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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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765 御前試合当日、朝




 朝、パチリと快適に目覚める。

 今日は9月5日。


 いよいよ、御前試合の日だ。


 黒騎士、ホーリー・シールド、ローズ・レイピアから各2名。

 それにロックさんと新獣王国の若者。

 計8名が、勝ち抜き戦で最強を目指すのだ。

 新獣王国の若者ダバ・ボヤージュについては緊急の参戦だったけど、陛下も快く了承してくれた。


 私はロックさんが勝つと思っているけど――。

 結果は見てみなければわからない。

 楽しみなのだ。


 さあ。


 今日も元気にパジャマを脱いで、身支度を整えて、ヒオリさんとフラウと朝食を取って、1日の始まりだ。

 今日は、工房はお休み。

 ヒオリさんとフラウも招待されて、今日は御前試合を見に行く。


 エミリーちゃんは、お休みだ。

 一応、御前試合には誘ったのだけど……。

 ご遠慮されてしまった。

 私も強引には誘わなかった。

 なにしろ今回の観客は少数。

 参加選手の関係者と、お偉い様ばかりだしねえ。

 息苦しいのはわかる。



 朝食をおえたら、私は転移の魔法で参加者たちの送迎だ。


 まずは、ユイのところに飛んだ。

 外の庭に、参加者たちはすでに集まっていた。


 白い神子服姿の聖女様なユイ。

 セイバー姿のリト。

 ホーリー・シールドの白い制服を身に着けて、青いマントを背中に流す、頑強そうな熊族の獣人。

 そして、もう1人――。

 同じく白い制服に青いマント姿の大男――。


「メガモウじゃん! え!? メガモウが聖国の代表なの? ねえ、ユイ。大丈夫なのホントに!?」

「大丈夫だよ。ね、メガモウさん」

「死力を尽くします」


 おお……。

 メガモウが真顔で姿勢を正したまま、キチンとユイに答えた。

 なんだろう、この感動は。


「メガモウ……。なんか、人間みたいになったね……」

「はぁ!? おい、クウ! どういう意味だそれは!」

「あ、えっと。ごめんね? 私の中だとさ、なんかこう、もっとね、もーもー鳴いている印象というか……」

「俺は牛じゃねえぞ! ただの暴れ牛だ!」

「ん? どっちも牛だよね?」

「ただの牛じゃねえ! 暴れ牛だっつってるだろうが!」


「あはは。仲がいいんだね」


 ここでユイがクスクスと笑った。


「失礼しました」


 メガモウは、コホンと小さく喉を鳴らして姿勢を正した。

 まあ、いいか。

 私も仕事をしよう。


「じゃあ、行くね」


 転移魔法でダンジョンの転移陣に飛んで、さらに銀魔法の『離脱』でダンジョンの外に出る。

 転移魔法のことは、なんかすごい魔道具! ということで私を知らない人には説明してもらっている。

 それでも驚かれはするけど気にしない。

 気にしたら負けなのだ。


 マーレ古墳のダンジョン町からは馬車で帝都に向かう。

 最初は飛んでいく予定だったけど、せっかくだし帝国の景色も見たいということで馬車になった。


 馬車は、すでに待機していた。

 計3台。

 馬車には、それぞれ国ごとに乗ってもらう。

 さすがに対戦相手と2時間も顔を突き合わせるのは嫌だろう。

 喧嘩になりかねない。


 御者台には、冒険者スタイルの白騎士さんが座っている。

 キラキラの人たちだ。

 まあ、うん。

 問題はないだろう!

