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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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909 前夜のこと




 さて。


 なんやかんやありつつも、ついに野外研修の前夜となった。

 明日の朝、私は旅立つ。

 今、私は自分の部屋の中に旅の荷物を広げて、最終確認を行っている。


 今回のテーマ。


 それはズバリ、普通の女の子として旅すること。


 アイテム欄は使わない。

 汚れを落とす効果の付いた固有技能の『透化』も封印する。

 ……できるだけ、ね。


 身につけるのは、学院の制服と普通の下着。

 腰には水筒とポーチ、背中には外套。

 頭にはツバの広い帽子をかぶる。

 けっこう魔女っぽい格好になるけど、実は気に入っている。


 外套の内ポケットには、細身の投げナイフを差しておいた。

 獲物を狩る時に使いたいなーと思ったからだ。

 ウサギとか捕まえられれば、ディナーに良さそうだし。

 ヒオリさんからはショートボウをオススメされたけど、弓と矢はかさばるし私は扱いになれていない。

 その点、ナイフであればお手の物だった。

 遠くで動いている獲物にも、バッチリ当てることができる。

 まあ、うん……。

 狩ったとして、捌けるかは別問題なのですが……。

 私には絶対に無理なので……。

 そこは、マウンテン先輩にお任せしよう……。



 バックパックに詰め込む荷物はこんな感じだ。


 まずは、お着替えセットに、タオルに歯磨きセットにヘアブラシ。

 簡単な調理器具と食事道具。

 サンダル。

 靴はブーツを履いていくので、休憩の時にリラックスできるサンダルは、地味だけど必須のアイテムだ。


 保存食には、ロックさんオススメの、干し肉とチーズを用意した。

 ロックさんが言うには、消毒薬としても水を腐りにくくさせるためにも使える蒸留酒も必須だそうだけど……。

 それについては、さすがに自重した。

 飲んじゃうと……。

 いけないしね……。


 ごくり。


 あー。


 さーけがのみたいー。

 ららら。

 さーけがのみたいー。


 ダメダメっ!


 頭の中で勝手に流れ始めた歌を振り払って、私は確認に戻る。


 コップとロープと布袋は、バックパックの外側にくくりつける。

 この3つはすぐに使えるようにしておくと、たまに便利らしい。

 ロックさんのオススメだった。


 あとの荷物は、怪我をした時のためのポーションを3本。

 魔石ライトと魔石バーナー。

 私は最初、冒険者の明かりや火と言えば、松明や火打石を想像して、そちらを準備しようと思っていたんだけど……。

 そんなメンドクセーもん使うかとロックさんに笑われたのでやめた。

 実際、冒険者は、貧乏な新人か物好きでもなければ、明かりや火については魔道具を使うのが一般的のようだ。


 私の装備は以上だ。


 結局、かなりの量になってしまった。

 バックパックは大容量タイプなのに、ぎっしりと詰まった。


 それでも、野宿に必要なテントや毛布は別途だ。

 宿泊道具については学院側が参加者共通のものを用意していて、最初から馬車に積まれている。

 ホント、普通の旅って大変だね……。


 最終確認をおえて――。

 荷物をバックパックに詰め直して――。


 その後、私は1階の工房に行った。


 工房には明かりが灯っていて、ヒオリさんがいた。

 メイドロボのファーもいる。

 ファーは黙々と分厚い本を読んでいた。


「おつかれさまー」


 声をかけると、ヒオリさんが顔をあげる。


「お疲れ様です、店長。旅の支度は整いましたか?」

「うん。そっちはどう?」

「はい。ファーは本当に優秀ですね。某も驚いてばかりです。算術については最初から完璧でした」

「おー。すごいねー」


 ファーは今、いろいろな問題集を解いている。

 メイドロボは、何をどれくらい覚えることができるのか――。

 確かめてみようという話になったのだ。


「他の科目についても、教科書や文献を読ませれば、読んだ部分については完璧な解答を行えます。学力としては、5日とかからず、学院を卒業するレベルには達してしまいそうです」

「……なんか、怖いくらいだね」


 優秀すぎて。


「はい。記憶の容量次第では、動く図書館になってしまいそうです」

「そかー」

「それで、なのですが……」

「ん? どしたの?」

「はい。ファーについては、店長が研修の間、某とフラウ殿で預かって、徹底的に知識を仕込むということになっていましたが……」

「うん。そだねー」

「どこまで仕込んで良いものかと」

「全部でお願いー」


 私は笑顔で即答した。


「やり過ぎになりはしないかと、やや心配もしているのですが……」

「どうせならさ、どこまでやれるのか、見てみようよ」


 うむ。


 その方が面白いよね、絶対。


「よろしいのですか?」

「うん。いいよー。ファーってさ、人工知能にレベルがあってね。上がればもしかしたら自我を持てるかも知れないし」

「自我を持つとなると、世間への影響も大きそうですが……」

「そこは、アレだよ、アレ」


 問題ない方法、あるよね。


「アレとは……?」


 綺麗な緑色の髪を揺らして、ヒオリさんが首を傾げる。


「私たちが普通にしていれば、たぶんみんなも、そういうものなのかーって思うようになるかなーってこと。お店でも、なんか、そんな感じだったよね。難しく考えなくても平気だよ。……まあ、あとはさ、」


 私は言葉を続けて、


「最悪だよ? 最悪の場合は、リトとゼノに力を借りて、何もかも都合よく認識を変えてもらえば、ね」

「良いのですか……? 大精霊の力を私的に使っても……?」

「何を今さらー」


 あっはっはー。


「わかりました。それでは全力で、やらせていただきます」

「うん。ファーのこと、育ててあげて」

「お任せくださいっ!」


 これは帰宅が、楽しみになった。





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― 新着の感想 ―
[一言] とりあえずニクキューニャーンは拒否られそう
[良い点] いつも楽しく読んでます! ファーさんの成長が楽しみだけど、現代的な感じなら、ペッパー君が自我持つ感じかな? 感覚的に。 良い方に変わると楽しそうですね~ 悪の女幹部にはならないでね(…
[一言] ファー今後が楽しみだなあ
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