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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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727 ナオとの夕食




「クウ、獣王国は8月の最終日に新生を宣言することに決めた」

「え。そんなに早く?」

「すでに旧領の奪還は、ほぼ完了した。国としてはまだ空っぽだけど、実よりも、まずは名が大切と判断」

「そかー」


 すごいね。

 あと一ヶ月もないのに。


「クウも新生の式典には、ぜひ来てほしい」

「うん。いくいくー。8月のおわりなら、まだ夏休みだしねー」


 私は今、ナオと夕食を共に取っていた。

 夕食の内容は、水、堅いパン、焼いた肉、野菜のスープ、そのままの果実。

 ほぼ塩味。

 実に素朴でシンプルだった。

 これは、うん。

 絶品レストランをやっていた、おじさんと息子さんの活躍に期待だ。


 まだ3歳くらいのはずの小さなクナも同じものを食べている。

 獣人はそれで平気のようだ。


「ナオは本気で大忙しだよねー。体は平気?」

「平気。私は丈夫」

「領土の奪還がおわって、次は何をするの?」


 そのままトリスティン領に侵攻するなら止めるけど……。

 私は心配しつつたずねたけど、ナオの返答は侵攻ではなかった。

 大急ぎで王都の整地をするとのことだった。


「……間に合うの? 新生宣言までに」

「気合で間に合わせる」


 ふむ。


「手伝ってあげよっか? 私の魔法なら効率的だし」


 ヒオリさんから土の魔術については、それなりに学んでいる。

 本格的な整地は、やったことがないけど……。

 たぶん、余裕だろう。


「いいの?」

「いいよー。このタイミングで来たのは、まさに縁だよね」

「正直、ありがたい。ありがとう」

「いいよいいよー。それで、王都の整地って具体的にはどうするの?」

「昔の王都を再現したいと思っている」

「それなら、獣王の館も作ってあげようか? たしか、鍛錬場みたいな庭のある大きな武家屋敷だったよね?」


 以前に竜の里で話を聞いたことがある。

 まだナオがカメだった頃だ。


「うん。いいの?」

「武家屋敷なら、生成魔法にデフォルトであるしねー。ただし、木材とかの素材が大量に必要になるけど」

「それは準備する。ありがとう」

「ふふー。私の貴重な夏休み、10日くらいは特別サービスでナオに貸してあげるからさ。理想の王都を再現してみなよ」


 自分で言うのもなんだけど、私が10日を本気でかければ、かなりの整地と建物の生成ができるはずだ。

 王都全体は無理でも中心部の輪郭は出来上がるだろう。


「レアな素材集めはいいの?」

「いいよー。新獣王国が立派になったら、お礼してもらう予定だから」

「わかった。約束する」


 安請け合いというわけではない。

 ナオの力にはなりたかった。

 前世で親友だったから、というだけではない。

 ナオには、死んでいった――、殺されていった人たちの――、ニナさんたちの想いを繋げていってほしい。


 ナオは、素材の準備に少し時間がほしいと言った。

 なので作業は、8月13日から始める約束をした。

 その頃なら私のアイテム欄にも、ウェーバーさんが集めてくれた大量の素材が並んでいるだろう。


「作業は、新獣王国の幹部候補が一緒でもいい? 私1人では正直、必要になる事項を覚えきれない」

「うん。いいよー」

「クウのことは、どう言えばいい?」

「古い友人のエルフとかは?」

「エルフでいいの……? クウ、昔からエルフは嫌いだったよね?」

「いいよー。べつにー」


 前世のVRMMO時代……。

 私の種族である精霊族は、その能力的にエルフの下位互換と言われて、けっこうバカにされていた。

 そのこともあって、私はエルフがあまり好きではないのだった。

 まあ、でも。

 それは前世の話だ。

 今はもう、大して気にしていない。

 ハイエルフのヒオリさんとも仲良くやっているし。


 話に一段落がついたところで、私はあらためてクナに目を向けた。


 クナは熱心に肉を食べている。

 私が見ていると、視線が合う。


「……おいしいよ? クウちゃんさまはたべないの?」

「あはは。クウでいいよー」


 女王様の「ちゃんさま」付けはマズイだろう。

 でもクナには困った顔をされた。


 ナオが言った。


「クウは精霊様。クナより、ずっと偉い。無礼は許されない。クナには、本当のことを伝えさせてほしい」

「了解。いいよー。わかった」


 私は気を取り直して、クナに笑いかけた。


「私はあんまり食べなくても平気なんだよ。でもクナは、大きくならないといけないから、いっぱい食べてね」

「うんっ!」


 と、クナが笑顔で返事をすると、ナオが「はい」と言った。


「はいっ!」


 クナは言い直した。

 素直な子だ。


 食事の後は、一緒にお風呂に入った。

 私がクナを洗ってあげた。

 銀色でもふもふな尻尾も、もちろん、洗ってあげた。

 その後は少しだけ遊んだ。

 少しだけなのは、クナが寝てしまったからだ。

 クナが布団に入ったのを見届けてから、私は家に帰った。

 ナオはこれから会議らしい。

 大変だ。


 家に帰ると、フラウとヒオリさんが待っていてくれた。

 二階に案内される。


 どーん!


 と、ホールに山ほど料理があって驚いた。


 ウェルダン、頑張ってるね!


 さらにはウェーバーさんからも連絡が来ていて、一度目の引取をお願いしたいとのことだった。


 あと、武具の発注が来ていた。

 いつものボンバーズからだ。

 なんと、ボンバーズ見習いのマンティス選手もうちの工房に来たらしい。

 マンティス選手は武闘会でセラを打ち破った、カマキリ戦法の人だ。

 ダンジョンで愛用の鎌が折れてしまったので、とにかく折れにくい丈夫な鎌を所望とのことだった。

 ボンバーズの発注はさくっと済ませた。

 鎌には、大サービスで耐久力向上の付与をつけてあげた。


「店長、あとなのですが……。実は、夏季限定の精霊ちゃんぬいぐるみの在庫が切れてしまいそうです」

「ホントに? かなり作ったけど」

「はい。某も今日はお店にいましたが、大人気でした」

「そかー」


 早速、追加の製作を始めた。


「クウちゃん、妾の話も聞いてほしいのである」

「うん。いいよー」


 作りつつ、フラウからゴーレム製作についての話を聞いた。

 苦戦しているものの、手応えはあるようだ。

 コツと呼べるほど大したものではないけど、私がゴーレムを作る時に描く感覚みたいなものは丁寧に教えた。


 結局、そんなこんなで、ほぼ徹夜してしまった。

 私も大変だった。

 疲れた。

 朝方、私は倒れるように寝た。










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