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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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741 ふうー




「――では、まずこれが、ネームドスケルトン『フィロテス』のドロップアイテムを換金させていただいた代金になります」


 受付カウンターからトレイに乗って出てきたのは――。

 銀貨4枚だった。


 ふむ。


「……意外と少ないんだね」


 私が素直な感想を言うと、リリアさんはにっこりと笑った。


「初心者の子なら、大喜びする金額よ?」

「わーい。やったー」


 喜んでみた。


 というわけで私は今、ダンジョン探索をおえて、マウンテン先輩たちと共に冒険者ギルドに戻っていた。


 この後、魔石の分の代金をいくらかもらって――。


「おめでとう、クウちゃん。Fランク冒険者として活動したことが、キチンと本日の日付で記録されました」

「やったー! これで1年はいいんだよねっ!」

「でもクウちゃんは冒険者の活動を頑張るって言ってくれたから、また明日にでも依頼を受けるのかな」

「え」

「ふふ。それは熱心なことですね」


 うしろにいたマウンテン先輩が私を褒めるように微笑む。


 いえ、それは……。


 あ、そうそう。


 残念ながらネームドスケルトンのドロップアイテムは、いわゆる「ハズレ」に分類されるものだったようだ。

 当たりを引けば、金貨2枚にはなるという。

 それでも2枚だけど……。

 と思ってしまう私は、すっかり大金持ちのクウちゃんさまです。


 まあ、考えてみればFランクダンジョンの地下一階のネームドだからね。

 そんなにすごいものを落とすはずもないか。

 狙っているヒトもいなかったし。

 一攫千金を狙うのであれば、もっと地下に行く必要がありそうだ。


 手に入れたお金は、4人で均等に分けた。


「……それにしても、その子たちは幸運だったわね。クウちゃんがいなければそこで人生がおわっていたわけだし」


 リリアさんがしみじみと言う。

 問題になるといけないので『山嵐』とのことは正確に報告した。


「ああいう子って多いんだよね?」

「ダンジョンに夢を見る若い子は多いわね。なんといっても、たくさんのお金と名誉を手に入れる一番の早道だし。最近では特に、孤児からSランク冒険者になったロックさんの立志伝があるしね。もっともFランクの冒険者にダンジョン探索をオススメすることはないけど」

「初心者用の研修とかはないんですか?」

「うちになら、新人用の訓練プログラムがあるわよ。ただし有料だから受ける子はほとんどいないわね。オススメしても、訓練にお金を使うくらいなら装備を買うか美味しいモノを食べるって言われちゃうし」

「まあ、うん……。それは、そうかもだね……」


 私でも同じ立場なら……。

 きっと、訓練にお金は使わないだろう。


「ねえ、リリアさん。少し寄付してもいい?」

「ん? 寄付って?」

「訓練プログラム用に。寄付した分、新人の子にタダで受けさせてあげてよ」

「……どうしたのいきなり」


 思いっきり不審がられた!


「私、大金持ちのお嬢様だしさ。ほら、社会奉仕的な?」

「ちなみにいくら位を考えているの?」

「金貨で1万枚くらい?」


 10億円くらいあれば、しばらくは持つよね。


「えっとお。クウちゃん、とりあえず、奥の部屋にどうぞ? ギルドマスターを呼んでくるわね」

「はーい。じゃあ、先輩方、今日はありがとうございました」


 私はうしろにいた先輩たちに頭を下げた。


「ええ……。こちらこそ、ありがとうございました」

「ふ。また縁があれば共に戦おう」

「今日は楽しかったわ。クウちゃんって、本当にお嬢様だったのね……」

「あはは」


 この後は、久しぶりにギルドマスターと面会した。

 話し合いの結果――。

 純粋にタダにしてしまうと迷惑な連中が押し寄せて来そうだから、10回の任務を達成した新人冒険者を対象とすることにした。

 そのことは事前に告知もして、大いに新人たちに下水道の仕事を頑張ってもらおうという計画になった。

 というか当面は、下水道の仕事を10回こなしたらということになった。

 下水道の仕事、やっぱり人気ないんだね……。


 あと、この機に他でも寄付を募って、新人の育成と下水道の清掃を安定して行えるようにしようという話にもなった。

 上手く循環するといいね。


 あと、『山嵐』の子たちがギルドに来たら、訓練プログラムをオススメしてもらえるようにお願いしておいた。

 彼らが訓練を受け入れたのなら厳しく鍛えてやってほしい。

 ちゃんと本当に――。

 未来の英雄を目指せるようにね。


 そんなこんなを色々とおえて――。


 家に帰れば、すっかり夕方だった。


 私は一階のお店に居るっぽいヒオリさんとフラウに声もかけず、家の3階にある自分の部屋に入った。

 ベッドに飛び込んで、うつ伏せに寝転ぶ。

 枕に顔をこすりつけた。


「ふうー」


 あー。


 ようやく、心の底から解放された気持ちで息を吐くことができた。


 今日も本当に色々とあった。

 楽しかった。

 マウンテン先輩は、本当に人格者だった。

 ネスカ先輩は、陽気ないい人だった。

 マンティス先輩は、かまーだった。

 『山嵐』の子たちには、うん、本当に頑張って欲しい。


 疲れた……。


 …………。

 ……。


 お腹は減っていたけど、私はすぐに眠りについた。




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