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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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832 ハラデル男爵の友人




 しばらくして、貴族の人たちが庭園の会場に入ってきた。

 服装のレベルが違うから一目でわかる。


「うえ。ヤバ。叔父さんが来たじゃねーか! おい、クウ。俺を隠せ」


 悲鳴を上げて、レオが私たちのうしろに隠れた。


「叔父さんなら挨拶しなよ。だいたいどうして、いつも女子のうしろなの」


 私は呆れて言った。


「その方が安全だろ! 叔父さんは中央騎士で、俺の顔を見ると、いつも訓練に来いとか言うんだよ!」

「行けばいいでしょ」


 強くなれるだろうし。


「騎士の訓練なんてガチすぎて死ねるんだよ! 俺の剣は自由の剣だって言ってるだろうが!」

「さいですか」


 まあ、知らない。

 放っておくことにした。


 と――。


 私も貴族の参加者の中に見知った顔を見つけた。


 ハラデル男爵だ。


 ハラデル男爵はエカテリーナさんのおじいさんだけど、身内枠ではなく、他の貴族と共に普通に入ってきた。

 同行している貴族の青年にも、私は思いっきり見覚えがあった。

 銀縁メガネのよく似合う温厚そうな長身で細身の青年だ。


 私は心の中で叫んだ。


 ハラデル男爵、やりやがったぁぁぁぁぁ!


 そう。


 ハラデル男爵の同行者――。

 それは、まさに渦中の人だった。


 エカテリーナさんの元・お見合い相手で――。

 アリーシャお姉さまの、普通の友人――ということにしておこう。


 食の都サンネイラの次期当主。


 トルイドさんだった。


 私が驚いて見ていると、私に気づいた2人がこちらに来た。

 ハラデル男爵が気さくに声をかけてくる。


「おお、これはクウちゃんではありませんか。クウちゃんもこのパーティーに招待されているとは、奇遇ですな」

「ごきげんよう、男爵」


 人目もあるので、私は礼儀正しくお辞儀をした。


「うむ」


 男爵が鷹揚に応える。

 ありがたいことに、ちゃんと男爵は、人前では私を知り合いの学院生として普通に扱ってくれる。

 なので、まあ。

 奇遇とかいうわざとらしい挨拶へのツッコミはあえてしない。


「こんにちは、ク――。ウ――。チャン様――。さん」

「ごきげんよう、トルイド様」


 かなりぎこちないトルイドさんの挨拶にも、私は礼儀正しく応えた。


「クウちゃんでいいですよー。普通に呼んでもらえると助かります」

「は、はい……。わかりました……。こんにちは、クウちゃんさん」

「はい。お久しぶりです。ところで、どうしてトルイドさんは今日、わざわざ帝都のパーティーに?」


 しかも、お見合い話を蹴った相手の。


「私が誘ったのです」


 男爵が言った。


「いえ、はい……。それは、よーくわかりますけど……」

「はは……。普通は来ないですよねえ……。ただ、サンネイラとハラヘールの友好のためにも、どうしてもと男爵に言われてしまいまして……。恥ずかしながら断りきれずに来てしまいました」

「エカテリーナさんにはお会いしたんですか?」

「はい。挨拶はさせていただきました」

「どうでした?」

「私にはもったいない淑女ですね」

「……お見合い話の復活とかは?」

「それはありません。私には――。その――」

「どうやらトルイド殿には、意中の相手がいたようですな。我が孫も残念ながらサンネイラに行く気はないようです。故に、今回の話は白紙に戻して、別の形で友好を結ぼうと考えております」

「そかー」


 まあ、それならいいか。

 ハラデル男爵も、ここまで言い切って、実はお見合い話の復活を目論んで――なんてことはしないだろう。


 ちなみに私のうしろにいたレオは、もういない。

 ハラデル男爵たちが来たところで、そそくさと逃げていった。

 近くにいたアヤたちも距離を取ってくれている。


「トルイドさん、今日はアリーシャお姉さまも参加されるんですよー」

「ええ。男爵から聞いています。久しぶりにお会いできるので楽しみです」

「ですねー」


 私はトルイドさんと笑い合った。

 トルイドさんは自然体で、おかしな様子はない。

 あと、まだ、お姉さまには会っていないようだ。

 来訪を知らせてもいないらしい。

 ハラデル男爵からの提案で、会場で驚かせるつもりのようだ。


「では、クウちゃん。また後ほど。我々は、知人に先に挨拶だけして、厨房に移る予定でしてな」


 ハラデル男爵が言った。


「へー。なにか作るんですか?」

「我々は料理人ですからな。もちろんです。実は昨日から、今日のために準備を進めていたのです」

「楽しみにしていますね」

「そのご期待、必ずや応えてみせますぞ」


 ハラデル男爵とトルイドさんを、私は笑顔で見送る。

 見送りつつ、考えた。


 いったい、ハラデル男爵は何を考えているのか……。

 悪いことではないと思うけど……。

 当然ながら、敵対反応もないしね……。


 考えていると、アヤたちが戻ってきた。


「ねえ、クウちゃん。今の人たちって、クウちゃんの知り合いなんだよね? どこの誰なの?」


 アヤに聞かれて私は答えた。

 すると、他の女の子たちがトルイドさんを紹介してほしいと言ってきた。

 トルイドさん、モテモテだ。

 まあ、うん。

 次期当主の貴公子なんだから、当然と言えば当然か。

 ただ、残念だけど相手が悪い。

 なにしろ、うん……。

 エカテリーナさんのお見合い相手だった人だしね……。

 そのことを話すと、みんな、あきらめた。

 エカテリーナさんが勝手にお見合い話を進められて憤慨していたことは、クラスの女子なら知っている。

 アリーシャお姉さまのことは、もちろん言わない。


 パーティーが始まる。


 私たちは指定された場所に並んで、エカテリーナさんのご一家と両殿下が登場するのを待つことになった。








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