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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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736 先輩たちとダンジョン探索!



 私たちはダンジョンに入った。


 現れたのは、歴史を感じるひび割れた石造りの地下通路だった。

 高さも幅も2メートルくらい。

 空間全体がわずかに光を帯びていて、薄暗いながらも視界は確保されている。


 通路は正面に伸びていた。

 5メートルほど先で左右に別れているのが見える。


 振り返れば、闇。

 この闇に飛び込めば、外に出ることができる。


 まさに、うん。

 古きよきゲームの、3Dダンジョンのようだ。


 入ってすぐの場所には、私たちの前に突入した若手パーティー『山嵐』の4人がまだいて、気合を入れていた。


「やってやろうぜー!」

「おうよ!」


 広い場所ではないので、自然と視線は重なる。


「今日はお互いに頑張りましょう」


 ゆったりとした物腰で、マウンテン先輩が穏やかに挨拶する。

 するとリーダーの青年が、あまり友好的とは思えない、なんとなく尖った口調でこう言ってきた。


「なあ、おまえらって学院生ってヤツ?」

「ええ。その通りです」


 マウンテン先輩は人間が出来ている。

 嫌な顔ひとつ見せず笑顔で肯定した。


「はっ! やっぱりか。高そうな装備だし、ボンボンだと思ったぜ。デカい図体してスカした顔しやがってよ」

「ふふ。そうですね。確かに私の図体はデカいです。スカしたつもりはありませんが」

「てめぇ、喧嘩売ってんのか! デカさだけで勝てると思うなよ!」


 なんて一方的な。

 青年が、いきなりキレ始めた。


「こんな入り口で喧嘩したら、すぐにつまみ出されますよ。冒険も始めずに脱落するおつもりですか?」

「てめぇっ!」

「はいはい。おしまい、おしまい」


 仕方がないので私が間に入った。


 マウンテン先輩は、あくまで礼儀正しいけど……。

 うん。

 青年には、帝都のエリートに対する劣等感や対抗意識もあって、それが挑発に見えてしまうのだろう。

 とはいえ、悪いのはさすがに青年だ。

 いくらなんでも目が合って5秒で喧嘩を売るのはいただけない。

 それでは、ただのチンピラだ。


「キミさ、意気込んでるのはわかるけど、喧嘩を売る相手が違うでしょ。売るならこの先の魔物に売りなよ」

「はぁ!? うるせぇよ! ボンボン!」

「あのさあ、せめてお嬢様って言ってくれない?」

「金持ちがよ」

「それを腕一本で手に入れるために、キミは来たんでしょ。今日が英雄伝説の始まりなんだから頑張りなよっ!」


 青年の背中を叩いて、私は陽気に笑った。


「……お、おう」


 青年は私に応援されて、見事に照れた!

 まさに、計算通り!

 クク。

 クウちゃんだけに、9x9の81。

 すなわち、はいでイエス。

 私はちゃんと、自分が可愛い女の子だと知っているのだ。


 というわけで。


「頑張ってねー!」


 手を振って『山嵐』の皆さんを送り出して、彼らが先の分岐を右に曲がったのを見て取ってから――。


「じゃあ、私たちは左に行きましょうか」


 私は言った。


「クウちゃん、ああいう男の子の扱い、上手なのねえ」

「ふ。喧嘩になったとしても、負けることはなかっただろうが。無意味な争いは避けるべきだな。マイヤに感謝しよう」

「そうですね。ありがとうございます、マイヤ君」

「いえー」


 怒らない3人もさすがだ。

 気を取り直して、私たちはダンジョンの探索を始めた。

 私は後から付いていく。


 最初の敵は一体のスケルトンだった。

 通路にぼんやりと立っていた。


 ネスカ先輩が先行して、腰のポーチに入れてあった小石をヒュンと投げる。

 小石が当たってスケルトンがネスカ先輩に気づいた。

 ネスカ先輩はすぐに身を返して、マウンテン先輩の背後に回る。

 スケルトンの棍棒攻撃を、待ち構えていたマウンテン先輩が巨躯と大盾とで力強く受け止める。

 そうして、スケルトンの注意が盾役に向いたところで――。

 左右からネスカ先輩とマンティス先輩が剣で襲いかかり、あっけなくスケルトンは小さな魔石へと変わった。


 まずは1個!


 いえす!


 さすがは学院生というべきか――。

 確実で危なげのない、基本通りの戦闘スタイルだった。


「問題ありませんね」

「そうね。どんどん行きましょう」

「ふ。次は俺の斥候だな」


 マンティス先輩が静かな足取りで通路を先行する。

 角の先に見つけたようだ。

 手振りで「1」と後続に伝えてから、敵の注意を引いて、連れて来る。


 棍棒を振りかざす1体のスケルトンだった。


 先程と同じように、無傷で簡単に撃破。


 2個の魔石、ゲットだぜ!


 この調子なら、あっという間に、Fランクの任務達成規定――魔石10個の取得なんてクリアできそうだ。

 先輩たちも伊達に学院で学んで来たわけではないということだね。


 ……『山嵐』の4人も、上手くやれているといいけど。


 この後も私たちは順調に戦いを続けて――。


 あっという間に6個の魔石をゲットして――。


 まあ、うん。


 私は見ているだけなんだけど――。


 大勢の冒険者がキャンプを張る、地下の大広間へとたどり着いた。


「さて。どうしますかね」


 マウンテン先輩が大広間を見渡す。


 大広間では、定期的に決まった場所にスケルトンがポップするんだけど、その場所にはだいたいパーティーがいる。

 彼らは、その場所で沸く敵だけを倒しているのだ。

 ポップ時間は把握しているようで、魔導コンロを使って、呑気に肉を焼いて食べていたりしている。

 ビールを飲んでいる冒険者のおっさんもいるね!

 まあ、うん。

 スケルトンは弱い。

 ドロップする魔石は安値にしかならないけど、じっくり張り込んでそれなりに数を揃えれば十分に生活はできるようだ。


 以前にエルフのサクナが冒険者ギルドで「万年Dランク」と言って馬鹿にしていた冒険者たちは――。

 こうして無難に、気楽に、魔石を集めている。


「奥に行きましょうか。敵は強くなるけど、私たちなら余裕でしょ」


 ネスカ先輩が言った。


「通路に戻るという手もありますが――。そうですね――。マイヤ君とカマ君はどう思いますか?」

「私はお任せするよー」

「ふ。俺は奥へ行くことに賛成する。骨は歯ごたえがなさすぎる」

「では、奥へ行きましょうか」


 マウンテン先輩が話をまとめると――。


 お。


 別の通路から、『山嵐』の4人が大広間に現れた!

 どうやら勝ち抜いて来たようだ。


 私たちと視線が合う。


「おい、おまえ!」


 リーダーの青年が大声で呼びかけてくる。

 おまえとは……。

 視線から察するに、私かな?

 なんだろか。

 首を傾げていると――。

 傷だらけの4人がこちらに歩いてきた。


「見ろっ! 取ってやったぜ! 俺たちの英雄伝説の第一歩だ!」


 大いに自慢して――。

 手のひらに乗せた6個の小さな魔石を、青年が私に見せた。


「おお。すごいね」


 私は素直に称賛した。

 彼らは、ほとんど素人なのに結果を出したのだ。

 大したものだよね。


「だろー。俺らこそが、次のロック・バロットだぜ!」


 青年が気持ちよさそうに笑った。

 仲間たちも満足げだ。





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