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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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837 閑話・オルデ・オリンスの冒険





 今日は私にとって、挑戦の日だった。

 私はオルデ・オリンス。

 帝都の片隅で花屋の店員として地味に生きている娘だ。

 だけど私は、せっかくの人生を地味におわらせたくはなかった。

 だから毎日、地味に暮らしながらも、なにか人生を変えるキッカケはないものかと探してきた。

 私は、もっと派手に、もっと素晴らしく生きたいのだ。

 ある日、ついに機会はきた。

 皇女様が参加するというパーティーに一般市民も招待されるというのだ。

 私の叔父が招待状をもらって大喜びをしていた。

 私は迷わずに甘えた。

 容赦なく甘えたのに、だけど叔父の返事は渋かった。

 なぜなら――。

 皇女様の参加するパーティーに出席するならば、普通の服やアクセサリーでは失礼になってしまうからだ。

 敬意を示すためにも、高価な品が必要……。

 だけど、問題はなかった。

 私に告白してきて、なんとなく友人から始めている爆発さんが、すべて私のために購入してくれたのだ。

 ありがとう、感謝するよ!


 私は無事、貴族家のガーデン・パーティーの会場に降り立った。

 狙うのは市民だ。

 貴族に挑戦するほどの無謀な考えはない。

 若くて才能があって、お金も持っていそうで、なにより、すらっと細身で優しそうで長身の市民が第一希望だ。


 私は見つけた。


 その彼は、サンネイラから来た料理人とのことだった。

 まだ若いのに、高名な男爵様が認めるほどの料理の腕前を持っていた。

 立ち振舞も、まるで貴族のように優雅だった。

 きっと、お金持ちの息子なのだろう。

 しかも長身で細身で顔も整っている。

 バッチリだ。

 私は狙いを定めた。


 そして……。


 私はその彼、トルイドさんと楽しくおしゃべりしていたのだけど……。


 気がつけば……。


 なぜか、トリスティン王国?

 王城?


 信じられないくらいに豪華な廊下にいて――。


 立派な身なりの文官の男の人の先導を受けて、これから王様の代理をしている人に会うらしい。

 一緒にいるのは、ソード様……。

 ソード様のことくらいは、私のような庶民でも知っている。

 聖女様の片腕で、『ホーリー・シールド』という超エリート集団のトップで、世界最強の戦士。

 なんでも聖国では、悪魔によって呼び出されたドラゴンを始めとする魔物の大軍を必殺技の一撃で葬ったらしい。

 その必殺技、スーパースペシャルマックスバスターも、ソード様に負けないくらいに有名だ。


 だけど正直……。


 本当にこの子がソード様なの……?


 とは思う。


 だって、いくらすごい神子装束を身に着けていても、中身は10代前半くらいの女の子にしか見えない。

 とはいえ、うん。

 まわりの人たちの様子を見ていれば理解できる。

 本物なのだろう。

 絶対に触れてはいけない存在という雰囲気を、ビンビンと感じる。

 だから私は大人しくついていった。


 本当にいったい、私はどうしてしまったのか……。

 これが夢でないことはわかる。

 うん。

 どう考えても夢ではない。

 豪華な廊下を歩く足の感触も、ちゃんとあるし……。


 やがて私は、ソード様と共に部屋の中に入った。


 扉だけでも私の一生分の稼ぎを軽く超えていそうに豪華だったけど、部屋の中はさらに凄まじかった。

 思わず、声を上げそうになったけど……。

 なんとか我慢した。


 部屋の中には、2人の男性がいた。


 1人は、顔と家柄以外には、なんの取り柄もなさそうな気弱そうな青年。

 その2つがあるだけで、十分に勝ち組なんだろうけど。


 もう1人の、立派な体つきをした屈強そうな中年男性は……。

 うん。

 絶対に逆らっちゃいけない怖い人だ。

 支配者のオーラがある。


 私たちが部屋に入ると、椅子に座っていた2人が立ち上がる。


「あ……。あ……」

「――久しいな、ソード」


 あたふたする気弱青年を軽く腕で制して、中年男性の方が声をかけてきた。


「はっきり聞くけどさ」


 と、ソード様が今までの口調とはかなり違う――。

 普通に10代の女の子っぽい調子で言った。


「ナリユ卿。君、結局、ラムス王を廃して王位を奪うつもりなんだ?」

「ち、ちが……。あ……」

「成り行きはすべて話す。まずは座らないか」

「その前にさ、ひとつお願いがあるんだよね」

「聞こう」

「実はこの子を、今日の夕方まで、よろしくしてあげてほしいんだよね」

「今回は、どのような犯罪者だ?」


 え。


 私、犯罪者?

 よろしくってなに?


 どんなことをされるのか想像して、私はぞっとした。


「犯罪者ではないんだけどね――。そうだなぁ……。ただ、せっかくのパーティーを駄目にしちゃったから……。あ、そうだ。普通にお嬢様として、夕方まで歓待してくれないかなぁ」

「それならば僕が! ぜひともお任せください!」


 気弱青年が勢いよく立候補してくる。

 わかる。

 この場から逃げたいのね。


「ナリユ卿からは話を聞きたいんだけど」

「話はドランから聞いてください! 僕は流れでここにいるだけなので!」

「ナリユ卿だけに、ナリユキで?」

「はい。そうです! ナリユキなんです信じてください!」

「まあ、いいか。それならこの子のことをお願い。私はドラン氏から話を聞かせてもらうことにするよ」


 ソード様とドランという中年男性が席に着いた。

 そんな怖い2人から逃げるように――。


「僕達は部屋を変えましょう! さあ、どうぞ!」


 私は、気弱青年にエスコートされて、別の部屋に連れて行かれた。






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― 新着の感想 ―
[一言] ダメにした(個人の感想)実際やらかしてるのはクウちゃんなんだよなあ
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