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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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762 ロックと新作バーガー




 9月3日、午前11時。


「おー! いたいたっ! ロックさーん!」

「おお、クウか! いいところに来たなこっちに来い! さあ、レタスを切れ! レタスを!」


 こんにちは、クウちゃんさまです。


 というわけで、姫様ドッグの厨房にロックさんの姿を見つけたと思ったら仕事をやらされました。

 店内は賑わっています。

 なので仕方なく、私は気合でレタスを切りました。

 ようやく一息がつけたのは、午後2時を回ってからでした。

 疲れたぁ。

 ホント、繁盛しているねえ。


 他の人に厨房を任せて、私とロックさんは遅めのランチを取る。


「そういえば、今日はブリジットさんは?」


 お店にいないけど。


「今日は治療院に行ってるぞ」

「なんで?」

「人手が足りないってんで、治療を手伝ってるんだよ。夏は獣がよく出るから怪我人も多いみたいでな」

「なるほど。でも、ダンジョンから帰ったばかりだよね?」


 最近はぜんぜん見かけなかったし。


「おう。昨日、帰ったところさ」

「……すごいね」


 休みなしでよく働くねえ。

 と思ったけど、帰路で十分に遊んできたようだ。


「ダンジョンはどうだったの?」

「バッチリさ。御前試合は楽しみにしておけよ。ところで、もう日程とかは決定しているのか?」

「うん。5日」

「は?」

「明後日ね。よろしくー」

「いきなりすぎだろ!」

「あははー」

「……まったく。まあ、いいけどよ」


 ロックさんには当日の朝、冒険者カード持参で大宮殿前の広場にまで来てもらうことになった。

 そこからは係の人が案内してくれる手筈だ。


「それで、俺はどんなヤツと戦うんだ?」

「さあ」

「なんだよ秘密か?」

「私も知らないんだよー。そこまでは教えてもらってないし」

「まあ、そりゃそうか」


 会話しつつ、姫様ドッグを食べていると――。

 そこに店長さんが来た。

 ブリジットさんのお父さんでもある人だ。

 店長さんはトレイを持っていた。

 そして、そのトレイには、店内なのに、キチンと紙で包まれたハンバーガーがふたつ置かれている。


「お。来たか」


 ロックさんは知っていたようだ。


「お嬢さん、よかったらこれも食べてみてください」

「うん。ありがと」


 私は手に取って、紙を軽く開いた。

 私はすぐに気づいた。

 何故ならば、そのバーガーにはミートソースがかかっていた!


「あの、これって……」

「クウバーガー」


 ロックさんが、ニヤリとして言った。

 さらにロックさんが言う。


「ク・ウチャン」


 と。


 あ、はい。


「クウ、おまえ、俺がザニデアに籠もっている間に、また面白いイベントをここで勝手に開いたそうだなー」

「あははー」


「私の友人が鍛冶の町アンヴィルでこれを見つけたと言って、わざわざ持ち帰ってくれたんです。美食の賢人コンテストのク・ウチャン様が作った特別なバーガーだということで。誰でも作って良いという話だったので、早速、うちでも試作をしているのですが……」


 なるほど。


 とりあえず、いただくことにした。


 ぱくり。


 ふむふむ。


 店長さんが緊張の面持ちで、食べる私の様子を見ている。


「ごちそうさまでした」


 食べおわった。


「……まず、ハッキリ言ってしまうと、このバーガーは出来損ないだね。食べられないほどではないけど、まだ研究が必要だよ」

「はい……。そうですよね……」


 自覚はあったのか、店長さんは認めてうなだれた。


「なあ、クウ。俺にはよくわかんねーんだけどよ……。なんでいまいち、まとまりがないんだろうな」


 ロックさんが質問してくる。


「ミートソースの味付けが豪華すぎるんだよ。高級レストランの味だよね。バーガーの中で完全に浮いちゃってる。もう少しシンプルに、トマトとひき肉の風味を大切にしないとだね」

「そうですかぁ……。ただそれだと、アンヴィルのクウバーガーと同じになってしまいそうで……。なんとか差別化をと思っておりまして……」

「あー。そういう問題もあるのかー」


 善良な店長さんらしい悩みだね。


「でもさ、そんなの簡単だよね?」


 私が思うには。


「……と、言いますと?」

「だってここ、姫様ドッグのお店だよね?」

「はい。そうですが……」

「スパイシークウバーガー。つまり、辛味粉をミートソースに入れて、辛口にすればいいよね」

「な、なるほどっ!」

「おお。そりゃ、いいかもだな!」


 私が提案すると、店長さんに続いてロックさんも感心した。


「チーズを挟んで、スパイシークウチーズバーガーなんてのも有りだと思うよ」


 前世では絶品だった。

 チーズのトッピングに失敗はないはずだ。


「さすがはお嬢さんです。本当に目から鱗。いえ、我が事ながら、灯台もと暗しとはよく言ったものです……」

「あははー。考えすぎちゃったんだねー」


 今はお金もあるから、自由に好きなことを試せちゃうし。


 店長さんは早速、試作に取り掛かるようだ。

 また今度、食べさせてもらおう。


「しかし、クウ。おまえ、すげーなー。姫様ドッグと姫様ロールだけじゃなく今度は新しいバーガーとは」

「まあねー。私って、けっこう、かしこいし?」


 かしこい精霊さんですし。

 おすし。


「かしこいかはともかく、アイデア豊富ではあるな」


 感心したところで――。

 ロックさんが急に笑い出した。


「どしたの?」

「しかし、クウバーガーって! ク・ウチャンとかよ! おまえ、どんだけ自分のことが大好きなんだよ!」

「なにさー! 嫌いよりはいいでしょー!」


 この後しばらく、私は逆ギレした。







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