましょう!」

「……悪夢ですわ」


 気のせいかな……。


 サクヤとオーレリアさんのやりとりを聞きつつ、私は再び手すりに顎を乗せた。


 がたがた。

 ごとごと。


 馬車は町を目指して、新街道を進む。


 でも……。


 気のせいじゃなかったら、アンジェは今、どういう状況なんだろう……。

 何かに襲われている?

 大ピンチ……?


 私とアンジェは、セラと同じように、ゆるーい契約でつながっている。

 去年の初夏――。

 初めてみんなが私の家に泊まりに来た夜のことだ。

 遊びで契約したんだよね……。

 だから、もしかしたら、気のせいではないのかも知れない。


 私は心の中でアンジェに呼びかけてみた。

 だけど返事はなかった。


 まあ、うん。


 念話できるほどのつながりではない。

 それはわかっていた。


 でも……。

 あ、また――。


 クウ――。


 アンジェの、つぶやきのような呼び声が聞こえた。

 それは錯覚ではない。

 アンジェの身に何か起きているのだと、私はようやく確信した。


「ヤマちゃん先輩、すみません!」

「いきなりどうしたのですか、クウちゃんさん」

「私、ウツロ村に行ってきます!」

「それは――。どういう?」

「確信したんです! 何かが起きているって!」

「村で、ですか?」

「はい! 魔法の道具で行きますので、姿は消えますけど心配は無用です! 先輩は研修を果たしてください!」


 返事を待たず――。


 私は『透化』すると同時に空を飛んだ。

 一直線にウツロ村に向かう。


 そして――。


 エルフの少女に襲われているアンジェを見つけた。

 とにかく『昏倒』させた。

 アンジェを介抱する。

 幸いにも、アンジェは生きていた。

 体中、怪我だらけだった。

 さらに魔力を枯渇させて、意識を無くしていた。

 怪我については、すぐに癒やした。

 魔力の枯渇は、時間経過で回復するだろう。


 エルフの少女については――。

 一見、水の魔力をまとったエルフの少女だけど――。

 違う。

 よく見れば、身の奥に渦巻く嫌な気配を感じ取ることができた。

 その気配を私は知っている。

 強い気配ではない。

 だけど、おそらく、間違いはないだろう。


 私は2人を肩に担いで、銀魔法の『転移』を発動した。


 まずはダンジョンの隠し部屋。


 真っ白なその部屋に、エルフの少女――。

 ううん――。

 悪魔メティネイルを幽閉して――。


 アンジェについては、竜の里に連れて行って――。

 竜の人にアンジェの看護をお願いした。

 いつも唐突ですみません。

 よろしくお願いします。


 その後で、私は家に戻った。

 相手は悪魔だ。

 念の為、ゼノとフラウに同行をお願いした。


 そして私たちは、メティネイルを呪縛した上で――。

 対話を始めるのだった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 悪魔を捕まえました。どうしますか? 1.悪魔対策開発用モルモット 2.封印して動力源として搾り取る 3.巣への繋がりを調べて巣ごと抹殺
[気になる点] こんにちは、クウちゃさんさまです。 誤字なのか、わざとなのか判断つかない
[一言] 危機一髪クウちゃん間に合う
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