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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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771 休憩時間2




「だから、ガンっとして、ヒュンだろ。それでドカンさ」

「わかってるよ、そんなことは。次はゼッテーにドカンだぜ。それでシュパッとしてバリバリおわりよ!」

「おう。そうよ! わかってるじゃねーか!」

「――ケッ。当然だぜ」


 ロックさんが豪快に笑って、ダバはムスッと腕組みする。

 1回戦のことを振り返っているのはわかるけど、具体的には何を話しているのかまるで理解できない2人の会話だった。

 ただ、なんにしても、ダバは元気を取り戻したようだ。


 そんな2人の光景を見つつ、私はトーノさんに話しかけてみた。


「トーノさんも惜しかったですよね」

「ありがとうございます」


 トーノさんは、『ローズ・レイピア』の一員。

 赤い制服を着こなしたクールな印象の少女だ。

 私と同じ名前というだけでエリカに選ばれた数奇な運命の人でもある。


「トーノさんらしい戦いで素晴らしかったです。エリカとハースティオさんも満足していましたよ」

「ありがとうございます」


 次は何を話そうかなと思っていると――。

 となりにいたお嬢様、ファラータさんが上手に話を繋げてくれた。


「マイヤ様、わたくしも戦えていましたかしら?」

「ファラータさんも素晴らしかったですよ。まさかメガモウを相手に、力と力の勝負で行くとは思いませんでした」

「大きな殿方を押し倒すのには慣れているつもりだったので、今日も普通に行けると思ったのですけど……。さすがは聖国の精鋭でしたわ。並の殿方とは比べ物にならない力で感服しました」

「ローズ・レイピアの仕事も大変そうですね」


 治安維持も行っているそうだし。

 荒事は多いのだろう。


「ふふ。とてもやり甲斐がありましてよ。正直、妙な性癖に目覚めてしまいそうな自分がいるくらいには」


 冗談めかしてファラータさんが微笑む。

 するとトーノさんが――。


「目覚めてしまいそうというか、目覚めていますよね」


 なんてことを言う。

 それに対してファラータさんは否定することもなく、


「今日は押し倒せなくて残念でしたわ」


 なんて、ぼやいた。


「あはは」


 私はとりあえず笑った!


 その押し倒されなかったメガモウは、広場の隅でバー・ウガイ選手と軽い剣の打ち合いをしていた。

 ロックさんもウォーミングアップを始めるようだ。


 そろそろ帰った方がよさそうかな。


「トーノさんとファラータさんは、これからどうするんですか?」

「試合場の脇に席を用意してくれるそうなので我々も観戦します」

「間近の特等席ですわね」

「皆さんの動きをよく見て、学ばせてもらうつもりです」


 ハースティオさんはすごいね。

 しっかりと隊員たちの心も育てているようだ。


 私とは大違いだね……。


「ふふ。次の機会には、他国のエリートを押し倒して見せますわ」

「そうですね。楽しみです」


 まあ、うん。


 個性の方も伸びているようだけど。

 それはきっと、いいことだろう。


 私は会場に戻った。


 会場では、楽団の緩やかな曲が続いていた。

 まだみんな奥のテーブルにいたので、私もそちらに行った。


 ユイとエリカとナオは――。

 陛下と話している。

 まわりには、バルターさんにローゼントさん、アロドさんがいた。

 うん。

 近づくのはやめておこう。


 セラは、お姉さまたちと一緒に皇妃様のところだ。

 ヒオリさんも一緒にいる。

 私はそちらに行こうかなーと思ったのだけど、ふと見ればウェーバーさんが1人で紅茶を飲んでいた。


「こんにちはー」


 私はウェーバーさんのところに行った。


「おお。これはクウちゃん。こんにちは」

「今日はどうですか。さっきはユイと一緒にいたみたいですけど」

「それはもう、素晴らしい一時を過ごさせていただきました。今も正直、その余韻に浸って夢見心地でいたところです」

「あはは。そかー」


 ウェーバーさんはブレないねー。


「クウちゃんも楽しまれていますかな?」

「はい。私は試合の方で」

「帝国の黒騎士は、見事に2人とも勝ち残りましたな。冒険者のロック・バロットも勝ち、まさに帝国万歳ですな」

「ですねー」

「ただ、ここだけの話ですが、個人的には聖女様の配下に――ですな」

「どうなるのか楽しみですね」

「誰が勝ったとしても、拍手喝采させていただきますとも」


 ちなみにウェーバーさんに注文した素材は、すべて納品がおわっている。

 私のアイテム欄は素材でいっぱいだ。

 もう当分は、普通のものを作ることには困らない。

 なんでもござれだ。


 この後、ウェーバーさんとは、姫様ドッグ店と姫様ロール店の支店展開のことなんかをおしゃべりした。

 ウェーバーさんは、いつの間にやらこの2つのお店を子会社化して、同じく傘下のオダウェル食品商会とリンクさせている。

 今や、姫様ドッグと姫様ロールの味の秘訣である辛味子と甘味のトコの根は、オダウェル商会が独占してネミエの町で生産している。

 まったくね。

 本当にやり手だ。

 まあ、でも、ぶっちゃけ、それで良かったと私は思っている。

 なにしろ姫様ドッグの店長さんも姫様ロールの店長さんも、素朴な屋台のおじさんなのでビジネスには向かない。

 人気になればなるほど、変なヤツが近づいてくるだろうし。

 巨大な商会に守られていた方が安全だ。

 お店を取られたわけではないしね。

 あくまで店長というか社長は、おじさんたちのままだ。

 おじさんたちも、クウバーガーみたいに新しい商品を考えたりして楽しく仕事をしている様子だし。


 先日の料理の賢人対決の時に決まった、西の食の都サンネイラと東の食の都ハラヘールへの出店は――。

 この秋を予定しているそうだった。

 それぞれの領主が大いに乗り気で一気に話は進んだらしい。

 果たして、食の都で姫様シリーズは受け入れられるのか。

 結果を楽しみにしておこう。


 というか、サンネイラには一度は行ってみたいね。

 お姉さまを誘って、今度、行ってみよう。

 でも、もうすぐ夏季休暇がおわってしまうから、タイミングが合わないと、かなり先になりそうだけど。


 ただ……。


 今、サンネイラとハラヘールでは、美食ソサエティの話題で持ち切りらしい。

 料理の賢人となったハラデル氏が大いに喧伝しているのだとか。

 その主宰者たるク・ウチャンの名前も、伝説の料理人として広まっているそうだ。


 ウェーバーさんはもちろん、それが私だと知っているので――。

 そのことについては――。

 苦笑交じりで、困ったものですねと言ってくれたけど。


 ふむ。


 私が行くのは危険かも知れないね。

 でも、行ってみたい。

 何故ならば、かなり面白いことになりそうだ。

 美食。

 はっきり言って、嫌いではない。

 迷うところだ。



 ウェーバーさんとそんなことを話していると――。


 2回戦の始まる時間となった。


 ロックさんにメガモウ。

 2人の黒騎士。


 どんな戦いになるのか、とても楽しみだ。





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