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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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906 対決! クウvsロック!




「あ、私はいいから。遠慮しておくので」

「なに言ってんだ。せっかくの機会だぞ。おまえだって野外研修には出るんだから見てもらえよ」


 ぐぬぬ。


 レオのヤツ、どうして今日に限って妙に余計なお世話なのか。


「おう。遠慮は無用だぞ。来い来い」


 くううううう。


 ロックオンされたぁぁぁ。

 ロックさんだけにぃぃぃ。


 名指しのように言われては、もはやこれまで。


 私はあきらめて前に並んだ。


 前に出たのは、普通科1年生の5クラスからは、レオと私と――。

 あともう1人、レオに選ばれて、レオとパーティーを組むことになったクラスメイトの男子生徒。


 騎士科1年生の上位陣からは10名。

 半数だ。

 騎士科の上位といえども、まだ1年生ということもあってか、全員が研修に行くわけではないようだ。


「さーて、じゃあ、やりたいヤツから前に出な。軽く遊んでやるぜ」


 木剣を肩に担いで、余裕の態度でロックさんが言う。


「なら俺様がやってやるぜ! Sランクだか何だか知らねーが、チャラチャラした態度しやがってよ! 気に入らねえ!」


 肩をいきらせて獅子男のギザが真っ先に立候補した。


「はははっ! オラオラ野郎には言われたくねぇな、それ」

「泣きべそかかせて逃げ帰らせてやるぜ!」

「やってみな」


 これは初っ端から、面白い戦いになりそうだ。


 教師の立ち会いの下で、ロックさんとギザが木剣を構える。


 ロックさんは片手で木剣を持ち、もう片方の手は使うつもりがないのか、だらりと下げたままだ。


 対するギザは両手で正眼に構える。

 意外にも正統派だ。


「デカさでは圧倒的に騎士科のヤツだよな……。さすがのSランクでも、かなりキツイんじゃねぇか、これ」


 レオがつぶやいた。

 確かに身長と体重は圧倒的にギザが上だ。

 とはいえ……。


「それを言ったらメイヴィスさんはどうなるのさー」

「……あー。それはそうか」

「ねえ、それよりもさ。あいつってホントに私たちと同じ12歳?」

「さあなぁ……」


 戦いが始まる。


 おわった。


 足を払われて尻持ちをついたギザが、呆然とロックさんを見上げる。


「どうした?」

「テメェ……。反則だろうがよ! 剣の試合だぞ!」

「バカかテメェは。涙目になって先生に泣きつく前に立てや」

「この野郎! ぶっ殺してやる!」

「おう。来い来い」


 ふむ。


 まさに大人と子供だね。

 まあ、実際、その通りなんだけれども。

 それなりに鋭くて十分に重いギザの剣をロックさんは軽々とあしらう。

 筋力差はあるかなーと思っていたけど、正面から打ち合っても、うしろにのけぞるのはギザの方だった。

 いや、うん。

 筋力差はあるんだろうけど――。

 衝突の瞬間を巧みにずらして、ギザの力を殺しているのだ。

 ロックさんは、たしかに適当にやっている感じだけど、そのあたりはもう体に染み付いているのだろう。

 さすがは実戦の剣だ。


 というわけで、最初の1人目はおわった。


「テメェは、もうちょっと相手の動きをよく見ろ。一方的な力と技だけで勝てる相手なんてたかが知れるぞ」

「クソが……。覚えてやがれ……」


 ヘトヘトのギザは、三下みたいなセリフを吐きつつも脇に下がった。


 この後もロックさんの指導は続いた。


 意外というか……。

 うん。

 けっこう、ちゃんとした指導で私は見ていて感心した。


 で。


 騎士科の生徒たちの指導が次々と進んでいって……。

 レオの指導もおわって……。


 気がつけば、列にいるのは、ぽつん、と、私1人になっていた。


「さて。最後の1人か」


 ロックさんがニヤニヤと私のことを見る。

 くうううううう!

 絶対、わざと私を最後にしやがったなぁぁぁぁ!

 でも私は動揺しない!


「よろしくお願いします」


 他人のフリをして、ペコリと丁寧に頭を下げるのだ!

 適当に指導を受けて、さっさとおわろう。

 と思っていたら――。


 シュッ!


 え。


 風を切る速さで突きが飛んできて、思わず私は身を横に反らした。

 剣が伸びたところで即座に薙ぎに変化する。


 あぶな!


 これも私は際どくかわした。

 完全に油断していた。

 まさかいきなりロックさんが、ここまで鋭い攻撃を先制で放ってくるとは考えてもいなかったのだ。


 ただ、追加の攻撃はしてこなった。


「さすがだな、クウ。ホント、運動神経はカンペキだな、おまえ」


 ロックさんが笑って気楽に言う。


「もー。やめてよー。当たったら大変でしょー」


 ぬう。


 どうしたものか。


「ほれ、どうした? 反撃してこないのか? びびっちまって、クウちゃんだけにくううってかぁ?」

「はぁぁぁぁ!? 言ったなぁぁぁ! 言ってくれちゃったなぁぁぁぁ! よおおおおおおし! やってやろうじゃねぇかぁぁぁ!」

「おし! こいやっ!」


 わたくし、柄にもなくキレかけてしまったのですが……。

 攻撃の瞬間、我に返った。


 よし。


 足をもつらせて、ばたり。

 こけた。

 それはもう盛大に。

 会場からは大いに笑いが溢れた。

 特にレオの笑い声が大きい。

 いや、うん。

 クラスメイトなんだから、せめて少しは心配しろよー!


「大丈夫ですか……? マイヤさん……?」


 教師が介抱というか様子を確かめにくる。


「……はい。なんとか」

「何やってんだよ、拍子抜けだな」


 ロックさんにまで失笑されたけど……。

 やむなし。

 ともかく私の番はおわった。


 覚えてろよ。

 今度、逆の場面で絶対に仕返ししてやるからな!



 ロックさんの指導自体は、実戦剣技のなんたるかを具現していて、大いにみんなの参考にはなったようだ。




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― 新着の感想 ―
クウちゃんが我慢しただと・・・明日は槍が降るのかなぁ?
[一言] クウちゃんが我慢しただと・・・明日は嵐かなあ?
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