表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

842/1361

842 事情説明会




 こんばんは、クウちゃんさまです。

 夜です。

 エカテリーナさんの、記念すべきガーデン・パーティーの日。

 私は大半の時間を、なぜかトリスティン王国で過ごしてしまいました。


 本当はすぐに帰って――。

 寝かせてしまったパーティーの参加者の皆様に――。


 やったね!

 祝福だね!


 って、言いたかったのだけど……。

 夜です。

 すでに完全に日は暮れてしまいました。


 それでも一応、私はエカテリーナさんのおうちに戻った。

 魔力感知でわかる。

 セラもまだいるね。

 反応先の1階の応接室の、庭へと出ることのできる大きな横開きの窓を、私は外から叩いた。

 真っ先に気づいたセラが駆け寄って窓を開けてくれた。


「クウちゃん!」

「やっほー」

「やっほーじゃないですよー! いったい、どこに行っていたんですか! みんな心配していたんですよ!」

「あははー。ごめんねー」

「もー。とにかく入ってください! お兄さまもお待ちですよ!」

「え? お兄さま?」


 お姉さまじゃなくって?


 セラに手を引かれて、私は部屋に上がった。


「遅かったな、クウ」


 すると部屋には、ソファーに腰掛けて、腕組みして、足組みして、笑顔で私を迎えるお兄さまが本当にいた。


「……えっと。なんでいるんですか?」

「もちろん、君に会うためだ」

「もしかして、怒ってます?」

「いいや。俺の心は、青空のように爽やかだが?」

「私の髪みたいに?」

「そうだな」

「クウちゃんだけに?」

「そうだな」

「なんか、こういうやりとりも久しぶりで懐かしいですね」


 あははー。


「クウちゃん、まずは座ってくださいな。落ち着きましょう」


 部屋には、お姉さまもいた。

 3人で、私のことを待ってくれていたようだ。


「はい」


 悠然と紅茶を飲んでいたお姉さまに促されて、私はソファーに座った。

 お姉さまにおかしな様子はない。

 なにかあったとしても、もうおわっているのだろう。


 とりあえず……。


「大変にご迷惑をおかけしました。私の仕業でございます」


 私は謝った。


「で、何があったのだ?」


 お兄さまが言った。


「実は、よろしくするためにトリスティン王国に行っていました。でも政変でラムス王がいなくて、ナリユキでナリユ卿が盟主になっていたんですけど、ゴブリンが王都を侵略していて助けてきたんです」

「意味がわからんな」

「簡単に言えば、よろしくのナリユキだったんですよー」

「なるほどっ! さすがはクウちゃんですねっ!」

「セラフィーヌは静かにしていなさい。そのことは、わたくしたちが眠っていたことにも関連があるのよね?」

「はい。まあ……」

「まずは、その関連から説明してくれると嬉しいかしら」

「よろしくとは何だ?」


 お姉さまとお兄さまに連続して聞かれて、私は困った。


 答えは、簡単と言えば簡単だ。

 オルデがトルイドさんにちょっかいをかけて……。

 それを、お姉さまが目撃寸前になってしまったから……。

 咄嗟にオルデをトリスティンにご案内した。

 で、夕方までオルデのことをお願いします、と、ラムス王に、よろしくお願いしようと思ったのだ。

 それだけの話だ。

 だけど、言い辛い話なのだ。

 私は困った。

 するとお姉さまが言った。


「こちらでも大騒ぎだったのですよ? セラフィーヌが皆の前で、これは精霊様の祝福ですと公言して、急遽、神官が呼ばれて。主宰者のエカテリーナさんは特に大変でしたのよ。神官に念入りに調べられてしまって」

「……エカテリーナさん、大丈夫だったんですか?」

「ええ。幸いにも特別な力は宿っていませんでした」

「そうですか。よかったです」

「あと、ハラデル男爵など……。せっかくのおめでたい場です、殿下も今一度、おめでたい話を考え直してみてはいかがですかな、などと、わたくしとトルイドさんのことをぶり返してきて――」


 お姉さまが愚痴る。


「ちなみにトルイドさんはなんて言ったんですか?」


 私はたずねた。


「……僕はモテませんね、と苦笑していましたわ」

「あはは。まあ、エカテリーナさんにもお姉さまにも、にべもなく断られていますからねえ」

「わたくしは相手を知らなかっただけです。その件については、ちゃんと説明させていただきましたわ。そもそもトルイドさんも、その場でハラデル男爵に言われるまで、相手は高位の娘としか知らなかったようですし」


「困ったものだ」


 お兄さまがため息をついた。


 ふむ。


 ここで私は、セラに緑魔法『昏睡』をかけた。

 セラは寝た。

 ごめんね。


「……どういうつもりだ?」


 お兄さまが厳しい目で私を見据える。


「私の詳細は、セラには聞かせ辛いんですよー。お姉さまにも関わりますし」


 私は、お兄さまとお姉さまに、私が「よろしく」した理由を語った。


「――と言うわけなんです。私も余計なお世話だったらごめんなさい」


「そんなことか。安心したぞ」


 お兄さまは、あっさりと理解を示してくれた。

 ありがとう。

 助かります。


「……あの、クウちゃん」

「はい。お姉さま」

「その……。ご迷惑をおかけしましたわ……」

「いいえ。勝手にしてしまって、こちらこそご迷惑をおかけしました」


 この後は、主にお兄さまにトリスティンでのことを語った。

 帝国にはまだ、トリスティン王国で起きた政変についての詳しい情報は届いていないようだった。

 ザニデア山脈を隔てた遠国なので無理はないけど。

 お兄さまは特に、新政府の盟主になったナリユ卿に興味を持った。

 私はオルデのことも隠さずに話した。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
でもまぁ、寝ている間に回復もしてあげたから、祝福ではあるのか?
[一言] 大勢に迷惑かけといて謝らずに誤魔化そうとするのはあかんよクウちゃん
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