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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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904 ミーティング!




 さあ、お昼休みのロビーにチーム・マウンテンのメンバーが集まりました。

 マウンテン先輩、オーレリアさん、私、サクナ。

 最初にマウンテン先輩が、あらためて参加へのお礼をする。

 律儀な人だ。


「私たちのパーティーですが、第3組、11月17日の出発となりました。行程は3日から5日。目的地は帝都の西、ウツロ村です」

「なんだか不穏な村名ですね」


 いかにもアンデッドに悩まされていそうな。


「ウツロ村は、湖に隣接した霧の立ち込める美しい村のようですよ。エルフと人間が共存しているという話です。クウちゃんさんやサクナさんには、きっと居心地の良い場所だと思いますよ」

「よく間違えられるけど、私はエルフじゃないですよー」

「その通り。クウちゃんは至高の存在なのだ。今度からクウちゃんのことは、いと尊き御方と呼ぶように」


 サクナが腕組みして、なぜか偉そうに言う。


「呼ばなくていいからね? 呼ばなくていいですからね……? サクナも、私をからかい続けるなら絶縁するからね」

「そ、そんなぁぁぁぁ! 私は真摯な態度です! 真剣です!」

「返事は?」

「は、はい……。以後、気をつけます……」

「何度も許さないからね?」

「は、はい……」


 ふう。


 ようやく理解したのか、サクナはしょぼくれてくれた。

 しばらく静かにしていてもらおう。


「そうですね。クウちゃんさんは異国のヒト族でしたね、失礼しました」

「マウンテン先輩には謝ってもらわなくていいですよー」


 いや、ホントに。


 気を取り直して、話を続けてもらった。


「運ぶ物資は塩です。重量はありますが、道中で欠損する可能性のほとんどない楽な品でよかったと思います」

「ふーん」


 私は、わかりやすく冷たい感じて、適当に相づちを打った。

 すなわち。


「おや。クウちゃんさんは、塩は嫌いでしたか?」

「いえ、ちがいます」

「と、言いますと?」

「塩対応です。塩だけに」


 なのです。


「……と、言いますと?」


 真面目なマウンテン先輩に困った顔をされてしまいました。


 しかも、こんな時に限って、サクナは無反応。

 何故か瞑想している。


 私はオーレリアさんに目を向けた。

 目を逸らされた。


 ふむ。


「すみませんでした。ちょっと、ぼーっとしていました」


 仕方がないので私は謝った。

 どうやらこのパーティーはツッコミ不在のようだ。

 残念。


 この後は、気を取り直して旅程を話し合った。


 テーブルに地図を広げる。

 ざっと見て、帝都からウツロ村へ向かうには2つのルートがあった。

 新街道と旧街道だ。


 新街道は、丘陵を迂回して平地を進む遠回り安全ルート。

 旧街道は、丘陵を突っ切る直線ルート。


 新街道には途中に宿場町があった。

 魔物が出現することも滅多になくて、安全に進むことができる。


 旧街道は、魔物がそれなりに出現することから、今は一般の商人や旅人にはほとんど使われていない。

 なので、道中に宿場町もなかった。


「野外研修には、スピードレースの側面もあります。他のパーティーよりも早く村に到着して、悩み事や生息する魔物の情報を聞き、先駆けてそれを解決することが高評価の近道だからです」


