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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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879 最強バーガー決定戦!




「ごめーん! ウェルダン、遅くなったー!」

「謝るのはいいから打ち合わせだ!」


 結局、当然のようにユイナちゃんたちは騒動を起こしていて、まあ、大きくしたのは私なのですが……。

 ともかく、闘技場に戻るのはすっかり遅くなってしまった。

 闘技場に観客が入り始める。

 大わらわで準備する内、あっという間に時間が来た。


 さあ、いよいよだ。


 私は白いローブを羽織って、フードもかけて、軽く正体を隠した。

 さらにマイクを手に持つ。

 そのマイクは、ヒオリさんとフラウが開発したボイスチェンジャー機能付きの特製マイクだ。

 ちょっと大人っぽい感じに、バッチリ声は変わる。

 このマイクを魔道具の音響機器につなげて、実況はする予定だ。

 今日はさすがに観客も多くて、しかも地元の帝都なので、さすがの私も正体は隠すことにしたのだ。


 ユイナちゃんたちも無事に会場に来たようだ。

 魔力でわかる。

 ユイナちゃんたちは、係員の案内を受けて、特別観戦室に入る。

 今日は時間もないので、陛下たちと試合を観戦しつつ、合わせて情報交換等をする予定なのだ。

 まあ、うん。

 町で遊んでいる時間はあるんですけどねっ!

 今日はもともと遊ぶために来たので、やむなしなのだ。


 観客の大半が席に着いたところで、私は1階の通路から闘技場に入った。

 実況席はない。

 今日の私は、実況者にして現場リポーターなのだ。

 頑張って動いて、選手たちの様子を間近から伝えようと思う。


「今日はよろしくね、ロディマスさん、皆さん」

「お任せください、クウちゃんさま。今日のこの日のため、我ら、しっかりと訓練してきました」


 料理会場の脇に置かれた音響機器にマイクのコードを接続する。

 マイクは有線なので、動き回ってコードが絡まらないように、今日の私には補佐役が付く。


 なんと補佐役は、帝国が誇る新規のエリート集団、皇帝直属にしてお兄さまが隊長を務める近衛『白騎士隊』の面々だった。

 私が以前、『ボルケイノ24スペシャル』で我を無くして、一心不乱に狂気じみて鍛え上げた人たちだ。

 一時は私のオーラ浴びすぎて酷いことになっていたけど……。

 ゼノのおかげで、今では正気を取り戻している。


「「「クウちゃんさまの御為、我ら身命を賭してこの任を果たします! 失敗には死を! 成功には栄光を!」」」


 はい。


 まだなんか、ちょっとだけおかしな気もするけど……。

 私は気にしないことにした。


 しばらく待機していると、闘技場に勇壮なファンファーレが鳴った。

 始まりの合図だ。


 ファンファーレがおわったところで――。

 進行役の文官の人が、皇帝陛下並びに皇室の方々の入場を宣言。


 国歌の演奏と共に陛下が特別室から姿を見せて、観客に軽く手を上げた。

 次には皇妃様、さらにはお兄さま。

 ちゃんとセラもいる。

 実に美しい、白に金をあしらったドレス姿だ。


 会場は歓声に包まれた。


 皇室はちゃんと民衆の心を掴んでいるようだ。

 素晴らしいね。


 さあ!


 いよいよ私の出番だ。


 私はマイクを握って、1人、正確にはロディマスさんたちを引き連れて、料理会場に上がった。


「皆様、お待たせしました! いよいよ運命の対決です! 果たして今日、最強のバーガーを作り上げ、帝国料理史に名を残すのは誰になるのか! わたくし、実況のマイヤンと申します。よろしくお願いします。さあ、まずは本日の運命を決める審査員の皆様のご紹介です!」


 陛下たちのいる特別室の下の最前列に設置された審査員の席は、5つ。

 審査員の紹介は私が行う。

 呼ばれた人は立ち上がって、一礼だけをする。

 審査員の本番は、まさに審査の時だ。


「まず1人目は、皆さんご存知! 今や帝都市民の軽食の定番! 姫様ドッグ店の店長さんでーす!」


 姫様ドッグの店長さんは……。

 最初は固辞されたけど……。

 市民の代表として、頑張って来てもらった。

 超絶に緊張しているけど、楽しく味わってほしい。


「2人目は、元Aランク冒険者! すでに現役を退いているとはいえ、未だその筋肉は衰えていない! 戦斧を振るえば嵐を巻き起こす男! 冒険者ギルド、ギルドマスター、ギルガ・グレイドール氏!」


 ギルドマスターは、利権に関わらない第三者として参加してもらった。


「3人目は、帝国を代表する大商会のひとつ、ウェーバー商会の頭取、ゾル・ウェーバー氏!」


 ウェーバーさんは利権のかたまりだけど、最近ではお兄さまと仕事をすることも多いし、私もお世話になっている。

 ということで、今回もお願いすることにした。


「4人目は鍛冶の町アンヴィルより、わざわざお越しいただきました! 今年100周年を迎えたアンヴィル・バーガーフェスティバルのご意見番! ドワーフ鍛冶組合名誉顧問! ドン・イワッチ氏!」


 ドワーフの長老ドン・イワッチ氏は、先達たるバーガーフェスへの敬意を込めて依頼させていただいた。


「そして、最後の1人は! 帝国の麗しき花! 第一皇女、アリーシャ・エルド・グレイア・バスティール殿下でーす!」


 最後の席には、本来ならお兄さまが着く予定だった。

 でもアリーシャお姉さまが、どうしてもと言うので、お兄さまの了承も得て仕方なく交代となった。

 審査は公正にお願いしますねっ!


「今日は、この5人が審査員として、最強バーガーを決めてくださいます! よろしくお願いします!」


 わー!


 会場は大いに盛り上がった!


 そして。


「では、次に――! これから最強バーガーを製作する! 選ばれし、4人の料理人たちの入場です!」


 闘技場に勇ましい大音量の演奏が響いた。

 闘技場のゲートから順に料理人が現れ、演奏と観客の大歓声の中、料理勝負のステージへと向かう。


 先頭を歩くのは、純白の料理服に身を包んだハラデル男爵。

 次には、同じく純白の料理服に身を包んだ大宮殿料理長のハンザ氏。

 さらには、こちらも純白の料理服に身を包んだトルイドさん。


 3人とも、まっすぐに前を向いて、揺るぎない足取りでステージへと進んでいく。

 自信に溢れた堂々たる姿だ。

 まさに一流、まさに選ばれし料理人と言えた。


 最後に、少し遅れて……。

 シャルさんが現れた。


 シャルさぁぁぁぁぁぁん!


 私は心の中で叫んだ。

 あやうく声に出すところだった。


 だって、うん……。


 いつもの三角巾を頭につけて、いつものエプロンを体につけて、ゲートから現れたシャルさんは……。

 すっかりとやつれた様子で、猫背になって……。

 ふらふらと……。

 今にも倒れそうな足取りで歩いていた……。


 シャルさん……。

 きっと、バーガー製作で徹夜して、それでも完成できなかったのね……。


 それはわかる。


 わかるけどさ……。


 せめて見栄を張ろうよぉぉぉぉぉ!


 晴れ舞台なのにぃぃぃぃぃぃぃ!











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― 新着の感想 ―
[一言] ポンコツお姉様参戦嫌な予感しかしないw
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