732 選択のクウちゃんさま
「合格です。冒険者カードの再発行をさせてもらいますね」
「やったぁぁぁぁぁぁぁ!」
私は飛び跳ねて喜んだ。
場所は、冒険者ギルドのいつもの個室。
テストをあらためて受けた私は、見事、90点をゲットすることができた。
冒険者復帰なのだ!
タタくん、エミリーちゃん、ありがとう!
やっほー!
「じゃあ、クウちゃん。受付カウンターに行こうか。少し待っててね」
「はーい」
私はウキウキでホールに戻った。
カウンターは空いていたので、窓口のすぐ外でリリアさんが新カードを持ってきてくれるのを待つ。
しばらくすると、カウンターの中にリリアさんが来た。
「はい。これが新しいカードです」
「わーい!」
カード、ゲットぉぉぉ!
喜んでいると、続けて、5枚の依頼用紙がカウンターから出てきた。
「で、これがFランクのクウちゃんに回せる仕事です。どれにする? じっくり見て決めてね」
「え?」
「仕事だよ。冒険者としての」
リリアさんがニッコリと言った。
「今日? これから?」
「説明は、ちゃーんと、聞いていたよね?」
「えっとぉ」
記憶の片隅にあるような、ないような……。
「カード発行から10日の内に仕事をこなさなければ、また失効よ。冒険者は働く人のための資格なの」
なんと。
「10日だから余裕はあるけど……。クウちゃんは忘れっぽいし、今日、ちゃんとやろうね」
「は、はい……」
おっしゃる通りでございます。
「ひとつやっておけば、また1年は持つから」
仕方がない。
また薬草採集の仕事を受けて、パパッと済ませよう。
私はFランクの仕事内容を見ていく。
1.下水道の害虫駆除1(大ネズミ)。
2.下水道の害虫駆除2(大ムカデ)。
3.下水道の清掃。
4.下水道の網の張替え。
5.ゴミ捨て場に発生した大ナメクジの駆除。
ふむ。
ふむう……。
「あのお、リリアさん」
「どうしたの、クウちゃん? どれにするか決めた?」
「薬草採集がないんだけど……」
「薬草採集は、最近、頑張ってくれている子がいてね。間に合っているの」
「そかー」
「どれにする?」
「あのお、特例をお願いしたいのですが……」
「駄目よ? クウちゃんは特例のかたまりだけど、冒険者としては普通なの。みんなと同じ立場で頑張ろうね」
うう。
いやだあぁぁぁぁ!
無理!
いくら私が最強無敵でも、気持ち悪いのは無理なのだ!
そうだ!
私はひらめいた!
「ダンジョンに行きます。マーレ古墳に」
これだ!
冒険者といえばダンジョン!
ちゃんとゲートで登録をして、正規の冒険者として突入して、魔石を取って出てくればいいんだよね。
「クウちゃんには、パーティーメンバーがいるの?」
「いないけど」
「じゃあ、1人で行くの?」
「うん」
楽勝だし。
「駄目です」
リリアさんがにっこりと言った。
「なんでぇぇぇぇ!?」
「学院生の冒険者さんには、国からの規制が掛かっています。ダンジョンには4人以上でパーティーを組んでしか入れません」
「もー! 例外してよー! 特例ー! おーねーがーいー!」
「駄目です」
「私、特例の子だよねー!」
「安心して。クウちゃんとしては特例しまくってあげるから。だけど冒険者としては駄目です。ほら、これなんてどう? 下水道の清掃。たったの6時間でおわる誰にでも出来る簡単な仕事なのに、報酬はいいよ」
「やだぁぁぁ! 汚れちゃうー!」
「どんな仕事でも、冒険者は汚れるものだよ?」
「汚れ方がちがうのー。下水道は嫌なのー」
「ならゴミ捨て場――」
「ほとんど同じだよねっ!」
「クウちゃん、ソロの冒険者は、みんなそこから始めているんだよ?」
「でも、12歳の女の子にやらせる仕事ではないよね?」
うん。
ホントに。
「クウちゃん。クウちゃんは確か、人間の22歳だったわよね? 冒険者に12歳の女の子なんていないよ? 冒険者には15歳からしかなれないんだから。急にどうしちゃったのかな変なことを言って」
うううううう。
たしかに私は22歳、いや今はもう23歳なのかな。
なんですけどぉ。
それで登録したんですけどぉ。
ちがうのぉ。
実は私、本当は12歳なのー!
私がそんなこんなで、状況の打破を模索していると――。
「ねえ、ちょっといいかな?」
と、うしろから若い女の人の声がかかった。
振り向くと――。
そこには――。
よく知っている顔が3つあった。
3人とも学院の上級生だ。
3人とも、武闘会で激闘を繰り広げた人たちだった。
そびえる巨漢のマウンテン先輩。
蟷螂鎌首流剣技の使い手、マンティス先輩。
「君、見かけた記憶があるけど学院生よね? よかったら私達と組まない? 1人足りなくて困っていたの」
そして、私に声をかけてきたのは――。
銀髪で日焼け肌の美人さん。
格闘の達人、ネスカ・F・エクセラ先輩だった。
マウンテン先輩たちは、以下の話で登場しています。
よかったら確認してみてくださいっ!
マンティス先輩:593 恐怖! 戦慄のカマキリ男!
ネスカ先輩:594 二回戦、ガイドルの激闘!!
マウンテン先輩:595 決勝戦!




