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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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857 エリカにお願い




 ユイが朝から来た翌日。


 夜明け前の時間。


 まだ暗い空の下――。


 私は早起きして、そのまま学院に行けるように制服に着替えてから、エリカのところに行った。

 エリカはまだ、豪華なベッドの上ですやすやと寝ていた。

 私は膝をついて、エリカの寝顔を眺める。


 普段は高笑いとかしている超お嬢様なエリカも、寝顔には、まだ幼さが残っていて可愛らしいものだ。


「……エリカリータ」


 私は耳元で囁いた。

 すると……。

 少しの間を開けて、エリカがゆっくりと目を開いた。


「おはよ」


 私は笑いかけた。


「……おはようございます、クウ」

「よく眠れた?」

「ええ……。見られていたとは思えないくらいに」

「あはは。祝福、してあげよっか?」

「ええ。お願いしますの」

「はい、ブレス」


 光のきらめきをプレゼントしてあげた。


「ありがとうございますですの。朝から活力が満ち溢れますわ」

「それはよかった」


 エリカが身を起こして、ベッドの上に座った。


「それで、いったい、今日は何ですの?」

「実は相談があって?」

「バーガー大会の?」

「ううん。そのこととは関係ないんだけどね」

「では、センセイの方から、新獣王国とトリスティンとの講和条約について追加の条件があるのですか?」

「ううん。そのこととは関係ないんだけどね」

「では……」

「実はね」


 私はユイが、クウバーガーとエリカリータみたいな、自分の名前の付いた食べ物を欲しがっていることを説明した。


「くだらないですの」


 エリカはため息をついた。


「あはは」

「そんなものユイ焼きとかいって、すき焼きでも作ればいいですの」

「んー。そういう名称はイヤみたいなんだよねー。なんか、自分が焼かれるみたいだからとか言って」


 私的には、ユイ汁でいいと思うんだけど。


「そもそもユイが公式料理なんて発表したら、それ以外は食べてはいけないみたいな大騒ぎになるのではなくて? ユイが美味しいと言っただけで、その料理を国宝にしようとするような国ですわよ、聖国って」

「それはもう平気みたいだよ。ユイはオーラの制御ができるわけだし」

「そういえばそうでしたわね。過去の異常な状態は、光のオーラの制御が出来ていないせいでしたわね」

「というわけで、何かないかな?」

「なら、ユイ焼きではなく、ユイリア風すき焼きでは?」

「ユイリア風かぁ……。上品な感じでいいかもだね」

「ちょうど、もうすぐ講和条約がありますし、その時に集まった各国の要人にユイの手料理として振る舞えば、一気に広まるでしょう」

「ユイが、国と種族を超えた平和と調和を願って作った料理、とか?」

「それ、いいですわね」

「獣王国が肉で、聖国が調味料でしょ。王国は……ネギとか?」

「残念ながら、うちの特産にネギはありませんわね。ネギも聖国です」

「そかー」

「でも、王国は調印式の会場となりますから、食器担当ということでいけば問題ありませんの」

「なるほど」

「いえ、でも、ネギも探せばありますわね。強引に、王国の特産品ということにしてしまいましょう! 王国ネギ! いいですわね!」


 ということで、エリカに相談したところ、あっさり話はまとまった。


「いやー、さすがはエリカ、助かったよ」

「ユイのワガママなんて放っておけばいいのに、とは思いましたけど」


 エリカが肩をすくめる。


「あはは。でも、ユイにも、なんだかんだでお世話になっているしねー。帝国との友好関係を築いてもらったり、闇の魔力のことを伝えてもらったり、私の友達に医学知識を伝えてもらったり」

「貸し借りでいえば、クウが気にする必要はないでしょうに」

「……結局、見捨てておけないしねえ」

「ユイが泣きつくのなんて、クウだけですしね」

「こっちにも来るんだよね?」


 『光の翼』と『転移』を習得して、しかもリトのサポートがあることで、ユイの行動範囲は一気に広まった。

 今ではジルドリアにもたまに行っていると聞いた。


「泣きつかれたことはありませんわね。愚痴を聞かされることはあっても」

「そかー」


「ところで、クウ」

「泣きつくのはやめてねっ!?」

「そうではありません」

「……婚約相手がいないって話じゃないの?」

「それはいったん保留しておりますの。今は、センセイ共同体の成立に向けての仕事が山積みですし」

「あのー。エリカ」

「はい。なんですか、クウ」

「センセイ共同体って……なに?」


 ちょっと驚いたけど。


「その名の通りですの。対悪魔を名目として実は経済的連結を目的とした、ゆるやかな同盟のことですの」

「センセイって名前を使わなくても……」

「なにを言っているのですか」

「え」


 なんで?

 正論だよね?


「最初からセンセイありきではありませんか、この話は。センセイという偉大なる存在があればこそ、我々はまとまれるのです。センセイとは、ユイに光の魔術を伝授した聖者であり、ナオに戦う力を与えた達人であり、このわたくしに発想力を授けた賢者であり、竜族を含めたザニデアの魔物たちが主と慕う者であり……。そのセンセイが弟子たる我らに仲良くせよと命じた。故に我々は、センセイのご意思に従って、そうするのですの」


 長々とエリカが語った。

 私は途中で、ぼんやりとした。

 そして思った。


 まあ、いいか。


 と。


 うん。


 センセイって、私には関係のない存在だよねっ!

 どこかの誰かだよねっ!


「それで、なんですけど……。ユイリア風すき焼きのことを伝えにユイのところに行くなら、ユイに伝言をお願いしたいですの」

「どんな?」

「早めに会いたい、と。いつでもいいから来て欲しいと。朝ならわたくしもほぼ部屋にいますから」


 ふむ。


 私は時計を見た。


 夜明け前に来ただけあって、まだ時間に余裕はある。


「なら、今からいこっか」

「え?」

「ほら、手を取って。転移、聖女の館」

「ちょ! クウ!? わたくし、パジャマのままなのですけれど!?」


 視野が暗転。


 私たちは、ユイの家に着いた。


 私の気配を感じて、リトとユイがすぐにやってくる。

 ユイも寝ていたようでパジャマだった。


 ユイリア風すき焼きのことは、ユイも大いに気に入ってくれた。


 ユイとエリカには、存分に話し合ってもらう。


 私は朝食を作ってあげることにした。


 ご飯は炊けているし、肉と各種野菜を甘辛く味付けした煮物もあった。

 なのであとは、汁物かな。


 ユイ汁……。


 ふむ。


 それって、どんなものだろうね。


 なんか、とろっとした感じのような気がするね……。

 いつも泣きついてくるし……。


 ユイをイメージしつつ、私はネギと豆腐でとろみ汁を作った。

 味付けは、超シンプルにダシと塩。

 見た目は透き通っていて上品なのにとろとろなのが、なんかユイっぽい。

 いいねっ!





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― 新着の感想 ―
ユイ汁… トロッとしてる… …ぬるぬる… …はっ!?(殴
[良い点] いつも楽しく読んでます! そこに気がつくのはすごい人だなと〜 料理だから軽く考えてた(笑)読んでました そうだよね〜最近の活躍見てて忘れてた! えらいさんなのよね~とびきりのVIP …
[一言] さらっと設定変更されたような クウちゃんそのネーミングは面倒な予感がするからやめとけ
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