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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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729 グリフォンくん




「ぴぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!」

「うわっ! うわああっ!」


 のしかかられて、私は潰れた。

 いや、うん。

 悪気がないどころか完全に親愛なのは、よーくわかる。


 わかるんだけど……。


 去年、私の頭に乗るくらいの小さな子供だったグリフォンくんは、すっかり大きくなっていた。


 というわけで。


 こんにちは、クウちゃんさまです。


 私は今日、久しぶりに、ザニデア山脈に来ていた。

 グリフォンくんに会いに来たのだ。

 グリフォンくんは、お父さん、お母さんと共に岩山で平和に暮らしていた。

 元気そうでよかった。


「ぴぃ! ぴぃぃ!」

「あはは」


 身を起こすと、もふもふの白い羽根の体をこすりつけてくる。

 甘えん坊だ。


「でも、さすがにもう乗せてあげられないねえ」

「ぴぃ……」


 グリフォンくんがうなだれる。

 私の言葉は、それなりに理解できるようだ。


「ぐる。ぐるる。ぐる」


 すると、お父さんグリフォンが低い鳴き声で何かを言った。


「ぴぃぃぃ!」


 グリフォンくんが喜んで、身をかがめた。

 乗れってことかな?


「ぴい!」


 どうやらそうみたいだ。


 でも、いいのかな……、と思ってお父さんとお母さんの方を見たけど、どうやらオーケーのようだった。


 せっかくなので、遠慮なく乗せてもらった。


 私が背中に乗ると――。


「ぴいいいいっ!」


 風を巻いてグリフォンくんは飛び立った。

 いきなりなので驚いた。

 私はちょっと頑張ってつかまって、振り落とされないようにした。


 夏空に飛び立つ。


 これはぁぁぁぁぁぁぁぁ!


 私は正直、よく空の上にはいる。

 なにしろ自力で、いくらでもふわふわできるのだ。


 でも、真っ白なグリフォンくんの背中にまたがって飛び上がった空は、なんというか別世界だった。

 気分はジェットコースター!

 グリフォンくんが元気に全力で飛び回るものだから、私はひーひー叫ぶことになりましたとさ!

 とはいえ、慣れればかなり楽しい。


「ひゃああああ!」

「ぴぃぃぃぃぃ!」


 2人で叫びながら、高速飛行を満喫した。


 遊んでいると、空や岩山にワイバーンくんたちの姿が増えた。

 どうやら知らない内に、ワイバーンくんたちが縄張りにしている地帯に入り込んでしまったようだ。


「ごめんねー」


 私はワイバーンくんたちに手を振って、


「グリフォンくん、ちょっとこのあたりから離れようか。ワイバーンくんの迷惑になるといけないし」

「ぴぃ!」


 グリフォンくんも理解してくれたようだ。

 くるっと旋回する。


 と、そこに下からワイバーンくんが突っ込んできて――。


「ぴぴぃ!」


 グリフォンくんがかろうじて躱したけど、危うく衝突するところだった。

 なんだぁ!?

 と、私は臨戦態勢を取りかけたけど――。

 見れば、相手も子供だった。

 グリフォンくんと同年代くらいの、小さなワイバーンだ。

 友達……なのかな?

 通り過ぎたワイバーンくんが戻ってきて――。

 グリフォンくんの横に並んだ。


「きゅるる!」

「ぴー! ぴっぴ!」

「きゅるきゅる!!」

「ぴぴひ!」


 お互いに言い合っている。

 口論のようだ。


 縄張りに入り込んだことを怒っているのだろうか。

 だとすれば、私たちも悪かった。


 私が謝ろうとすると、ワイバーンくんと視線があった。


「きゅ! きゅ! きゅ!」


 ふむ。


 なにやら私に訴え始めた。


 するとグリフォンくんが、


「ぴぴー!」


 とワイバーンくんに怒りの声をあげて――。


 うわおっと!


 グリフォンくんとワイバーンくんの空中でのぶつかり合いが始まった!


 まあ、うん。


 喧嘩はさせられない。


 私はグリフォンくんから降りると――。


「ぴいいぃ!?」


 グリフォンくんが驚いた声をあげて、


「きゅるるー!」


 ワイバーンくんがなんか歓喜したけど――。


「はいはい、そこまでー」


 私は2人の翼をつかんで、いくらか離れたワイバーンくんたちの住処ではなさそうな岩山の上に降ろした。


 すると今度は私に背中を向け合うようにして、ぶつかりあって、なんか可愛らしく喧嘩を始める。


「あ。もしかして、ワイバーンくんも私に乗って欲しいの?」

「きゅー!」


 どうやら正解のようだ。


「ぴぴ! ぴ!」


 グリフォンくんが怒りの声をあげる。

 あー、はいはい。

 嫉妬しないのー。

 グリフォンくんをなだめつつ、ワイバーンくんも撫でてあげた。


「乗るのはごめんねー。今日は、グリフォンくんだから」

「きゅ……」

「ぴぴぴーっ!」


 こらグリフォンくんは勝ち誇らないの。

 もう乗ってあげないよ。


 岩山の上でそんなことをしていると、いつの間にか、まわりにワイバーンくんたちが集まっていた。

 グリフォンのお父さんとお母さんも様子を見に来た。

 喧嘩にはなっていない。

 なにしろ、ザニデアの支配者たる竜の人たちまで竜の姿で来ていた。

 竜の人たちは竜の姿でも言葉をしゃべる。

 見回りの途中で私を見かけて、挨拶に来たそうだ。


 あと、わらわらと、大きなトカゲ。

 バジリスクくんたちも岩山を上って集まってきた。


 みんな、いい子だ。


 とりあえず近づいてきた子は、みんな、一度ずつ撫でてあげた。

 なぜか竜の人たちまで大きな竜の姿で近づいてきたので、まあ、いいか、と頭を撫でてあげた。


 そんなこんなで。

 あっという間に日は暮れた。


 夜は、グリフォンくんやワイバーンくんたちがいるのとは、また別の岩山の上でのんびりと過ごした。

 大きな一枚の岩の上に、足を伸ばして座った。


 目の前には、広大なザニデアの山々。

 背後には、森。

 頭上には、いっぱいの星空。


 来てくれるかなー。


 と思って静かに待っていると――。


 ぐるるる。


 背後から小さな唸り声が聞こえて、大きな白い狼くんが来てくれた。

 私のとなりにしゃがみこむ。


「久しぶり。元気だった?」


 昔のように、背中を預けさせてもらった。

 昔――。

 と言っても、まだ去年のことだけど。


 白狼くんはクールなので、何も話しかけて来ない。


 白狼くんにもたれて、私はのんびりと、ザニデアの夜の景色を眺めた。

 お腹が空いたのでトルティーヤをアイテム欄から取り出す。


「いる? 美味しいよ」


 差し出すと、白狼くんはぺろりと食べた。

 大丈夫そうなので、10個のトルティーヤを差し上げた。

 私もひとつをいただく。


 食べつつ、私の最近のことを話してあげた。

 学校のこと。

 仕事のこと。

 旅行のこと。

 白狼くんは、返事もしてくれなかったけど――。

 きっと、楽しんでくれているよね。


 こうして私は――。

 久しぶりの1日を過ごした。








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― 新着の感想 ―
まさに精霊っぽいな。精霊だけど
[一言] クウちゃん夏休みを満喫していますねいざ新学期が始まった時の反動が今から楽しみです(笑)
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