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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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912/1359

912 出発





「……やっほー、アンジェ」

「おはよう、クウ。出発前から疲れた顔ね」

「いやー。パーティーメンバーがね、とんでもない量の荷物を持ってきて、どうしたものかと揉めてねー」

「あー。うん。そうみたいね。ごめん。実はこっそりと見てた」

「助けてよー」

「無理無理。相手の人、伯爵家のご令嬢でしょ? しかも先輩だし」


 オーレリアさんは、結局、荷物なしで行くことになった。

 なったというか……。

 途中で面倒になって私がそう決めた。

 もちろんメイドさんなんて連れて行きませんっ!

 うん。

 はい。

 必要なものは宿場町で買えばいいよね……。


 ともかく集合時刻間近。


 私は、アンジェのところに少しだけ遊びに行った。


「がーはっはっは! そんなもん、事前に打ち合わせしとかねー方がバカだわな! その点、俺らは完璧だぜ! な、アンジェリカ!」

「だから――、慣れなれしく肩に手を乗せるな!」

「ぐはっ」


 アンジェが裏拳でギザをどついた!

 ギザは朝からぶっ倒れた!


「ったく、もう」


 アンジェは腕組みしてそっぽを向いた。


「こっちはこっちで大変そうだね」


 私は苦笑した。


「ホントよ。手が痛くなるわ」

「あはは」

「……お互い苦労しそうよね。頑張りましょう」

「だねー」


「おはよう、クウちゃん」

「あ。ネスカ先輩っ! おはようございます!」


 アンジェと笑い合っていると、馬車の方から銀髪で日焼け肌の美人さん、ネスカ先輩がやってきた。


「アンジェリカのことは任せておいて。この大猫には厳しくしていくから」


 倒れていたギザの脇腹に蹴りを入れてネスカ先輩は笑った。

 ネスカ先輩はギザの首根っこをつかむと、


「ほら、シャンとしなさい」


 と、強引に立たせて、脇に放り投げた。

 うむ。

 容赦がないね。

 素晴らしい。


「よかったね、アンジェ。いい先輩と一緒で」

「ええ。助かってるわ」


 ギザのことは無視してのどかに会話していると、スオナがやってきた。


「やあ、クウ。おはよう」

「おはよー」

「さっきは申し訳なかったね」


 なんのことかと思ったら、なんと。

 マウンテン先輩に絡んできた騎士科の上級生2人は、スオナのパーティーメンバーとのことだった。


「それは……うん。スオナもお疲れ様だね……。アンジェもスオナも、なんというか男運がないね……」

「やめてよー。縁起でもない」

「まったくだよ。クウに言われると冗談にならないよ」

「あはは。ごめん。じゃあ、言い直すね。2人には男運があります。この先、素晴らしい出会いが必ずあります。モテモテのウハウハで、よりどりみどりの人生が待ち構えていることは確実です」

「いや、僕は、それも遠慮しておきたいよ……」

「そうね」


 結局、一般的に無難な感じで、ということでまとまった。

 おみくじでいうなら吉が一番ってところだ。

 ちなみにネスカ先輩は、意外にもと言うと失礼だけど、モテモテでウハウハの人生がご希望だった。


「そういえば聞いてなかったけど、スオナの行く先はウツロ村なの?」


 私とアンジェ、それにレオはウツロ村が目的地だ。

 一緒だと面白いねー。

 と思ったけど、残念ながら別だった。

 お互いの健闘を期待して、私はチーム・マウンテンのところに戻った。


「……あの。クウちゃん、わたくし本当に、何1つ持たずに、これから数日間の旅に出るのですか? メイドもなしに……」


 オーレリアさんが死にそうな声でたずねる。


「お金は持ちましたよね?」

「はい。一応は……。金貨20枚だけですけど……」


 約200万円。

 うむ。

 さすがの金銭感覚だ。


「なら平気ですよー。ほら、元気出してください。せっかくの旅ですよ。一生に一度の経験なんですから楽しみましょう」

「はぁ……。気は重いですが、そうですわよね……。二度はないでしょうし、楽しまねば損ですわね。何も持たずに、誰も連れずに旅をして、何が出来るのか。わたくし、確かめて見ることにしますわ」


 オーレリアさんも気を取り直してくれたところで。

 いよいよ、時間となった。

 私たちは整列する。

 賢者の衣装を着たヒオリさんが、学院長として私たちの前に現れる。

 お約束の話をあれやこれやと聞いた。


 話がおわれば、出発の時!


 私たちはついに、それぞれの馬車へと乗り込んだ。

 まずは大通りを進んで、帝都の外へと出る。

 私たちの馬車は、マウンテン先輩が御者を務める。

 御者台は、普通なら3人用だけど、マウンテン先輩の場合は1人用だ。

 私たちは荷台に乗り込む。


 馬車は、貴族用の豪華なものではない。

 幌のついた商人用のものだ。

 私たちは、塩の壺やキャンプ道具が積まれた簡素な室内で、板張りの床に直に座ることになる。


「……すごく揺れますのね。……それに、椅子もないのですね」

「帝都から街道に出れば、もっと揺れますよ」

「わたくし、夕方まで体が持つかしら」

「あはは。慣れますよー」


 たぶん。


 ちなみに私が商人用の馬車に乗るのは、これが4度目だ。

 最初は去年の春に、オダンさんの馬車。

 街道を1人で歩いていたら声をかけてくれたんだよね。

 次は夏休みに、マウンテン先輩たちに誘われて。

 即席のパーティーを組んでマーレ古墳に向かったんだよね。

 獣人のおじさんおばさんの馬車で鍛冶の町アンヴィルに行ったこともあった。

 どれも、なんだか懐かしい。


 護衛の人たちとは帝都の外で合流した。

 彼らは馬に乗って、目立たずうしろを付いてくるようだ。

 教師も同様だった。


 ちなみに馬車の荷台の幌は、上半分だけのタイプだ。

 各面には、ちゃんと手すり板もあるので丸見えということはないけど、風通しはかなり良い。

 中の様子は、外からでも見えるようになっていた。

 あまりだらけすぎていると、悪い評価が付くのかも知れない。


 とはいえ、道中は長い。


 とりあえずは気にせず、まずはのんびりと、手すり板に肘を乗せて、側面に流れる景色を堪能していこう。







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― 新着の感想 ―
[気になる点] >ちなみに私が商人用の馬車に乗るのは、これが3度目だ。 第710話にてアンヴィルへ向かう際、獣人ご夫婦に同乗しているようですので、クウちゃんは4回の商人馬車乗車経験があるのではと思い…
[一言] クウちゃんさまがいつかのメイド服を着て全力でオーレリアさんのお世話をする旅とか見たいかも 今回は普通の女の子の旅なので苦労しそうですけど、 楽しい旅になるといいですね
[一言] オーレリアさん、お達者で…
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