779 金虎王ヨグ・ル・ギドの先生
こんにちは、クウちゃんさまです。
突然ですが、解決しました。
ナオを悩ませていた金虎族の件です。
今日は9月の6日。
御前試合の翌日。
今、私はフラウと共に、剛勇を誇る大森林の支配者、金虎王ヨグ・ル・ギドのお屋敷の奥にいるのですが……。
「ほれ、言うのである」
「セ、センセイ。わ、我々、大森林の民は、獣人魂に則り……。
正々堂々、獣王国と友好することを誓います。
……あの、この先生というのは、いったい、誰のことで?」
「愚か者が! 話の内容など貴様が気にする必要はないのである!
センセイが誰なのかなど、後で考えろなのである!
今の貴様は、クウちゃんが言った通りにだけ口を動かせば良いのである!
口答えなど1万年早いのである!」
「は、はぃぃぃぃ……」
はい。
えー。
朝、事情を話して大森林に行くことをフラウに告げたところ、フラウも行くというので一緒に行くことにしたのですが……。
途中で竜の里に寄ったところ……。
ナオのためならばと、他の竜の人たちも一肌を脱いでくれることになって。
闇の古代竜のみなさんで編隊を組んで、大森林へと来ました。
で……。
大森林の上空をたっぷりと優雅に飛翔して――。
竜軍団の武威を見せつけた後――。
獣王館の前の広場に、私と黒竜王なフラウと、2人で着地。
金虎王を始めとした、獣人族からの歓迎を受けました。
で。
居並ぶ人々の前で幼女姿になった黒竜王なフラウと一緒に……。
戦々恐々の金虎王に連れられて屋敷の奥に入って……。
えー。
フラウが「力の差」というものを見せつけて。
徹底的に威圧して。
腕力と魔力で押しつぶして。
おまえ嘘つきだよなぁと脅しもかけて。
金虎王は、自分が精霊と竜に認められた特別な存在だと、大森林の獣人たちに見栄を張っていたのです。
竜軍団に、おまえなんて知らね、と言われたらおしまいなのです。
結果、とっても良い子になったのでした。
めでたしめでたし。
ところで、センセイとは誰のことなのか。
まあ、うん。
宣誓のことなんだけど、細かいことなのでスルーした。
というわけで。
ボコボコにされた後だったので、さすがに覚えるのに時間がかかっちゃったけど金虎王は宣誓を覚えてくれた。
覚えた後でヒールして、元気にはしてあげる。
私は優しい子なのだ。
「さて。打ち合わせは済んだのである。あとは上手くさえやれば、貴様は晴れて竜と精霊の加護を得るのである。頑張るのであるぞ」
「は、ははー」
金虎王がフラウに平伏する。
私はそれを脇で見ていた。
フラウは、うん。
さすがは竜王だ。
見た目は幼女だけど発する威圧感が半端なものではない。
と、フラウが平伏する金虎王の頭を小さな足で小突いた。
「おい、デカトラ」
「な、なんでございましょうか!」
「話はおわったと言っているのである。あとは、大森林の民が1人でも多く集まるまでの待機時間なのである」
「は、はい……」
「妾たちに何も食わせない気であるか!」
「す、すぐに準備させますー!」
身を起こして、デカトラこと金虎王はすっとんで行った。
金虎王の広い私室で、私とフラウは2人になる。
「まったく。気が回らない男なのである」
「あはは。フラウ、ありがとね。おかげで話が早く付いたよ」
私1人なら、こうも簡単には行かなかった。
「あの馬鹿者は、竜の名を勝手に使っていたのである。これは成敗であるからクウちゃんは気にしなくて良いのである」
「そうはいかないよ、私が頼んだことなんだし。お礼はちゃんとするね」
「いらないのである! クウちゃんからはすでに、武技と生成という神秘の技を教えてもらったのである! これ以上もらったら大変なのである! 妾たちにも返させてほしいのである!」
悲鳴みたいに言われた。
「そかー」
まあ、ならいいか。
遠慮なく、お世話になっておこう。
「じゃあ、フラウ。あと少し、お願いね」
「任せるのである。大森林の連中が二度と高慢にならぬよう、十分に脅しつけておくのである」
金虎王の宣誓の後、フラウが竜王として話しをする。
内容はフラウを信じて確認していないけど、すごいことになりそうだ。
この後は、お館の使用人たちが食べ物を持ってきてくれた。
肉、肉、肉、また肉。
フラウは大いに満足していた。
私、うん。
見ていた。
だって、ブルーレアだもん。
明らかに、表面を軽く焼いただけのお肉たちだ。
獣人や竜にはごちそうみたいだけど……。
かわいい精霊さんな私には、ちょっとお腹が下りそうな予感がするのだ。
「……お味は、どうでしょうか?」
使用人たちを下がらせ、私たちだけになったところで。
金虎王がおそるおそるフラウにたずねた。
「うむ。美味である」
「ありがとうございます! ありがとうございます!」
そんなこんなの内。
広場やその周囲に、十分に人が集まったようだ。
金虎族の戦士が報告に来る。
いよいよ本番。
金虎王とフラウによる、ド・ミ新獣王国と仲良くするね宣誓式だ。
私たちは外に出た。
フラウが巨大なブラックドラゴンの姿に戻る。
そんなフラウの前で、高台に上がった金虎王が、まずは詰めかけた民衆に向けて響き渡る大声で語る。
「聞けい! 者共よ! こちらにおわすお方は、かのザニデア山脈の聖なる山ティル・デナに住まう竜王! フラウニール様である! 者共、敬意を示し、まずは身を正して静かに頭を垂れよ!」
おおっ!
全員がちゃんと従った!
金虎王は、たまにどもりながらも打ち合わせ通りに語った。
大森林では、ずっと金虎族こそが至高の王家であり、ニンゲンに破れた銀狼族は格下だと見てきた。
だけど、それは完全なる間違いだった。
竜王は言った。
3王家は、すべて対等なのだと。
我らと同じように、銀狼王もまた竜王の加護を受けた。
その力によって、新生は成されたのだ。
それは認めなければならない。
よって、ここにセンセイする!
センセイ。
我々、大森林の民は――。
うむ。
いいね。
宣誓のイントネーション以外はカンペキだ。
さらに金虎王は話を続けた。
「良いか、者共! 先生だ! 我々は竜王様の加護の下、先生の指導によって新しい時代を築くのだ! さあ、センセイ、お願いします!」
え?
なぜか金虎王の視線は、下でのんびりしていた私にあった。
打ち合わせにはない言葉なんだけど……。
フラウを見上げれば、当然のような顔をしている。
むしろ満足げだ。
ふむ。
まあ、いいか。
私はふわりと浮き上がって、群衆に向き合う。
金虎問題、解決!
即オチなのです\(^o^)/
 