 陛下からは、街道の警備や重厚な護衛も提案されたけど、そこまで手間をかけさせるのは申し訳ないので、それは断った。

 そもそもお忍びだ。

 派手にはしない方がいいだろう。


 そもそも、3グループとも屈強極まりない。

 参加選手たちに加えて――。

 ナオは、自身が勇者。

 ユイには光の大精霊。

 エリカには古代竜のメイドさんが付いているのだ。


 ユイたちには、馬車に乗って待機していてもらう。

 乗り込む馬車は国ごとに別々でも、移動は3グループで一緒だ。

 私は空から見張る予定だ。


 次はエリカのところに飛んだ。

 エリカの御一行は王城の中庭にいた。


 真紅のシンプルなドレスに身を包んだ薔薇姫なエリカ。

 メイド姿のハースティオさん。

 ローズ・レイピアのエンブレムがついた赤いスーツに身を包んだ、いかにも貴族令嬢な女の子。

 もう1人も赤いスーツ姿の、クールな雰囲気の女の子。


 エリカのところの参加者は、2人とも10代の半ばに見えた。

 メガモウたちと比べると――。

 本当に小さい。

 それこそ踏み潰されてしまいそうだ。


 ただ、うん。


 強いね。


 肉体への魔力浸透が恐ろしく進んでいて、まだ若いのに、見た目的には綺麗な女の子なのに、怖いくらいの練度だ。


「クウ、紹介しておきますわね。この子が噂のトーノです」

「あ。そうなんだ。よろしくね。クウと言います。秘密なんだけど、私もトーノなんだよねー、実は」

「よろしくお願いします。トーノ・ク・ウネルと申します」


 微動だにすることなくクールな雰囲気の女の子が答えた。

 ふむ。


 遠野空、寝る。

 遠野、食う、寝る。


 まさに私のような名前だね、まさに。


 おしゃべりしてみたいけど、今は仕事中なので挨拶だけだ。


「じゃあ、行くね」


 転移。

 離脱。


 エリカたちにも、馬車に乗ってもらった。


 さあ、次は最後。

 ナオのところだ。


 精霊界経由で、ナオの家に出る。


 泉のある庭には、すでにナオの御一行の姿があった。

 と言っても2人だけど。


 緑の正装に身を包んだ戦士長のナオ。

 そしてもう1人が、ナオの居た浜辺の村で悪魔に殺されたジダさんの息子という黒豹族の青年だ。

 年齢は、10代の後半だろう。

 緑の戦士服を崩して着ている。

 黒い髪はボサボサで、たてがみみたいになっている。

 姿といい顔立ちといい、いかにもヤンチャ君だ。

 私が泉から現れると、腕組みして片足を軽く前に出した斜に構えた態度で私のことを睨みつけてくる。


 と、ナオが容赦なくヤンチャ君――ダバ・ボヤージュの頭を叩いた。


「いてぇぇぇ!」


 頭を押さえて、ダバがうずくまる。


「挨拶」


 ナオが短く告げる。


 ダバは、「チッ」と舌を打った後で――。


「よろしく」


 と、私に形だけ軽く頭を下げた。

 まあ、うん。

 ヤンチャ君だね。


「じゃあ、行くね」


 転移。

 離脱。


 ダンジョンの外に出れば、3台の馬車が待機している。

 ナオの姿を見たエリカとユイが馬車の中から窓ごしに手を振ってくる。

 それを見たダバが――。


「ケッ。あれが噂の聖女と薔薇姫か。ヒト族がよ。いてぇぇぇぇぇぇ!」


 悪態をついて、ナオにげんこつを食らった。


 うずくまったダバの首根っこをナオが容赦なく掴んだ。

 白騎士さんが開けてくれたドアの中に、さらに容赦なく、いらない荷物みたいに乱暴に放り投げる。


「だぁぁぁぁぁ! なにすんだよ、ナオ様! 俺には、これから雑魚共をぶち殺す重大な仕事があるんだぜ! 怪我したらどうすんだよ!」

「ザ・子供は貴様だ。少し黙れ」


 冷たい声で命じてから、ナオが私に振り返って頭を下げてくる。


「ごめん。大宮殿までに再教育しておく」

「う、うん。よろしくね」







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― 新着の感想 ―
[一言] ダバくん、よりによって、勇者(ナオ)の親友…精霊(クウ)、聖女(ユイ)、王女(エリカ)に無礼な態度とってしまったのか…ナオ激おこ案件
[一言] > これから雑魚共をぶち殺す重大な仕事があるんだぜ! 怪我したらどうすんだよ! 怪我したくらいで勝てる自信がなくなるなら、おうち帰ってママの(以下略) って言いたくなる、お手本のようなかま…
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