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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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902/1359

902 ロビーにて




「ええー! クウちゃん、野外研修に出るのー!?」

「うん。手伝いでねー」


 学院のランチタイム。

 パンと肉と野菜の定番プレートセットを食堂でいただきながら野外研修への参加を話すと――。

 一緒に食べていたクラスメイトのアヤに驚かれた。


「大丈夫なのですか? 外で泊まるのですよ?」


 同じく一緒に食べていたエカテリーナさんには心配された。


「平気だよー」

「魔物と戦うこともあるのですよ?」

「みたいだねー。でも私、ただの人数合わせだし」


 そもそも私がいる時点で、多分、魔物とは戦いにならない。

 なにしろ魔物くんたちは、みんな、友好的だし。

 その意味ではアレか……。

 マウンテン先輩、評価は稼ぎにくいかもだねえ。


 ともかく。


 今日はランチの後、ロビーで初めての打ち合わせなのだ。

 私のパーティーメンバーは……。


 5年生、リーダーのマウンテン先輩。

 3年生、貴族令嬢のオーレリアさん。

 1年生、エルフのサクナ。


 この3人だ。

 正直、サクナには不安がある。

 果たして、どんな打ち合わせになるのか……。

 私はアヤとエカテリーナさんと別れて、ドキドキしつつ、1人で待ち合わせのロビーへと向かった。

 ロビーでは、すでに騒動が起きていた。

 獅子男のギザとサクナが、なにやら言い争っていた。


「バカ者が! いいか! クウちゃんさまだ! クウちゃんさまこそが至高! 至高の存在なのだ! クウちゃんさまの前では、あらゆる人間など無価値! ゴミクズも同然! 貴様もクウちゃんさまの輝きを涙して受け止め、今までの愚かな行いを懺悔するといい!」

「バカはテメェだ! いいか! 姉御だ! 姉御こそが俺ら未熟な若輩を導く、まさに御旗! 究極の存在! その旗の下に集い、俺らもまた究極の存在を目指して邁進していくんだよ!」

「クウちゃんさまこそが至高!」

「姉御こそが究極!」


 ふむ。


 なんだ、これは。

 私の予想の遥か斜め上を行く言い争いだった。

 2人とも、蹴っ飛ばしてやろうか。


 どうやら、私たちのパーティーとアンジェたちのパーティーが、待ち合わせ場所をかぶらせたようだ。


 ロビーにはアンジェもいた。


 アンジェは騒ぎを無視して、女生徒の先輩とくつろいでいた。

 私と目が合うと――。

 無言のまま、軽く肩をすくめた。

 アンジェと一緒にいる女生徒は、ネスカ先輩と、もう1人、けっこう鍛えていそうな先輩だった。

 ネスカ先輩とも視線が合って、私は会釈した。


 ロビーには、すでにパーティーメンバーのオーレリアさんも来ていた。

 オーレリアさんは1人で座っていた。

 目を閉じて動かず、まるで瞑想しているようだった。


 私はオーレリアさんのところに向かった。


「ごきげんよう、オーレリアさん」


 椅子に座って、声をかける。


「ごきげんよう、クウちゃん。今日も良いお天気ですね」

「はい。そうですね」


 窓から入ってくる陽光は、確かに明るい。


 それどころではない気もするけど……。


「至高だ!」

「究極だ!」


 グルメ対決でもしているのかな。

 というような気もする、ギザとサクナの怒鳴り声が聞こえる。


「わからぬヤツめ! クウちゃんさまの威光を知らしめるため、貴様など今すぐこの場で成敗してくれるわ!」

「はっ! おもしれえ! 順位下位の雑魚がよ!」

「ふ。もはや今の私は、順位など気にしていない。至高の輝きのために、この手に剣を握るのみよ」


 あ。


 学院内で、まさかの喧嘩になりそうだ。

 これはいけませんよ。

 と、思ったところで、タイミングよくメイヴィスさんが現れた。


「貴方たちは、何を騒いでいるのですか?」


 さすがはメイヴィスさん。

 喧嘩寸前の2人は、微笑ひとつで、すごすごと退散した。


 メイヴィスさんが私のところに来る。


「クウちゃんも、いたのなら止めてください。喧嘩にでもなったら、せっかくの野外研修が台無しですよ」

「あはは。ですよねー」


 本気で関わりたくなくて、つい。


「しかし、オーレリアさんがクウちゃんとパーティーを組むとは、聞いた時には本当に驚きました」

「我ながらそう思います。ちなみにただの偶然ですよ」

「話は聞いています。幸運でしたね」

「ええ。――本当に。あまりの幸運に、今も泣きたいほどです」


 同級生のメイヴィスさんとオーレリアさんが会話していると、すうとやってきたサクナが私の前に片膝をつく。


「これはクウちゃんさま。いらしていたのですね。気づかず、失礼しました」

「……本気でそういうのはやめてね? 迷惑だからね?」

「失礼しました。そうでした。学院では、普通のクウちゃんさまでした。こんにちは、普通のクウちゃんさま」


 サクナが立ち上がって一礼する。


「普通もさまもいらないからね? こんにちは、サクナ」


「さすがはクウちゃん。個性的なメンバーですね」


 メイヴィスさんが愉しげに笑う。

 メイヴィスさんは、本当に通りかかった、というか、ちらりと様子を見に来ただけのようだった。

 メイヴィスさんが主導して組んだアンジェたちのパーティーには関わらず、そのまま立ち去った。

 それからすぐにマウンテン先輩が来て、メンバーは揃った。

 早速、打ち合わせを始める。


 ちなみにメイヴィスさんは、私が野外研修に出ることについては、驚いた様子を見せなかったけど……。

 次の機会に聞いたところ……。

 私のような戦闘狂が野外研修に出ないわけはない。

 絶対にキッカケをつかんで出ると思っていました。

 とのことでした。

 なんて心外なっ!




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― 新着の感想 ―
[一言] サクナに対して厳烈過ぎ…サクナというよりエルフに対して苦手なのはわかるけど…これも初対面がアレなヒオリさんが悪いんや… サクナ視点のクウの話見てみたいな
[一言] 狂信者の言い争いw
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