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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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833 ガーデン・パーティー




 私たちが並んで待つ中、最初にパーティー会場の庭園に現れたのはエカテリーナさんのお父さんだった。

 私たちの前で、お父さんはノリノリに語った。


「皆、本日はよく、我が家のパーティーに来てくれた!

 本日は娘たちが主役のパーティーではあるが――。

 なんといっても本日は帝国の麗しき二輪の花――。

 アリーシャ殿下とセラフィーヌ殿下がおいでくださっている!

 我が娘エカテリーナが紡いだこの栄光を前に、当主たるこの私も喜びを隠しきれないものである!

 よって僭越ではあるが!

 まずは私から、挨拶をさせていただいた!

 本日は存分に楽しんでほしい!

 特に料理には、もともと力を入れていたが――。

 なんと!

 我が妻の実家である食の都ハラヘールより、帝国を代表する美食家――。

 今は料理の賢人と呼ぶべきか――。

 ハラデル男爵が我が家を訪れ、料理の監修をしてくださった!

 名高き賢人の料理!

 ぜひとも堪能してほしい!」


 そんなお父さんの挨拶がおわった後で、お母さんとエカテリーナさんの案内でセラとお姉さまが現れた。

 お姉さまも、私たちに挨拶するようだ。


「本日はお会いできて光栄です。

 アリーシャ・エルド・グレイア・バスティールです。

 エカテリーナさんとのご縁で、本日は妹のセラフィーヌともども招待に応じさせていただきました。

 本日はよろしくお願いいたします。

 賢人ハラデルの料理は、本当に楽しみです。

 皆で味わいましょう」


 お姉さまの様子は普通だった。

 この後は挨拶タイム。

 まずは貴族の人たち、次に私たち学院生が、それぞれ、エカテリーナさんのご両親とお姉さまとセラと軽く言葉を交わすのだ。

 一般の方々は、挨拶の列には加わらず、そのまま会場へと流れた。


 やがて私の番が来る。

 私も挨拶した。

 やっぱり、お姉さまの態度は普通だった。

 ついでにセラも普通だった。

 2人とも挙動不審なところはない。


 エカテリーナさんもご機嫌だった。

 どうやらお姉さまとセラとは、友好的に会話できたようだ。


 ふむ。


 今のところ、問題なし、か。


 私は挨拶タイムがおわるのを待って、


「さ、お姉さま。行きますよ」

「え。ちょ。クウちゃん?」


 お姉さまの腕を取って、会場へと連れて行った。


 うむ。


 しばらくお姉さまのことは私が見張ろう。

 そのほうがいい。

 念の為だ。


「クウちゃん、あの、わたくしも……」

「セラはエカテリーナさんと楽しんでー。今日はそういう日でしょー」

「あ。」


 セラのことは置いていく。

 うん。

 セラがいては、お姉さまもやりにくいだろうし。


「……エカテリーナさん。貴女、クウちゃんになにか言いましたね?」

「いえ……。私は特には……」

「まあ、いいです。今日は確かに、そういう日です。エカテリーナさん、今日はオハナシしましょう。じっくり、ことこと」

「は、はい……」


 なんとなくセラの声が低いけど、私は気にしないのだ。


「さあ、お姉さま。なにから食べますかー? やっぱりスイーツですか?」

「そうですね……。では、せっかくですし……」


「――それではお嬢様、こちらなどいかがでしょうか?」


 そこに声がかかった。

 柔らかい青年の声だ。


「え」


 お姉さまがすごい勢いで振り返った。


「今日はアリーシャさんがいると聞いて、アリーシャさんのために私が作らせていただきました」


 白い帽子と料理人服を身につけ、銀色の丸い蓋を被せたトレイを手にしたトルイドさんがそこにはいた。


「お久しぶりです、アリーシャさん」

「ええ……。そうですわね……。お久しぶりです、トルイドさん」


「本来であればスイーツは最後に楽しむものだが、今日は自由な場。サプライズも兼ねて良いかと思いましてな」


 同じ格好をしたハラデル男爵も一緒だった。

 ハラデル男爵の手にも銀色の丸い蓋を被せたトレイがあった。


「どうでしょうか、アリーシャさん」


 トルイドさんが笑顔でたずねる。


「え、ええ……。では、いただきますわ……」

「それでは、お席へどうぞ」


 トルイドさんに促されて、アリーシャお姉さまがテーブルに着いた。


「クウちゃんもぜひ。実は、抜群のタイミングでしてな。クウちゃんにも食べてほしいと思って2人分を乗せてきたのです」


 ハラデル男爵が言う。

 ふむ。

 いったい、これはどんな罠なのか。

 なんて考えてしまうのは、さすがに疑いすぎだろうか。


「えっと。でも、一緒の席でいいのかなぁ……」

「はははっ! そこまで気を使う必要はないでしょう! ただの友人が久しぶりに再会しただけですぞ!」


 まあ、ここで距離を取るのもなんか変か。

 私はハラデル男爵に促されて、お姉さまと同じテーブルに着いた。


 す、と、現れたメイドさんが、私とお姉さまの前に、お皿とフォークとスプーンを置く。

 温かい紅茶も用意してくれた。

 そのお皿の上に、ハラデル男爵とトルイドさんが、それぞれに自分のトレイからスイーツを置いた。


 ハラデル男爵のスイーツは、モンブラン。

 トルイドさんのスイーツは、シャインマスカットのミルククレープ。


 どちらも、素晴らしい見た目だ。


「さあ、皇女殿下! それにお友だちのクウちゃん! ハラヘールの料理人たるこの私とサンネイラの料理人たるトルイド殿が作った渾身のスイーツ、どうぞお召し上がり、寸評ください!」


 うわ。


 ハラデル男爵が大きな声で宣言して、わざわざ人目を集めた!

 しかも寸評とか。

 トルイドさんの表情も真剣なものに変わっていた。

 再会を喜ぶ暇もなく……。

 気づけば、スイーツ対決が始まっていた。







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― 新着の感想 ―
[良い点] 孫娘がじっくりことことされようとしてる中で強引にスイーツ対決にもっていくハラデル男爵、いいね
[気になる点] 「なんとなくセラの声が低いけど、私は気にしないのだ。」 →だんだんとセラが黒化してるような気がする 純粋だった頃のセラはどこへ行った( ;∀;)
[一言] なにやら不穏な雰囲気が
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