表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

731/1359

731 勉強のクウちゃんさま





「というわけで、タタくん。私に冒険者としての知識を授けてください」

「わかったっす! お世話になっている店長さんの頼みっす! いくらでも勉強の面倒は見させてもらうっす!」


 ちょうどお店に来ていたタタくんに、私は教師役を頼んだ。

 タタくんは二つ返事で引き受けてくれた。


「店長が……。自ら勉強だなんて……」


 一緒にお店にいたヒオリさんが驚愕していたけど、私は気にしない。


 何故ならば!


 私は冒険者に戻るのだ!

 浪漫のため!

 そのためならば、勉強くらいしてみせるのだ!


「店長、私もご一緒させていただいてよろしいでしょうか? 私も冒険者としての知識には興味があって……」

「いいよー」


 エミリーちゃんも一緒に勉強することになった。


「ふふ。お任せくださいっ! このボンバー、クウちゃんさんのためとあらば一肌でも二肌でも――」

「あ、ボンバーはいいです」


 いや、ホントに。


 筋肉のかたまりに居られたら本気で邪魔というか、まったく勉強に集中できなくなること確実だ。

 ボンバーは、ボンバーズのみなさんに引き取ってもらった。

 私は筋肉なんて好きではないのだ!


 タタくんの授業は、とてもとてもわかりやすかった。

 とてとてだ。

 さすがは帝都中央学院の出身。

 優秀だ。

 まあ、実はこのクウちゃんさまも、そこの生徒なのですが。

 つまり、私も優秀。


 勝ったね!


 さらに冒険者の再登録試験は、知ってさえいれば簡単なものだった。

 なんと。

 出される問題は完全に決まっているのだ。

 それだけ覚えておけば合格確実なのだ。

 しかも冒険者にとっては、基本となることばかりなので、冒険者としてちゃんと活動した実績があれば――。

 勉強なんてしなくても余裕で合格らしい。


 楽勝すぎるね!


 あっはっはー!


 …………。

 ……。


 はい。


 なぜ私は、いつも、お約束を大切にしてしまうのでしょうか。

 不思議だね。


「大丈夫だよ、クウちゃん! わたし、ほら、ちゃんとノートにまとめたからこれで復習しよっ!」

「エミリーちゃんは賢い子っすね。あ、店長さんも頑張ったと思うっすよ。途中で意識が飛んでた気もするっすけど」


 意識が飛んで、すみません。

 だって、2時間だよ。

 2時間も休みなしで、ぶっ続けだったんだもの……。


 この後、帰るタタくんにはよくお礼を言った。

 タタくんは明日からまた護衛任務らしい。

 本当にありがとう。

 おかげでエミリーちゃんが参考書を仕上げてくれたので、あとはそれを見て勉強しようと思います。


 この後は、昼寝してリフレッシュを――。


 と思ったんだけど、エミリーちゃんがそのまま仕事に戻ったので、私も仕事をすることにした。

 エミリーちゃんにヒオリさんがお客さんの相手をする裏側で――。

 せっせと一般販売用のアクセサリーを生成する。

 ぬいぐるみだけではなく、アクセサリーも売れ行きは上々だ。

 どれも相場の2倍の価格なのに、いつの間にか、ふわふわ工房にはブランド価値が出ているようだ。

 まあ、うん。

 お姉さまの紹介で学院生の女生徒たちが、皇妃さまの紹介で貴族の御婦人方が来ているのだから当然の流れか。

 はっきり言って、大儲けだった。

 その分、生成が大変だけど。


 ちなみに今、工房の中で椅子に座ってテーブルの上で作業する私のとなりにはフラウがいる。

 フラウはテーブルに顎を乗せて、じっと熱心に私の生成を見ていた。


「クウちゃんのものづくりは、まさに魔法なのである」

「あはは。だねー」

「ここまで完璧に生成できれば、きっとゴーレムは動くのである。妾とエミリーの錬成魔術では、まだここまでは作れないのである」

「あらかじめ人形を作っておいて、そこに手作業で『心核』を埋め込んで、魔力を流すのはどうだった?」


 フラウたちは、あれこれ試行錯誤している。


「そちらは、まるで駄目なのである。なんの反応もないのである。まだ確証にまでは至っていないのであるが、我らの場合、『心核』を中心に据えてゴーレムを生成することは必須なのである」

