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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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749 新生の朝




 おはようございます、クウちゃんさまです。

 今日は8月30日。


 今日は、とてもとても大切な日。

 とてとてです。


 朝からなんだか、私まで緊張してしまいます。


 なにしろ今日は――。

 ついに――。

 ナオが、七難八苦を乗り越えて、獣王国の新生を宣言するのです。


「じゃあ、フラウ、行くよ」

「了解なのである」


 フラウを連れて、転移。

 獣王都に最寄りのダンジョンの地下に飛んだ。

 すぐに外に出る。

 ダンジョンの外は、影の落ちた谷底だ。

 かつて、旧獣王国時代――。

 このダンジョンは『試練の洞窟』と呼ばれて、踏破して初めて獣人戦士は一人前となれたそうだ。

 トリスティン占領下では、魔石鉱山として使用されていた。

 たくさんの獣人が奴隷として働かされたそうだ。

 もちろん今は開放されている。

 谷底にあった奴隷町は、完全に破壊された。

 新獣王国では、このダンジョンは再び『試練の洞窟』となる予定だ。

 今はまだ無人だけど。


 私とフラウは空に浮き上がって飛んだ。

 新王都にはすぐに到着した。

 丘陵の森を歩けば何時間もかかるだろうけど、空の上からなら早い。


 まずは空の上から2人で、森の中の新王都を眺めた。

 獣王の館がある草原の丘と、その周囲に広がる整地された中央区画は、遠くからでもよく見えた。


 さて。


 時刻は現在、午前7時。

 まだ朝だ。

 新生宣言は正午からなので、まだ時間がある。

 なぜこんなにも早く来たのか。

 それは、お掃除のためだ。

 私は、敵感知と魔力感知を発動させて、新王都を丹念に調べる。

 残念だけど敵反応は多い。

 ざっと50。

 新王都には、ナオからの呼びかけに応えて、ナオの声を聞くために数多くの獣人が各地から集まっている。

 様々な思惑の者たちもいるのだろう。

 ただの情報収集か。

 暗殺か。

 新生宣言式を中止させたいのか。

 とにかく嫌がらせをして、獣王家やナオの権威を失墜させたいのか。


 しかし、だ。


 そんなことは、このクウちゃんさまが許さない。

 ナオに頼まれたわけではないけど、頼まれなくてもやる!

 絶対に、だ。

 ナオの晴れ舞台を邪魔はさせない。


 そのために早く来た。


「フラウ、早速だけど大掃除を始めるから準備をよろしくね」

「わかったのである」


 フラウには竜になってもらった。

 その上で、夏のバカンスで使った馬車を抱いてもらう。

 もちろん姿は消した。

 そして、空で待機してもらう。


 私は、敵反応のあった相手を、とにかく問答無用で『昏睡』させて、馬車の中に放り込んでいく。

 子供だろうが族長だろうが、どんな相手だろうが容赦はしない。

 人にはそれぞれ、色々な事情がある。

 だけど残念ながら、それを聞いている時間はない。

 申し訳ないけど問答無用!

 獣王都から放り出す!

 攻撃的な魔道具を持っていた場合には、同時に私の魔法で無効化した。

 火の玉を放つ杖とか、危険極まりない。

 呪具については、もしも持ち込んだ誰かがいたとしても――。

 獣王都には結界が張ってあるのだ。

 とっくに無効化されているようで、反応はひとつもなかった。


 馬車が人で満員になったら、一旦、捨てに行く。


 場所は、丘陵を越えた先の山岳地帯。

 空に飛ばなければどこかもわからないような、岩に囲まれた窪地。

 新獣王都に戻ろうとしても、それこそ空を飛ばない限り、絶対にナオの新生宣言には間に合わない。


 3時間かけて、ようやく敵反応を消した。

 調査範囲を新獣王都の外にまで広めたら、最終的にはだいたい100人を処理することになった。

 すごい人数だ。

 とはいえ、ハッキリわかることもある。

 100人の内の80人は、虎族。

 虎族が、ナオに反意を抱いていることは――。

 残念だけど、確かだろう。

 偶然で済む人数ではない。


 さて。


 時刻は午前10時を過ぎたところ。

 今日の私たちは、影からこっそりとナオの晴れ舞台を見守るだけ。

 挨拶とかはしない。

 なので、まだ時間はいくらかある。


「クウちゃん、連中の話を聞いてみたらどうであるか? 特に虎には妾達で聞いておくべきだと思うのである。妾達なら、なんのしがらみもなく、自由にお仕置きができるのである」

「んー。そうだねー。じゃあ、そうしてみよっか」

「――場合によっては、虎族には退場をお願いするのである」


 フラウが妙に低い声で言う。

 怖いよ!?

 と言いたいところだけど、今回はその通りだ。


「そうだね。新獣王国の邪魔にしかなりそうにないなら、私たちの手で大森林にお帰りいただこうか」


 虎族は、トリスティンとジルドリアの間に広がる大森林を領有する。

 獣人の一大勢力だ。

 この虎族たちが大森林の虎族かはわからないけど……。

 あるいは新獣王国を乗っ取ろうとしているのだろうか。

 ロックさんのパーティーメンバーである金虎族のルルさんに、以前に助けたことのあるルルさんの妹ノノ。

 2人の国でもあるので喧嘩はしたくないけど……。

 新獣王国にちょっかいをかけるのであれば許さんのです。


 ただ、クウちゃんのままでは何なので……。

 ソードになることにした。

 というわけで、変身。


「フラウはどうする?」

「幼女の姿でいいのである。それでわからぬのであれば、敵として意識する必要もない相手なのである」

「んー。それなら私も、普通でいいかー」


 ソードさまはやめることにした。


 精霊の服を着て、神話武器『アストラル・ルーラー』を手に持つ。

 武器程度の威圧はいいよね。


 『アストラル・ルーラー』は、ホント……。

 うん……。

 最強武器としての真価を発揮する機会がなくて申し訳ない限りだけど、今回も威圧に頑張ってもらおう……。

 私が心の中で謝ると――。

 『アストラル・ルーラー』は――。

 気にするな、と言わんばかりに、青く輝いてくれた。


 かくして私たちは、虎族との対話に挑むのであった。






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― 新着の感想 ―
[一言] アストラル・ルーラーさんが人化すれば、有能な会社エリートでしょか。そうすればかしこい精霊さんも賢くなるでしょう。
[一言] アストラルルーラーさんから漂うイケメンオーラ
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