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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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772 閑話・漢メガモウ1000倍パワー! 猛牛大暴走!





 帝国の御前試合、2回戦が始まる。

 クジを引くまでもなく、この俺の次の対戦相手は帝国の黒騎士だ。

 右の黒騎士か、左の黒騎士か。

 それを決めるために、一応、クジは引くが。

 俺は右だった。

 1回戦でダバ・ボヤージュを打ち破ったラウゼンという男だ。


 負けられねぇ!


 漢メガモウ、今こそ燃え上がる時だ。


 しかし……。


 帝国の黒騎士というのは本当に不気味な存在だ。

 冒険者としては暴れ牛として恐れられ――。

 今では『ホーリー・シールド』として畏怖されているこの俺を目の前にしても微動だにしやしねえ。

 セイバー様の言葉でわかっちゃいる。

 こいつらは、人間らしさを代償にして強さを手に入れているのだ。

 酒の味もわからなくなっているのだろう。

 そんなヤツに、負けるわけにはいかねえ。


 1回戦で黒騎士と戦ったバー・ウガイと話して、作戦は決めてある。


 徹底的な力押しだ。


 黒騎士は、まさに機械のように動く。

 感情を廃して、無駄なく最適解を結んでいくのだ。

 普通に打ち合っては――。

 俺の頭では、絶対に付いていけねぇ。

 打ち合う度に詰められて、知らない内に袋小路の中だろう。


 ならば。


 機械ごと、ぶっ壊しちまえばいい。

 簡単なことだ。


「メガモウー! 行けー! やっちまえー!」


 ふ。


 クウのヤツがこの俺を応援していやがる。

 クウのヤツは本気で、いつでもどこにでもいやがる。

 わけのかわらねーヤツだが、俺を応援するというのならテメェの期待も背負って剣を振ってやるさ。

 と思ったら、次の瞬間には、


「黒騎士さんも頑張ってくださーい!」


 とか黄色い声をあげやがった。


 テメェの期待なんざ、絶対に背負わねえ!

 いらねえわ!


 まあ、いい。


 俺はそもそも聖女様に期待されてここにいるのだ。

 負けてしまったバー・ウガイの分も、剣を振るわなくちゃならねぇんだ。


 芝生の斜面の上に目を向ければ――。

 聖女様がこちらを見ている。


 聖女のうしろには、白い法衣と白仮面に身を包んだセイバー様がいた。

 俺たちを鍛え、別人のように強くしてくれた師匠だ。

 セイバー様は、心の力が大切だと言っていた。

 俺もそう思っている。

 感情こそが、パワー。


「うおおおおおおおお!」


 俺は吠えた!


 感情を爆発させるために!


 聖女様に勝利を、捧げるために!


「始め!」


 帝国騎士団長の声で、試合が開始された!


 行くぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!


 うおおおおおおお!


 暴れ牛の力!


 聖戦士の力!


 そして、ホーリー・シールドの力!


 合わせて3倍!


 さらに、この俺の溢れる感情をそこに乗せて!


 1000倍のパワーで怒涛に攻め込む!


 必殺!


 猛牛大暴走だぁぁぁぁぁ!


 …………。


 ……。



「勝負有り! 勝者、黒騎士ラウゼン!」


 ああ……。


 そんな声が聞こえやがる。


 俺は負けた。


 俺は今、仰向けに倒れて青い空を見ている。


 俺は猛牛となった。


 すべてを爆発させて暴れた。


 だが、そうしたら、黒騎士は闘牛士となった。


 ひらりひらりと翻弄されて――。


 倒されちまった。


「メガモウー!」


 ああ……。


 クウのヤツが俺の名前を叫んでいやがる。


 勝者を称えるための曲が会場に流れる。


 俺は負けた。


 身を起こして、会場の外に――。


 いや、その前に――。


 斜面の上の客席に向かって、深々と一礼した。


 申し訳ありません、聖女様。

 俺は、期待に応えることができませんでした。


 聖女様は、笑顔で拍手をしてくれていた。

 まあ、もともと、聖女様自身は勝敗にこだわっていなかった。

 なので落胆する様子もなかったが。


 セイバー様には勝てとハッパをかけられたが――。

 帰ったら反省会。

 特訓だろう。

 むしろ、望むところだが。


 俺は会場から降りた。


「すまねぇな。俺も負けちまったよ」

「見事な突進だった」


 バー・ウガイが、苦笑する俺の背を軽く叩いた。


「ま、あとは任せな」


 近くにはロックの野郎もいた。

 ロックの野郎は、まったく気負う様子もなく、お気楽な態度だ。


「テメェになんぞ任せるかよ。好きにやれや」

「はははっ! そう言うなって。元は冒険者仲間だろ」


 ロックの野郎とは知り合いだ。

 以前、平和の英雄決定戦の時に夜の聖都で出会って、喧嘩して、なんとなく打ち解けて仲良くなった。

 カラアゲを一緒に食った仲だ。

 いや――。

 俺は急に思い出した。

 そういえばロックの野郎は、あろうことか――。

 全部のカラアゲにソースをぶっかけやがった大戦犯だったぜ!


「テメェと仲間になった覚えはねぇ! このソース野郎!」

「はぁ!? ソースは至高だろうがよ! って褒め言葉か!? なんだテメェ不器用に応援しますってか!」


 わはははは!


 と、ロックの野郎が馬鹿みたいに笑う。


「――おい。黒騎士は手強いぞ」

「わかってるさ」


 剣を肩に担いで、ロックが試合場に向かう。


 俺はバー・ウガイと共に用意された椅子に座って、天然野郎の戦いを見させてもらうことにした。





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