730 何故だぁぁぁぁぁぁぁ! 失格のクウちゃんさま
ナオのところに行って、エリカのところに行って、グリフォンくんと白狼くんのところに行って――。
とりあえず、会いたい人たちには会えた。
ユイとセラのところには行かない。
なにしろ今、ユイは聖女として、国を回って人々を救済している。
セラも修行中。
私が行っても邪魔になるだけだ。
料理、食材、生成用の一般的な素材も、大量に集まった。
ウェルダンとウェーバーさんが頑張ってくれたおかげだ。
というわけで。
いよいよ私は、レア素材の採集に乗り出すことにした!
この夏の!
メインテーマだ!
まずは冒険者ギルドにゴー!
冒険者ギルドでは、いつもの個室に通されて、リリアさんが応対してくれた。
さあ、秘境情報を聞こう!
私なんといっても冒険者。
教えてもらえるよね。
「残念だけど、クウちゃんはもう冒険者ではありません」
リリアさんに真顔で言われた。
「え。な、なんで?」
ドッキリ?
うん。
かなり本気でびっくりしたから大成功だよ?
「だってクウちゃん、もう1年以上、何の仕事もしていないでしょ。というか最初に薬草の採取をしたきり、何もしていないよね? 最初にも言ったはずだけど仕事をしなければ失効なの」
確かに、言われてみれば……。
冒険者ギルドにはちょくちょく来ていたけど……。
「でも私……。ダンジョンの素材は売ったよね?」
うん。いっぱい。
「あれは残念だけど、非正規のルートで取ってきた品だから、クウちゃんの実績にはカウントされていません。忘れちゃった?」
言われてみれば、そうだった。
私、ダンジョンには、いつもこっそりと入っていた……。
「でも、べつに冒険者じゃなくても、クウちゃんの場合は特別な許可が出ているから買い取りはさせてもらうし、普通に遊びに来てもいいよ。情報がほしければ提供してあげるし」
「依頼は……?」
「依頼は受けられません。クウちゃんは、もう冒険者ではありません。あ、ついでだし冒険者カードは返却してもらっていいかな?」
「そんなぁぁぁぁぁぁぁ!」
やだー!
私は涙目で喚いた!
「もしかして、また薬草採集がしたくなっちゃったの?」
「いえ、べつに」
「ならいいよね。はい」
リリアさんが手を出してくる。
「ヤーです……」
私は拒否した!
「もう使わないんだし、使えないんだし、ほら、早く」
「私、特別扱いなんだよね……?」
「クウちゃんとしてはね。ただし冒険者としては、冒険者としての規則に従って活動させるようにと、上からハッキリと言われています。だから冒険者としての特別扱いはできません」
「さ……」
「さ?」
「再発行を希望します……」
「そんなことしたって、どうせ仕事しないよね?」
「します」
「するの?」
「はい」
私は力強くうなずいた!
「クウちゃんは商業ギルドの正会員なんだし、そもそも冒険者カードなんていらないと思うけど……」
「いるのー! 冒険者は浪漫なのー! 私は、冒険者なのー!」
「クウちゃんは、普通に工房主だと思うけど……。どこに行っても、立派に通用する肩書きだよ……?」
「ちがうのー! 浪漫なのー!」
私は吠えた。
大いに吠えた。
だって、こちらの世界に来る時から浪漫だったのだ!
冒険者に。
私は。
なる!
冒険者として、この世界を自由に謳歌しよう!
私はそう決めていたのだ。
まあ、うん。
世界はそれなりに自由に謳歌しているけど……。
でも、冒険者であることも重要!
商業ギルドの会員ってだけじゃ、そんなのただの行商人だ。
いや、うん。
行商人が駄目ってわけではないけど。
立派な仕事だと思うけど。
でも私は、冒険者がいいのだ!
「……というわけなので、再発行をよろしくお願いします」
私は深々と頭を下げた。
するとリリアさんが、呆れた声ながらも、
「わかりました」
と、言ってくれた。
「やったー! ありがとう、リリアさん。じゃあ、早速手続きを」
「銀貨1枚かかるけどいい? あと、失効したカードは事前に処分させていただきますので出してください」
私はすぐに支払った!
カードも渡した!
「テスト用紙を持ってくるから、少し待っててね」
「え?」
「制限時間は60分。100点満点で、80点以上で合格です」
「え?」
なに、それ。
「最初に言ったでしょう。再発行は面倒だって。大丈夫よ。護衛やダンジョンでの一般常識ばかりだから」
「えっと。あのぉ」
私、護衛とかやったことないし。
ダンジョンも正規に入ったことないんですけど……。
テストはもちろん不合格だった。
私は、冒険者ではなくなった。
ただのふわふわクウちゃんになってしまった。
何故だぁぁぁぁぁぁぁ!




