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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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735 先輩たちとマーレ古墳に到着!




 私たちを乗せた馬車が、マーレ古墳につながるダンジョン町についた。

 深く広がった森の浅い場所だ。

 近くには川が流れていて、まるで別荘地のような雰囲気がある。

 入ってすぐに馬車を預けておける施設があるので、そこに馬車を預けて、あとは4人で通りを歩いた。

 通りには、宿やお土産屋さんがある。

 マーレ古墳のダンジョン町は、帝都からの気軽な観光スポットとしても、それなりに人気なのだ。

 鏡のように綺麗な湖もあるしね。

 冒険者を相手にした商業ギルドの施設もある。

 そこでは武器や防具、ポーションなどが売られている。

 修理もしてくれるようだ。

 施設の正面にはタープが張られていて、そこではマーレ古墳で取れた魔石の買い取りが行われている。

 まだ朝の早い時間で、ガラガラだったけど。


 町についたネスカ先輩たちは、言葉少なになっていた。

 緊張しているようだ。

 先輩たちは、一般の冒険者として普通にダンジョンに入るのは、これが始めてとの事だった。

 学院の実習でなら何度も入ったそうだ。

 地下一階であれば、それなりに把握しているらしい。

 きちんと事前に地図も購入したみたいなので、迷って途方に暮れるようなことにはならないと思う。


 まあ、うん。


 私がいれば平気なんだけどね……。

 もちろん、余計な口出しをするつもりはないけど。

 今日の私は可愛い後輩なのだ。

 黙って付いて行って、必要に応じて回復魔術をかけてあげるのだ。


 私としては、マーレ古墳での活動実績が取れれば十分なので。


 目指せ、魔石10個!


