733 先輩たちと即席パーティー!
「はい、よろこんで!」
ネスカ先輩にパーティーを誘われて、私は二つ返事でオーケーした。
「よかった。これで私達もダンジョンに行けるよ。えっと、名前を教えてもらっていいかな?」
「クウ・マイヤ。学院の1年生です」
「1年生なんだ……。冒険者、なんだよね?」
「はい」
ネスカ先輩が、カウンターのリリアさんに目を向ける。
リリアさんは肩をすくめた。
「確かにその子は冒険者ですよ。みなさんと同じFランクです」
「それならよかった。私は、5年生のネスカ・F・エクセラよ。よろしくね、マイヤさん」
「はい。よろしくお願いします」
握手を求められたので、私は応じた。
「私はマウンテンと言います。よろしくお願いしますね、マイヤ君」
「はい。よろしくお願いします」
意外にもマウンテン先輩は、岩のような厳つい顔に、にっかりと愛嬌のある微笑みを浮かべた。
「俺はマンティス。君はうしろにいてくれるだけでいい。とにかく怪我をしないように気をつけることだ」
マンティス先輩は、けっこう斜に構えていた。
すぐにネスカ先輩が笑って、
「私達としてはそれでもいいんだけど、マイヤさんはどう?」
「えっとぉ……」
どうしようか。
私は返答に困った。
「クウちゃん、無理はしなくていいからね。下水道の掃除に行こう」
リリアさんが嫌な誘いをしてくる。
「ねえ、リリアさん。ダンジョンでの任務達成って、とにかく魔石を取ってくればいいんだよね?」
「ええ。そうね。評価点に換算してパーティーで10点分以上の魔石を持ち帰ることができればFランクとしての仕事は果たしたと見なされます。でもクウちゃん、下水道の方が楽だよ?」
ちなみに評価点は、ダンジョン出入り口付近にいる最弱モンスターが落とす小さな魔石が1点とのことだった。
そんなに頑張らなくても普通にクリアできそうだ。
とすれば、私が出しゃばる必要はないか。
「さすがに見ているだけというのはパーティーを組むなら問題なので、私、後衛でもいいですか?」
「いいけど、マイヤさんは何を使うのかな? 弓?」
「回復魔術でサポートしますよー」
私がそう言うと――。
「え」
ネスカ先輩が、明らかに驚いた顔を見せた。
ふむ。
私的には、3人は完全に前衛だし……。
それが一番バランスがいいかなーと思ったんだけども……。
よくなかっただろうか。
「えっと。問題なら……」
「あ、ううんっ! 問題とかじゃなくてっ! ……マイヤさん、本当に回復の魔術が使えるの?」
「はい。こんな感じでいいですよね?」
ためしに使ってあげた。
「――現われよ。清めよ。ピュリフィケーション」
もちろん水の魔術だ。
こちらの世界の魔術はたまにヒオリさんから習っている。
すでに使えるのだ。
ネスカ先輩の反応は特になかった。
失敗したかな。
と思ったら、違った。
「これは素晴らしい仲間が加わりましたね。まさに棚からチーズです」
腕組みしてマウンテン先輩がうなずく。
なるほど。
棚にあって嬉しいのはチーズか。
こっちの世界には、ぼたもちってないのかなぁー。
今度、探してみよう。
「ふ。やるじゃないか」
マンティス先輩は、どうしてしまったのだろうか!
これが素なのかな?
その長い腕でキザに前髪をかきあげた!
「マイヤさん――。ううん、私もクウちゃんって呼んでいい?」
「はい。いいですけど……」
うなずくと、ネスカ先輩に手を掴まれた。
「よろしくね! クウちゃん!」
「は、はい」
ここで、ロビーにいた他の冒険者の人たちの会話も聞こえてくる。
……あの若さで、あんな簡単に回復の魔術が使えるのか。
……ホント、すげーな、学院生って。
……なあ、あの子、俺らのパーティーに入ってくれねーかなぁ。
……おまえ知らねーのか、あの子はボンバーズだぞ。
……ああ、ボンバーズか。なるほどな。
は?
と思ったけど、いちいち突っ込むほど私は子供ではない。
まあ、うん。
たしかにボンバーズと一緒にいる時間は長い。
やむなし、だ。
でも、そうか。
水の魔術というか回復の魔術を使える冒険者って、実は貴重で、引く手あまたの大人気だったね、そういえば。
水の魔術が使えれば、わざわざ冒険者にならなくても、いくらでもいい仕事に町で就けるわけだし。
「クウちゃん、早速だけど明日はどうかな? 私達4人でマーレ古墳。朝から出かけて5時間潜って、夜までには帰ってくる予定なんだけど」
「安心の日帰り計画さ。どうだい?」
「まずは、無事に帰ることが第一の目標です。もちろんその上で挑戦はしていくつもりですが――。明日、共に行きませんか?」
ネスカ先輩、マンティス先輩、マウンテン先輩にそれぞれ誘われて、私は快く明日の冒険を了承した。
「それにしても、皆さんがパーティーを組んでいるとは驚きでした」
「あら。私達のことは知っていたのかな?」
「はい。武闘会を見ていたので。皆さん、すごかったです」
「負けちゃったけどね」
ネスカ先輩が肩をすくめる。
マウンテン先輩が、そこに言葉を続けた。
「今回は互いに新境地を見つける為、即席ながらパーティーを組んでダンジョンに挑戦してみようということになりまして」
「ただ残念ながら1人足りなくて困っていた。今日は誰かいないかスカウトに来たところだったのさ」
「クウちゃんと出会えて、運が良かったわ」
「クウちゃん。下水道、あるわよ?」
「リリアさん。私、明日、ダンジョンに行ってくるねっ!」
うむ。
この3人となら無難に達成できそうだ。
明日の朝6時。
帝都中央学院の正門前で、集合ということになった。
祝・投稿2周年\(^o^)/
ついに2年間、休まずに書き続けてしまいましたぁ\(^o^)/
これもひとえに読んでくれる方あればこそでございます。
ありがとうございました。
まだ書いていきますので、今後ともお付き合いいただければ嬉しいです。
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