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811 最強バーガー決定戦……!?





 こんばんは、クウちゃんさまです。

 私は今、アンジェとスオナとシャルさんと共に、大宮殿のロビーで夕食までの時間をくつろいでいます。


「ねえ、クウちゃん」

「なぁに、シャルさん」

「クウちゃんのお姉さまって、皇女様だったのね」

「うん。そだよー」


 アリーシャお姉さまは陛下と皇妃様のところに行きました。

 なので今はロビーにはいません。


「あの嫌味なヤツは、大宮殿のヒトなんだ?」

「うん。そだよー」

「料理人?」

「うん。大宮殿の料理長さんだね」

「そっかー。あははー」

「あははー」


 シャルさんが笑ったので、私も笑った。


「ねえ、クウちゃん」

「なぁに、シャルさん」

「そういうことは、最初に教えてほしかったな。もう手遅れだからいいけどさー。あははー」

「あははー」


 またシャルさんが笑ったので、また私も笑った。


「ねえ、クウちゃん」

「なぁに、シャルさん」

「私、首とかはねられちゃうかな?」

「まさかー」

「最後になるかも知れないから、顔、洗ってくるね……」


 ふらりと立ち上がったシャルさんが、ふらふらと化粧室に向かった。

 うん。

 もはやバーガー勝負どころではないね。

 ただ、まあ、とはいえ……。

 すでに陛下にも話は通っていて、バーガー製作は始まっている。

 今更手遅れだ。

 あきらめて、バーガーを味わってもらうしかない。


 シャルさんの姿が消えたところで――。

 入れ違いにセラがやってくる。


「クウちゃん!」

「やっほー、セラー。いきなり夜にごめんねー」

「いいえー! いつでも大歓迎です! アンジェちゃんとスオナちゃんも、ようこそおいでくださいました」

「こんばんは、セラ。突然ごめんなさい」

「夜分に申し訳ない。成り行きでこうなってしまったよ」

「いいえーっ!」


 セラは元気いっぱいだ。


「セラはどう? 執筆は進んでいる?」


 アンジェがたずねた。

 セラは今、ユイに学んだことを本にまとめている。


「はい。順調です。思い出せば出すほど、ユイさんのすごさを痛感して自分の無力に落ち込んじゃいますけど」

「セラ、僕達はこれからさ」

「そーそー。いくら同い年でも、聖女様と比べても意味ないって」

「そうですね。頑張ります」


 セラとスオナとアンジェが笑い合う。


「それにしてもクウちゃん。今夜は勝負でハンバーガーだそうですけど、どうしてそんなことに?」

「――それは俺も気になるな」


 セラが素直な疑問を口にしたところで、お兄さまが現れた。

 挨拶の後、私は事情を話した。

 もちろん、お姉さまの個人的な事情は除外して。


「ク・ウチャンか。なあ、クウ。おまえはその名前を自分で言っていて恥ずかしくはならないのか?」

「聞かれたから答えただけですけどっ!」

「くくく。それはそうか。聞いて済まなかったな」


 笑われたー!

 くうううう!


 という顔を私がすると、すかさずセラが……。


「クウちゃんっ! もしかして今、クウちゃんだけにですかっ!? わたくし、よければお手伝いしましょうか!」


 なんて言ってくるものだから……。


「……まあ、いいです。とにかく迷惑をかけてすみません」


 気を取り直して私は謝った。


「はうう。そんなー」


 セラが残念そうに肩の力を落とした。

 セラはいったい、何をどう手伝いたかったのか。

 正直、気になるけど……。

 私は頑張って気にしないことにした。


 お兄さまは腕組みして笑う。


「……しかし、東の諸国が勢力再編で大荒れの中、西の帝国はハンバーガーの中身で大騒ぎとは。平和なものだな」

「あはは。ですねー」

「で、最強バーガー決定戦というのは、いつ開催の予定なのだ?」

「えっと。なんですか、それ」


 聞き覚えがないけど。


「美食ソサエティが開催予定のコンテストなのだろう? 料理長が優勝してみせると張り切っていたが」

「ふむ」

「ちがうのか?」

「少なくとも、私がそんなことを言った記憶はありませんよ」

「では、ク・ウチャンか?」

「それ、同一人物ですよね」


 私と。


「バーガー大会の話は、わたくしも初めて聞きました。期待が独り歩きしているのではないでしょうか」


 セラが言う。

 するとアンジェがからかってくる。


「クウ、せっかくだし、期待に応えてあげたらー?」

「ふむ……」


 キタイ。

 か……。

 手拍子さえあれば、マッスルポーズならいくらでも決めてあげるけど……。

 マッスルは良いものだ……。

 って、ちがーう!

 私はキタイもマッスルも好きなんかじゃないんだからねっ!


「クウ、どうしたの?」

「あ、ううん。なんでも……。でも、そうだねえ……。お兄さま、仮にやるとすれば会場の手配とかはお願いできるんですか?」

「任せておけ」

「やったほうがいいと思います?」

「今回については、大々的にやってもよいのではないか? 帝国の治世が安定している良い証明にもなる」

「なら、やりますかー」

「……クウ、いいのかい? そんな大事を軽々しく決めて」


 冷静なスオナが心配してくれるけど……。


「安心しろ、スオナ・エイキス。いつものことだ」


 お兄さまが言う。

 さすが、わかってくれていますねっ!


「バーガー大会ですかっ! 楽しみですねっ!」

「だねー!」


 私はセラと笑い合った。


 笑っていると、軽い足取りでシャルさんが戻ってきた。


「ただいまーっ! 顔を洗ってスッキリしてきたよー! そうしたらお腹も空いてきたし、俄然、バーガーが楽しみになってきたよー! ふふーん! 大宮殿だかなんだか知らないけど、お上品な料理人にバーガーの味がわかるのか、この下町代表のシャルさんが確かめさせてもらおうかねー!」


 どうやら元気を取り戻したようだ。

 1人で陽気に、しゃべった後――。


「ところで、こちらの可愛いお嬢さんとカッコいいお兄さんは?」

「第二皇女のセラフィーヌ様と、皇太子のカイスト様だよー」


 私は教えてあげた。


「へー。そうなんだー。すごいねー」


 シャルさんは笑顔で感心した。


「うん。そだねー」

「ねえ、クウちゃん」

「なぁに、シャルさん」

「そういうことは、最初に教えてもらえると嬉しいなー」

「あははー」

「あははー」


 現逃避して少しだけ笑った後――。


「申し訳ありませんでしたぁぁぁぁ! どうかどうか命ばかりはお助けてくださいなんでもしますからぁぁぁ!」


 シャルさんは、勇気あるジャンピング土下座を敢行した。

 もちろんすぐにやめてもらった。

 というか、うん。

 そういえばシャルさんって、ジャンピング土下座の使い手だったね……。

 久しぶりに見たけど、見事な所作だったよ……。

 さすがはシャルさんだ。







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― 新着の感想 ―
[一言] ピクシブ百科事典にも載る程のジャンピング土下座の遣い手(゜A゜;)ゴクリ
[気になる点] > 私以外でジャンピング土下座を使う人、初めて見たよ……。 シャルさん初登場の459話時点ですでにジャンピング土下座なされてます [一言] 4周目読まさせていただいてます。 とてもと…
[一言] シャルさんとマリエは親友になれそう
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