 観光地のような通りを抜けて、森の中の広場に入った。

 そこは冒険者たちの拠点。

 キャンプ場。

 たくさんのテントが張られていた。

 すでに多くの人たちが起きていて、武器や防具の点検をしたり、炊事場で調理をしたりしている。

 ダンジョン『マーレ古墳』への入り口は、この広場を抜けた先だ。


「さて、皆さん。いよいよですね」


 ヤマちゃんことマウンテン先輩が緊張の面持ちで言った。


「ヤマちゃんが正面、私が右、カマが左、クウちゃんがうしろ。フォーメーションとしてはそれでいいわよね」


 ネスカ先輩がパーティーでの立ち位置を確認する。


「ああ。異存ない」


 長い腕で前髪をかきわけ、カマことマンティス先輩が、なんとなくカッコつけたポーズでうなずいた。


「で、斥候役は、最初は私で、次はカマ。敵を倒す毎に交代ね」

「ああ。異存ない」


 同じ台詞でマンティス先輩はうなずいた。


「防御魔術はどうしますか?」


 私はたずねた。

 そう言えば、そのあたりの確認をしていなかった。


「不要です。マイヤ君は魔力を温存して、万が一の時のための回復魔術に備えておいてください」

「そうね。クウちゃんは基本、見ていてくれればいいわ」

「マイヤは、俺たちの生命線さ」

「わかりましたー」


 とりあえず、手にワンドだけは持っておこう。


 先輩たちは、3人とも剣に盾。

 スタンダードだ。


「アイテムの確認もしましょう。まず、ポーション。各自3本よね」

「ええ。大丈夫です」

「ふ。万端さ」


 先輩たちが、それぞれ腰につけた革のポーチを確認し合う。

 低級のポーションが3本入っている。


 低級ポーションには懐かしさがある。

 こっちの世界に来たばかりの頃、作ったものだった。

 素材は、薬草と水。

 たしか冒険者ギルドで1本につき小銅貨10枚で買い取ってもらった。

 約1000円だ。


 販売価格は、定価で銀貨1枚だったはず。

 約1万円。

 前世のエナジードリンクも真っ青の高値だ。

 とはいえ、性能は高い。

 使えばたちまち、ある程度の傷なら治ってしまうのだ。

 前世にあるとすれば、1万円どころか10万円、下手をすればもっと高くても普通に売れそうか。

 そう考えるとお買い得なのかも知れない。


 しかし、普通に3本用意できるところは、さすがは学院生なのかな。

 田舎から帝都に出てきて一攫千金を狙うような若者と比べれば、遥かにいろいろと恵まれている。


 私も最初の頃は、本当に貧乏だったものだ。

 ポーションを10本売って、銀貨1枚で喜んでいたよねえ……。


「クウちゃんは持ってきた?」


 感慨にふけっていると、ネスカ先輩に聞かれた。


「あ、すいません。持ってきてないです。パンとチーズならありますけど」

「あはは。パンとチーズじゃ傷は治らないかなぁ」

「ふふ。体力なら付きますけどね」


 くう。


 ネスカ先輩とマウンテン先輩に笑われてしまった。


「まあ、問題はなかろう。訓練通りに動いていけば、背後から攻撃されることはないはずだ」


 前髪をかきあげてマンティス先輩は言った。


「そうね。実習でもそうだったし」

「ええ。実習の通りにやれば、マイヤ君には不要でしょう」


 微妙にフラグを感じる発言ではあるけど……。

 頼りにさせてもらうことにした。


 その後もいくつかの確認を行って、問題なしということになった。


「では、行きましょう」

「おー」


 マウンテン先輩の声に、私は腕を上げて答えた。


 キャンプ場を抜けて、再び森の中の道を歩いた。

 少し進むと、また広場に出る。

 崩れた廃墟の点在する寺院跡のような広場だった。

 奥にある廃墟は大樹に絡まれて一体化している。

 鏡面のようになっている池が、苔むしたそれらの廃墟を映していた。


 ダンジョンは、脇に建つ円形の廃墟の中にある。

 廃墟の手前にはフェンスのゲートがあって、そこで衛兵さんたちが冒険者の出入りを管理している。


 ゲートでは、これから先に入るパーティーが、衛兵のおじさんから冒険者カードの確認を受けていた。

 パーティーは、先輩たちと同年代のまだ若い4人組だった。


「ふむ。君たちは初ダンジョンか」

「おうよっ! 村から帝都に来て、クッセー下水道の仕事で金を貯めて、やっと武器と防具を揃えてなっ!」


 彼らの武具は、木の胸当て、木の盾、錆を落とした中古の剣。

 貧相には見えるけど……。

 駆け出し若手冒険者の一般的な武装だ。

 マーレ古墳では、それくらいの装備で魔物と戦っている若者を、私も何度か見かけたことがある。


「君たちは、正規の訓練を受けたことはあるのかい?」

「んなもんはねーけど、山で鍛えてきたさ! 村に来たゴブリンだって撃退したことがあるんだぜっ! 帝都のひょろい連中より、ずっと強いぜ!」


 リーダーらしき青年が威勢よく答えると、3人の仲間たちも自信ありげに同意してうなずいた。

 不安になる発言ではあるけど、若手冒険者はこういう子が多い。


「いいか、無理だけはするなよ? 怪我をしたらすぐに引き返すこと。ぐれぐれも奥に行きすぎないこと」

「任せとけって! 俺ら『山嵐』こそが次のSランク! 次のロック・バロットになるんだ! 最初のダンジョンごときでしくじったりしねーよ!」

「そうか。では、戦果を期待しているぞ」

「おう!」


 パーティー『山嵐』の子たちが、フェンスのゲートを超えて、円形の廃墟の暗闇の中へと消えていった。


 次は私たちの番だ。


 私たちも冒険者カードを提示した。


「ふむ。君たちも若いな。というか――」


 あ。


 衛兵さんと目があった。


 はい。


 マーレ古墳は転移魔法で何度も何度も来ているので、衛兵さんの大半はすでに私の顔を知っている。

 皇帝陛下の勅令で、とっくに私はフリーパスだ。


 私はにっこり、笑顔を見せた。


 衛兵さんは、さすがはプロだけあって、余計なことを言わなかった。


「君たちに言うことはないか。探索を許可する」


 さあ。


 冒険の始まりだ!


 私たちも円形の廃墟へと足を踏み入れる。

 円形の廃墟の中は、昼間でも目先すら見通せない真っ暗闇だ。

 入った途端、視野が暗転して――。

 次の瞬間には――。

 私たちは、ダンジョンにいるのだ。






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― 新着の感想 ―
[一言] ダンジョンの衛兵「陛下、精霊様がまたダンジョンに来ました」 皇帝「なんだ。またマーレのダンジョンに行ったのか」 衛兵「はい。ただ…」 皇帝「どうした?」 衛兵「今日は新人の冒険者三人一緒に……
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