 マウンテン先輩が言う。


「なら、旧街道の丘陵ルートですか?」


 私はたずねた。


「……他のパーティーは、おそらくそちらでしょうね。例年でも、旧街道を選ぶパーティーが多いようです」

「強行軍すれば、朝までには着いちゃいそうですしね」


 丘陵の移動といっても、主に合間を進むので、勾配はキツくない。

 馬車でも無理は利きそうだ。


「いえ。日が暮れて、日が昇るまでの移動はルールで禁止されています。野宿ということになりますね」

「それはそれで楽しそうですねー」


 キャンプ。

 私は好きだ。


「ただ、稀に魔物からの襲撃を受けて怪我人も出るそうです。護衛が付いているとはいえ、主体はあくまで我々ですし」

「研修とは、そんなに危険なものなのですか……?」


 オーレリアさんが怯えた声を出した。


「死者が出たことは、記録の上ではありません。ご安心ください」

「平地のルートにしましょう!」

「そうですね。平地のルートなら、夕方までには町に着いて、ゆっくりと余裕を持つことが可能ですし」

「でも、ウツロ村への到着は遅くなりますよね?」


 私はたずねた。


「翌日の午後になると思います」


 丘陵ルートで夜明けと共に出れば、午前の早い時間にはウツロ村に到着することができるとのことだった。


「それなら丘陵を突っ切った方がよくないですか?」

「いえ。慣れなれい野宿では体力も消耗しますし、しかも我々は4人なので夜番の負担も大きくなります。少しくらい遅れても、人と馬が万全の状態で現地には到着しましょう。先行したパーティーが無謀な行動に出ていた場合でも、それならすぐに救出に行けますからね」

「それだと評価が上がらないかも知れませんよ?」

「そうとは限りません。私は騎士を目指していますからね。万全の体制で備えることも正しい在り方のはずです」

「なるほどー。冒険者とは逆なんですねー」


 冒険者の場合には、たとえばロックさんみたいに、無茶で無謀でも突撃して道を切り開いていくのが大正義――。

 という価値観がある。

 ボンバーなんかも、まさにそのタイプだ。


「そうですね。騎士とは守るもの。備えるもの。私はそう考え、日々、騎士を目指して生きているつもりです」


 私的には正直……。

 受け身の姿勢で評価を期待するより……。

 もっと攻撃的に評価を狙ったほうが良いのでは、とは思うけど……。

 それは私が、冒険者だからだろう。

 うん。

 私は冒険者なのだ。


 …………。

 ……。


 いかん。


 そういえば、失効した冒険者資格を取り戻してから、まだ一度も冒険者として依頼をこなしていなかった。

 依頼、こなさねば……。

 さすがに失効を繰り返すのはマズい気がする……。


「ともかく町に行くルートで決定ですわねっ! よかったですわ! 野宿なんてしたらわたくし死んでしまいそうですし!」


 オーレリアさんが早口でそう言った。


「いえ、あの、オーレリアさん。ウツロ村では、多分、野宿ですよ?」


 私は冷静に訂正する。


「え? そうなんですか?」

「なにしろ宿泊施設なんてないだろうし……」

「そうですね。他のパーティーと同じ場所でキャンプ泊になります。ウツロ村には複数のパーティーが向かいますので」

「そうなのですね……。わたくし、死んでしまいますわね……」

「あはは」


 私は笑って受け流した!


「ところでマウンテン先輩、他パーティーのメンバーってわかりますか? たとえばそこにいる獅子男のところとか」


 同じロビーでは、アンジェと獅子男のギザも、ネスカ先輩たちと集まって打ち合わせをしていた。


「ああ、ネスカたちとは同じ組ですよ。彼女らも同日にウツロ村です」

「おお。やった!」


 それは嬉しい。


 あと、ブレンディ先輩率いるパーティーも同じだった。

 レオとも同じということだね。


「マウンテン先輩、期待していいかもですよ!」

「はて。何がでしょう?」

「事故ですよ、事故! いかにもフラグを立てそうな人たちが、幸運にも同じ組なんてラッキーですよ!」


 レオなら、きっと何かしでかしてくれるに違いない!

 ブレンディ先輩も!


 マウンテン先輩の評価爆上げを期待して、私は喜んだのだけども……。


「クウちゃんさん。人の不幸など期待してはいけませんよ」


 マウンテン先輩には、たしなめられました。

 ごめんなさい。






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― 新着の感想 ―
あっ悪魔さん終わったな
[良い点] いつも楽しく読んでます! フラグと言う導火線がたくさん火がつくように見える(笑)
[一言] 伝わらないボケは辛い
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