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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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851 平和な学院生活




 平和だ。


 お昼前の授業をぼんやりと受けながら、私は1人、窓ごしに青空を見上げた。

 今日は10月の10日。

 気づけば、秋。

 空は、どんどん澄んで、高くなっていく。

 ふわふわしたら気持ちよさそうだ。


 ボンバーミッションからは、一夜が明けていた。

 果たしてボンバーはどうなったのか。

 放課後には判明することだろう。

 昨日預かった武具の修復はすでにおわっている。

 今日の放課後に、ボンバーたちが引き取りに来ることになっているのだ。


「マイヤさん。――マイヤさん」

「あ、はい」

「貴女、またポケッとしていましたね?」


 気づけば先生が私を見ていた。


「そんなことはありませんよっ! ちゃんと聞いていましたともっ!」

「では、続きを読んでください」


 くう。


 クウちゃんだけに。


 と思ったら、となりのアヤが、ここ、ここ、と指で教えてくれた。

 私は立ち上がって、ちゃんと読み上げた。


「よろしい。しっかりと聞いているように」

「はいっ!」


 ということはありましたが、それもまた平和なのです。


 お昼休みになった。

 先生と入れ違いのような速さで、お姉さまが現れた。


「クウちゃん、いますか? いますね。さあ、いきますわよ」

「……あ、はい」


 今日も私は生徒会室に連行されるようだ。

 勘弁してほしいところだ。

 最近はこれが続いている。

 おかげで、お昼休みにちっともクラスメイトと遊べていない。

 お姉さまの目的は、ハンバーガーの情報。

 なにしろトルイドさんとの婚約がかかっている。

 すごい話だよね。

 第一皇女の将来が、ハンバーガーの完成度で決まるって。

 どうしてそんなことになったのか。

 謎だ。


 ハンバーガーにはどんな種類があるのか。

 どんな具材があるのか。

 どんなソースがあるのか。


 それはもう、私はあれやこれやと語った。

 というか、語らされた。

 お姉さまはそれを、いちいち手紙に書いてトルイドさんに送っている。

 ただ、すでに話はループしている。

 バーガーについて、私が語れることはそれほど多くないのだ。

 専門家ではないしね。

 なので一旦、お昼休みの説明会は今日でおしまいにした。

 なにかあれば放課後にお店に来てください。

 毎日は来なくていいですらかね!


 教室に戻ると、もう午後の授業の始まる時間だった。

 席に着くと、途端に眠くなった。

 午後の授業は、幸いにもホームルームだった。


 話題は野外研修についてだった。

 野外研修は、11月の中旬から順次行われる。

 用意できる馬車と護衛に限りがあるので、一斉ではないようだ。

 野外研修では、先輩とパーティーを組んで馬車で旅に出る。

 指定された村を目指す片道一泊の旅だ。

 状況や選択によっては、野宿にもなるらしい。

 参加は希望制。

 一応、私でも参加できるものの、基本的には冒険者や騎士を目指す生徒のための実習イベントのようだ。

 なので普通科の生徒は、あまり参加しないようだ。


 参加しない場合でも、別途で、マーレ古墳のダンジョン町の見学ツアーがある。

 マーレ古墳は、帝都近郊のFランクダンジョン。

 余裕の日帰りコースだ。

 とはいえ、大半の生徒はダンジョン町に行ったことがない。

 こちらだけでも良い経験にはなりそうだ。


「俺はやるぜ! 夏季休暇で磨いた俺の腕を見せてやる! ゴブリンに襲われても即座に撃退だ!」


 クラスでは、真っ先にレオが参加を表明した。

 すると仲の良い男子たちがそれに続いた。


「よーし、ならみんなでパーティーを組んで派手にやろうぜ!」


 レオの声に彼らは盛り上がるけど……。


「1年生は、1パーティーに2名までですよ」


 残念ながら先生に却下された。

 結局、男子の参加者は、レオと、レオが指名した1人だけになった。


「ねえ、アヤ。私たちはどうする?」

「どうするって……。クウちゃん、参加する気なの?」

「アヤがやりたいなら付き合うよー」

「私はいいよー。ダンジョン町の見学だけでお腹いっぱいになりそうだし。帝都から離れると治安も悪くなるっていうし、危ないよね」


 なら私もダンジョン町見学ツアーだけでいいか。

 正直、野外研修には興味があったけど、無理にやるものでもない。

 旅なら自分でもしているしね。


 放課後になった。


 今日は工房にボンバーズが来るし、ボンバーのことも気になるし、学院の敷地から飛んで帰ってしまおうかなと思う。

 飛んでしまえば、カップ麺の完成前に帰宅できる。

 この世界にカップ麺はないけど。


 誰か発明してくれないものだろうか。


 ふむ。


 今度、誰かに提案してみようかな。

 案外、作っちゃうかも知れない。

 誰がいいだろう。

 ハラデル男爵か、トルイドさんか、姫様ドッグの店長さんか……。

 オダンさんでもいいかも知れないね……。


「クウちゃん、帰ろー」

「あ、うん」


 アヤに声をかけられて、思わずうなずいてしまった。

 今日の私は呆け気味だね。

 いけないいけない。

 でも、まあ、うなずいてしまったので、普通に帰ることにした。


 私はアヤと歩いて帰路についた。


 アヤの家は学院からだと、そんなに遠くない。

 私の家は普通なら送迎馬車に乗る距離だけど、アヤと別れた後で走るか飛ぶので帰宅は遅くならない。

 アヤには、いつも走って帰っていると思われている。

 クウちゃんって体力はすごいよね、とよく言われる。

 体力は、というところは、ごく自然に強調されている気がするけど、私は気にしないことにしている。

 勉強に集中する気力がなくて、すみません。


 たわいもないおしゃべりをしつつ……。


 いつもの交差点まで来た。


「クウちゃん、またねー!」

「うん。またー」


 いつものように、アヤとはその交差点でお別れする。


「さーて、と」


 今日はどうしようかなー。


 呆けた1日だったし、景気づけに少し体を動かすのもいいかな。

 まだ日は高い。

 空は青い。

 帝都中央学院は、課外活動や補習がなければ、午後3時にはおわるのだ。


 よーし!


 走るかー!


 空色の髪をなびかせ、私は元気よく足を踏み出した。





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[一言] のんびりたのしんでるなあ
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