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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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750 金虎王と竜王、あと精霊様





 こんにちは、クウちゃんさまです。

 私は今、どことも知れない山岳地帯の岩の窪地にいます。


 あたりに倒れているのは、新獣王都で敵対反応を見せていた連中、約100名。

 多いです。

 好きにさせるわけにはいかないので、問答無用で連れてきました。

 約100名の内、80名は虎族です。


 これから虎族の1人を起こして――。

 話を聞いてみようと思います。


「クウちゃん、こいつがいいと思うのである。この男は、素直に話しそうな顔をしているのである」

「うん。わかったー」

「では、起こすのである」


 フラウが、選んだ男の首根っこをつかんだ。

 そのまま軽々と岩壁に投げつける。

 男は小さく呻いて、痛みの中で意識を取り戻した様子だ。


「やっほー」


 男に近づいて、私は笑いかけた。


「な……。う……。ここは……」


 頭に手を当てて、男が必死に目を凝らして――。

 あたりの様子を窺う。


「みんな、もう死んじゃったよー。残るは、キミひとりー」

「え。あ」


 男が倒れている仲間に気づいた。

 誰一人動いていない。


「まったく、馬鹿なことしたよねー。どうしてバレないと思ったのー?」

「な、ななな……! なんで、殺しなんてことを! 俺たちはただ、挨拶に来ただけなんだぞ……!」

「へー。どんな挨拶?」

「それは――」


 言い淀んだので、『アストラル・ルーラー』の切っ先を向けた。

 するとしゃべってくれた。


 彼らは大森林を支配する金虎族の配下だった。

 他の獣人やお店に難癖を付けて、個人単位で喧嘩をして、とにかく嫌がらせのためだけに来たらしい。

 もしも捕まったら――。

「俺たちは大森林の虎族だぞ! この無礼な仕打ちはなんだ! 銀狼国は最低限の礼儀も弁えていないのか!」

 とかで、逆に脅す予定だったそうだ。

 なんて迷惑な。


 どうしてそんなことをするのかと言えば――。


 ナオが一度も大森林に来て頭を下げていないからだと言う。

 しかも勝手に獣王家を復活させた。

 大森林の金虎族の獣王は、そのことにご立腹なのだそうだ。

 復活させるなら、まずは王家の者が自ら挨拶に来て、獣王たる自分に許可を取るのが礼儀だろうと。

 なので、まずは挨拶を、となったようだ。


 なるほど。


 そういえば獣王家って3つあるんだった。

 銀狼。

 金虎。

 獅子。

 この内、草原の獅子王家はすでに血筋が途絶えていると聞いた。

 で、銀狼王家も消えていたので、近年ではずっと、金虎王家が唯一にして至高の獣王家だったわけだ。


「……だ、だから、こんなことをして、タダで済むと思うのか? こ、抗争になるぞ獣人同士の……」

「知らんのである」


 話を聞いたフラウが冷たく言った。


「たしかに」


 私もうなずいて、


「そもそもさ、なんで大森林の許可がいるの? 関係ないよね?」


「そ、それは……。

 金虎王こそが――。

 ザニデア山脈の最奥に住まう伝説の竜王様より――。

 正式に獣王として認められた――。

 唯一の存在だからだぁぁぁぁぁぁ!」


 最初は絞り出すように、でも最後は激しく虎族の男は叫んだ。


 私はとなりにいるフラウに目を向けた。

 フラウはぴくりとしていない。

 私の記憶が確かならば、ザニデア山脈の最奥に住まう竜王って、このとなりにいる幼女のことなんだけど。


「わかったか! ぐはっ」


 男が立ち上がって私の剣を奪おうとする。

 私は蹴飛ばした。

 男は再び壁にぶつかった。

 男は呻いて大人しくなる。

 まったく。

 ホントに。

 血の気が荒いってイヤだねー。

 なんでもすぐ、暴力で解決しようとするんだから。


「ねえ、今の話、詳しく聞かせてよ」


「こ、後悔するなよ……。

 金虎王は、本当に立派で強いお方なのだ……。

 かの方は王家の生まれでありながら、真の強さとは何か――。

 それを求めて放浪の旅に出て、ついには――。

 荘厳たる竜の宮殿に辿り着き――。

 竜王様より、獣王の資格たる牙をいただいた方なのだ……。

 ふふ……。

 それだけではないぞ……。

 金虎王は去年――。

 精霊様よりお言葉をいただき、金虎王こそが唯一の王であると――。

 そう認められているのだ……。

 帝国でも似た話はあったが、そちらみたいな嘘ではない……。

 ふふ……。

 おまえらは、精霊様にも喧嘩を売ったのだぁぁぁぁぁぁ!」


 男が叫んだ。


「へー。そうなんだねー」

「わ、わかったら俺を解放するんだ……。してくれ……。いや、あの、どうかお願いします俺だけでも助けてください……」

「ねえ」

「な、なんだ……?」

「私が誰だか、わかるかなー」

「し、知るか……。エルフに知りあいなんていない……」

「なるほど」

「じゃあ、こっちの子は?」


 私はフラウに目を向けた。

 フラウの頭には、今、竜の角が出ている。

 フラウの角は消せるので工房で店番をやっている時には消しているけど、町の外では出している。

 出しておく方が強く力を発揮できるのだそうだ。


「知るか……。どこの誰だ……」

「なるほど」


 私はうなずいた。


「ねえ、フラウ。虎族の王って人には会ったことがあるの?」

「ないのである」

「なるほど」

「クウちゃんは会ったことがあるのであるか?」

「ないよー」

「だと思ったのである」


 だよねー。

 あっはっはー。












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