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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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797 9月10日のこと





 おはようございます、クウちゃんさまです。

 今日は9月10日。

 いよいよ、長く続いた帝都中央学院の夏季休暇も最終日です。

 今日は午前から大宮殿に行きます。

 今日は、マリエが録画した映像の鑑賞会なのです。


 お店の前に、大宮殿から来たお出迎えの馬車が止まった。

 執事さんのエスコートを受けて、馬車に乗り込む。

 フラウとゼノとヒオリさんも一緒だ。

 中にはすでに、エミリーちゃんとお父さんとお母さんの姿があった。


「おはよー、エミリーちゃん。オダンさんとエマさんもおはようございます」

「クウちゃんっ! おはよう! 今日は楽しみだねっ!」

「だねー」


 挨拶を交わす内に、馬車は出発する。


「でもクウ、今日は珍しく馬車なんだね。ボク、新鮮だよ」

「で、ある。空から行かないのであるな」

「うん。なんとなくねー。今日で夏休みもおわりだし、最後くらいはこういうのもいいかなーと思って」


 私は窓ごしに帝都の景色を眺める。

 今日の天気は曇り。

 今にも雨が降ってきそうたけど、今日も帝都は賑わしい。

 多分、明日も賑わしい。

 だけど明日から、私の生活は変わる。

 そう思うと、こうして町の景色を眺めつつ……。

 ゆっくりと移動するのもいいよねと思ったのだ。


「店長にも、夏のおわりを惜しむ心、少女のような感傷があるのですね。某にはよくわかります」


 ヒオリさんがしたり顔で言った。


「あははっ! クウに感傷って! ないないっ!」


 ゼノが大笑いする。


「クウちゃんは常に冷静沈着、千手先までを見通す正真正銘の賢者。笑うことではないが確かに似合わないのである」


 フラウは大いにうなずいた。


「もー。フラウちゃん、ゼノちゃんっ! クウちゃんだって一応は、それなりに女の子なんだよー!」


 エミリーちゃんが怒ってくれるけど……。

 ありがたいことだけど……。

 気のせいか、微妙に感じる部分もあるけど気にしないでおいた。


「わはは。相変わらず仲が良さそうで何よりだ」

「そうですね。クウちゃんだけでなく、フラウさんやゼノさんもエミリーによくしてくれて、ありがとうございます」


 オダンさんに笑われて、エマさんにお礼を言われてしまったので、私の話はここでおしまい。

 この後は、オダンさんのお仕事の話を聞いた。

 オダンさんは今日の鑑賞会を楽しんで、明日からまた帝都を出る。

 西へ東へと大忙しの日々だ。

 なにしろ、西のサンネイラと東のハラヘール。

 帝国を代表する両方の食の都への出店が急ピッチで進んでいる。


「すみません、私のせいで……」


 赤ちゃんも生まれた時に、仕事を増やしてしまって。

 私が申し訳なく思って謝ると、エマさんに笑って否定された。


「この人なんて本当に、明日には消えてもおかしくない個人商だったのよ。それが今では大商店の副社長。私なんて奥様とか呼ばれちゃって。仕事をくれることには感謝しかないわ」

「その通りだ。おかげでエミリーも学院に行かせられる。ちゃんと勉強して試験に合格すればだがな」

「わたし、頑張って勉強してるよっ!」

「である」

「エミリー殿の学力は、問題なく上昇しています。下手をすれば、すでに店長よりもかしこく――。こほこほっ」


 余計なことを言いかけたヒオリさんが咳をしてごまかす。


「私がなぁに? ヒオリさん」


 私はにっこり笑った。


「い、いえ……。店長は、まさにこの世の事象を司る賢者なれば、今後もぜひ教えを受けたく思いまして……」

「うむ。我等は皆、クウちゃんに教えを受ける弟子なのである。クウちゃんを信じてこれからも進んでいくのである」

「そうだな。これからもよろしく頼むよ、クウちゃん」


 オダンさんにまで言われて、私は苦笑した。

 うん。

 はい。

 すでにエミリーちゃんの方が私よりかしこいっぽいことは、誰よりもこの私が理解していますけどね!


 そんなこんなで楽しくおしゃべりする内――。


 馬車は大宮殿の大きな門をくぐった。

 広場から庭を抜けて、大宮殿の正面のロータリーに向かう。

 やがてロータリーに到着。

 執事さんのエスコートを受けて、馬車から降りる。

 ロビーに入る。

 ロビーには、すでにスオナとアンジェの姿があった。

 アロド公爵やディレーナさん、アンジェの家族の姿もあった。

 オダンさんとエマさんは、案内された席に座る。

 ヒオリさんたちは、まさにヒオリさんたちのために準備されたであろう軽食コーナーに一直線に向かっていった。


「やっほー」


 私はエミリーちゃんを連れて、スオナとアンジェとマリエ、それにディレーナさんが一緒にいるテーブルに向かった。


「みんな、こんにちは! ディレーナ様、ご無沙汰しております」


 マリエたちに明るく挨拶した後、エミリーちゃんはディレーナさんに礼儀正しく頭を下げた。


「こんにちは、エミリー」


 ディレーナさんが笑顔で挨拶に応じる。

 2人には面識がある。

 以前、私がいない時にディレーナさんがうちの工房に来て、エミリーちゃんが接客したそうだ。

 私たちも席に着かせてもらった。


「今ちょうど、クウちゃんたちの旅の話の中で、エミリーの料理について聞かせてもらっていたのですよ」

「へー。もしかして、カレーですか?」

「ええ。そうです。とてもスパイシーで美味だったとか」


 帝都では、まだ珍しい料理で、ディレーナさんは食べたことがないというか初めて名前を聞いたようだ。

 私はキャンプでの料理を思い出す。

 確かにカレーは最高だった。

 あの時は、ご飯がなくてパンだったけど、それでも素晴らしかった。


 ふむ。


 なんか思い出したら、無性に食べたくなってきた。

 私はアイテム欄を確認した。

 オダウェル商会から大量に購入した食材の中には、お米とカレー用のスパイスもキチンと入っている。

 お肉、じゃがいも、人参、玉ねぎもバッチリ。

 今なら作れるね……。

 日本風の、カレーライスを……。


「よかったら作りましょうか? 今日のランチに食べてみます?」

「クウちゃんが作ってくれるのですか?」

「はい。素材は私の魔法のバッグの中に揃っていますし、調理はエミリーちゃんの手も借りて。エミリーちゃん、お願いね」

「うんっ! わたし、やるっ! 任せて、クウちゃんっ!」


 現在の時刻は10時。

 今から作っても余裕でお昼には間に合う。


「では、是非ともお願いします。クウちゃんたちの手料理ならば、カレーでなくとも食べてみたいですわ」

「楽しみですね、ディレーナ様!」


 乗り気になったディレーナさんに、すかさずマリエが口を揃える。

 さすがは、訓練された太鼓持ちだ。

 スオナとアンジェも、またカレーを食べることに異存ないというか、むしろまた食べたいようだ。

 私は執事さんを呼んだ。

 ランチにカレーを作っていいかの確認をお願いする。





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― 新着の感想 ―
カレーが食べたくなってきた。深夜の飯テロ(꒪⌓꒪)。 まぁ、こんな時間に読んでる自分の責任なんですけどね。 くううぅぅぅ!クウちゃんじゃないけど、くうぅぅ!
[気になる点] 様ではなく樣?
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