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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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839 お話し合い





 ドラン氏との会談は穏やかに続いた。


 残念ながら、ラムス王が自ら城を去ったのは本当のようだった。

 直筆の退位宣言書を見せてもらった。

 そこには、すでに野心は消え、心身ともに限界であり、あとのことはすべてナリユ卿に任せると書かれていた。

 その書が本物かどうかはわからないけど……。

 今は王位継承権を放棄して男爵となったリバース元王子と共に、ジルドリア王国に近い辺境の小領にいるという。

 会いに行ってくれても構わないとドラン氏には言われた。

 トリスティン王国は最初に聞いた通り、ナリユ卿を盟主とした有力貴族による連合体となっていた。


 ドラン氏は、ナリユ卿の補佐役をしているそうだ。

 完全に、陰の支配者だね。

 元々騎士団長で、今も騎士団を率いていて、政変の立役者なのだ。

 まあ、当然か。

 別にそのことを否定するつもりはない。

 再び悪魔を呼び出そうとしているのなら否定するけど、ドラン氏はハッキリとそれはないと言った。

 信じる根拠はないけど……。

 とはいえ、敵反応は出ていないし、周囲に悪魔の気配はない。

 なので、疑う必要もないだろう。


 ド・ミ新獣王国との講和条約の話は、大詰めのようだ。

 早ければ来月には実現するという。

 よかった。

 エリカが仲介人として頑張ってくれているようだ。


「講和は、いっそ我が国の完全敗北なら話も早かったろうが、中途半端に耐えているだけ長引いている。

 まだやれる、この勢いなら押し返せるという声も多くてな。

 だが現実は、新獣王国が最初から国境線を定めて、それ以上に押し込んでこないからに過ぎないのだろう?」


 この問いについては、ナオの側でも揉めていた。

 なぜ滅ぼさないのか、と。

 トリスティンを滅亡させず、難民を出させないというのは、戦前にあらかじめ私たちが取り交わした密約だ。

 なので、その通りではある。

 私は返事をしなかったけど。


「獣王国との事前会談では、今まで奴隷政策を推し進めてきたラムス王の処遇についての話も出た」


 ドラン氏は言った。


 私的には、なんかラムス王には最近親近感があって、それなりに好印象を覚えていたのだけど……。

 ラムス王こそが獣人を奴隷にしまくってきたのは事実だ。

 もっとも、それは悪魔の陰謀であり、ラムス王は悪魔の囁きによって野心を膨張させられていた。

 ただ、それでも責任なしとはいかないのだろう。

 残念だけど、それはわかる。


「だが、ラムス王の責任は不問となった」

「獣人側も納得したんだ?」

「それがセンセイの意思だと知るや、話は早かったよ」

「そかー」


 センセイって人、すごいんだねー。

 と私は思って……。

 気づいた。


 私か。


 たしかに私は、ラムス王に対して罪を問わない姿勢を取っていた。

 だって、うん。

 よろしくしてくれていたしね……。


「東側諸国はセンセイの名の下に緩やかに繋がる。我等もその輪に加わり、まずは経済の復興を目指す予定だ」

「戦争を続けるつもりは、ないってことでいいんだよね?」


 私が問うと――。

 ドラン氏は皮肉げに笑った。


「それがセンセイのご意思なのだろう?」

「まあ、うん。そうだね」

「我等は領土の多くを失い、屈辱的な講和条約を締結するのだ。少しは我等にも手を差し伸ばしてほしいところだ」

「伸ばしてるでしょ。何もかも悪魔が悪い。みんな、洗脳されていただけってことにしてあげてるんだから」


 我ながら、これはかなりの優しさと言えるだろう。


「――それで。王家を廃して、新体制へと移行する我等のことを、センセイは認めてくれるのかな?」

「好きにすればいいと思うよ。センセイも、そこまで興味はないよ」


 私は肩をすくめた。


「ならば、そうさせていただこう」


 こうして会談はおわった。

 トリスティンがどんな国になるのか、お手並み拝見だね。


 さて。


 ナリユ卿とオルデは、どこでどうしているのかな。

 と思ってメイドさんに聞いてみると――。

 散歩から戻って、今は2人で部屋にこもっているらしい。

 大丈夫なの、それ。

 私は思わず勘ぐったけど……。

 まあ、うん。

 いくらなんでも、さすがに変なことはないか。

 ただ念の為、確認には行った。


「ソードだけど、入るよ」


 ドアをノックして声をかけると――。

 はーい。

 と、オルデの声が返ってきたので、私はドアを開けた。

 部屋には……。

 足を組んで浅く椅子に腰掛けて、いかにも偉そうな態度のオルデと。

 その対面の席で、先輩のありがたい話を聞く後輩のように姿勢を正しくしているナリユ卿がいた。


「どうしたの、ソード様?」


 ケロリとした顔でオルデが聞いてくる。


「いや、それはこっちのセリフだけど……。なにしてたの?」

「私?」

「うん」

「この世間知らずの坊ちゃまに、本当の生き方というものを、よーく、しっかりと教えてあげてたんだけど?」

「はい。オルデの話は本当に勉強になります。僕は自覚するばかりです。自分がどれだけ駄目な存在だったのかということを――」

「こら! 駄目とか言わない! できる! やれる! 普通はね、あきらめたらそこで人生はおわりなのよ? 何度も言ったでしょう? 自分の可能性を捨てないで信じることが始まりだって」

「うん。ごめん、オルデ。そうだったね」

「そうそう! ナリユだって、やればできるんだから! できるできるできるできるできる!」

「やれるやれるやれる、だね」

「そうそう!」


 ふむ。


 なんか、気は合っているみたいだね。

 ならまあ、いいか。

 放っておこう。

 と思ったらオルデに言われた。


「あ、そうだ! ソード様、助けてあげてよ!」

「ん? なにを?」


 聞いてみれば、大変なことだった。

 なんと。

 王都にゴブリンが入り込んで、一般市民を襲って、その市民が王城のロビーにかくまわれているというのだ。

 しかも魔術師不足で、治療は進んでいないらしい。


「お願い! 助けてあげてよ! ソード様なら余裕だよね?」

「わかった。診てくる」

「ありがとう!」


 まあ、いいだろう。


 私はメイドさんの案内でロビーに下りて、被害者の人たちをヒールの魔法で全快させてあげた。

 土下座する勢いで感謝されたので――。

 すべては聖女様の力、あと、オルデの願いあってのことだと言っておいた。

 うん。

 ソードはユイの配下だしね。

 嘘はついていない。

 丸投げでいいよね。








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― 新着の感想 ―
[良い点] いつも楽しく読んでます! やはり、最終奥義は丸投げ!かな
[一言] まーた丸投げしてややこしくなりそう
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