「そかー」

「なかなかにやり甲斐があるのである」


 フラウとエミリーちゃんとヒオリさんは、仕事も頑張りつつ、ゴーレム製作に情熱を燃やしている。

 私なら、仕事なんて放り出してしまいそうだけど……。

 まあ、うん。

 おかげでうちの工房はやっていけている。


 なにか協力できればいいけど……。


 あ、そうだ。


「フラウ、ちょっとこっちおいでー」

「わかったのである」


 私に手招きされて、フラウがちょこんと膝の上に座った。


「そういえば、こういうのってやってなかったよねー。ほら、シルバーナゲットの上に手のひらを乗せてー」

「なにをするのであるか?」

「いいからいいからー。あ、痛かったら言ってねー」

「……クウちゃん。なにをするのであるか?」


 おっと。

 不審がられてしまった。


「今からフラウの手のひらを通じて、生成をしてみてあげる。私の魔力の流れとか形を感じてみて」

「クウちゃんの魔力をであるか!? 妾は悶絶しそうなのである!」

「あははー。古代竜が何いってんだかー。でも、うん。基本、他人に魔力を流すのは攻撃だからねえ」


 私はたまに、ゼノやリトにやっている。


「できるだけ優しくはするよ。参考になると思うんだけど」

「……や、やるのである」

「大丈夫?」


 すっごい体がカチコチになってしまったけど……。


「気合なのである。クウちゃんの魔法が学べるのであれば、妾の命のひとつやふたつ安いものなのである」


 ふむ。


 こちょこちょ。


「ひゃあ! くすぐったいのである!」

「あははー。リラックスしてくれた方が逆にいいと思うよー」


 ほいっと。


 笑いつつ、シルバーイヤリングの生成を行った。

 できるだけそっと。


「ふわぁ!?」


 フラウが変な声をあげて、一瞬、飛び跳ねた。


「ふあぁぁああっふう!」


 面白い声を聞く内に、完成。


 テーブルにあった銀のナゲットは、見事にイヤリングになりました。


「どうだった?」

「……浮遊体験だったのである。一瞬、果てしなく空の高い場所にいるような気分になったのである。そうした無限の世界の中に四方から光が集まって、目の前にあるこれを形作っていったのである。……妾は今まで、設計図をなぞるように、机の上で描くように錬成魔術を構築していたのであるが……それとはまったくちがっていたのである」


 どうやら参考にはなったようだ。


「奥が深いのである……。まさに無限感覚なのである……」


 考え込んでしまったフラウをなんとなくモニモニしていると、ヒオリさんとエミリーちゃんがやってきた。

 ちょうどお客さんが途切れたところで工房からフラウの奇声が響いて、心配して来たようだ。


 事情を説明すると、2人そろって、私にもやってほしいと言ってきた。

 フラウに確認したところエミリーちゃんでも害はなさそうだったので、お試しで一度ずつやってあげた。

 2人とも、変な声をあげて面白かった。

 2人もフラウと同じように、今までの錬成魔術の感覚とはまったく異なる無限の世界を感じたそうだ。

 まさに、百聞は一見に如かず、だね。

 最初からやってあげればよかったね。


 3人とも体験した結果に夢中になってしまった。

 熱心に語り始める。


 そこにお客さんが来た。


 その日は、私がお店に立つことにした。

 久しぶりの店員は楽しかった。










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] クウちゃんも友達三人組のようにダメなところはあるけど、早い段階でフォローしてくれたり叱ってくれる人がいるから上手くいってるところはあるよね まあ気軽に話しかけたり叱ったりして良い空気をクウ…
[一言] 無限の世界であるのか… 流石はクウちゃんさまである! 面白い小説いつもありがとうございます。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