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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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717 クウちゃんさま、呆れる




 というわけで、私たちは騎士団の訓練場に向かったのだけど……。


 現れたのは……。


「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! これは姫様ぁぁぁぁぁ! ついにこの私と筋肉を鍛える気になりましたかぁぁぁぁぁ! さあ、参りましょう! マッスル・パラダイスの世界へ! ぐはぁぁぁ!」


 短パン1枚で迫ってくるから、思わず蹴り飛ばしてしまった……。


「さ、エリカ。用も済んだし帰るよ」


 うん。

 はい。

 ボンバーみたいなヤツだった……。


 いや……。


 ボンバーはタキシード姿。

 今のヤツは、まさかの短パン1枚姿。

 ボンバー、ごめん。

 キミの方が遥かにマシだったよ……。

 まあ、練習がおわって、ちょうど着替えていたところだったという言い訳はあるみたいだけど……。



 私たちは馬車に戻った。


「エリカ」

「な、なんですの、クウ……。本気で声も顔も怖いんですけど……」

「残念ですが、ジルドリアは滅亡です。お疲れ様でした」


 私はキチンとお辞儀した。


「どうしてですのぉ!」

「夫候補、まともなヤツがいねーじゃねーか! どうなってんだぁぁぁ! 説明してみろやぁぁぁぁぁ!」

「説明しろと言われても……。他に候補もいないので……」

「エリカ。ハードルを下げよ? 家柄か年齢か、どっちでもいいから」

「しかし、それでは王家しての威厳が……」

「ね?」

「は、はい……」


 というわけで。

 エリカの婿探しは白紙に戻した。


「ふう。もうなんか疲れたよー。どこかでランチしよー」

「では、近くにホテルがありますので、そこで個室でも借りて――」

「屋台」

「え?」

「今日は広場の屋台を食べに行きます」

「このわたくしがですかっ!?」

「そうです」


 ただ、このままでは無理だ。

 なにしろ前後に騎士がいて、馬車も超豪華。

 まったくこれっぽちも、お忍びにならない。

 というわけで、ハースティオさんにお願いして、一旦、王城に戻った。


 エリカを地味な服に着替えさせる。

 問答無用だ。


 もうね。


 私は理解したのです。


 エリカにお勉強させてあげられるのは、この私しかいないと。


「よし。いいねっ! さすがはエリカ、お嬢様の雰囲気だけはどうにも消せないけどこれなら普通のお嬢様だ」


 服装は、ワンピース。

 髪はまとめて、ツバの広い帽子で、どうにかごまかした。

 いかにも、夏のお嬢さんって感じに仕上がった。

 当然、キラキラの装飾品はすべて外した。

 念の為、私の護身用の指輪だけは、つけてもらうけど。


「はぁ、もう……。好きにしてくださいませ。クウにはかないませんわ」

「じゃ、行こー」


 姿を消して、私たちは空に飛んだ。

 中央広場に降りる。

 物陰で透明化を解除して、さあ、散策だー!


 おー!


 時刻は、すでに午後1時。


 お腹が空いた。


 快晴とあって、中央広場はたくさんの人で賑わっている。


 そこに、若い男の金切り声が聞こえた。


「このバーガーを売ったのはぁぁぁぁぁ!

 誰だぁぁぁぁぁぁぁ!」


 ふむ。


 またか。


 とりあえず、エリカを連れて見に行くと――。

 10代後半くらいの若い貴族の男女がイキっていた。


「申し訳ありません……。それは私が売ったものですが……。なにかありましたでしょうか……」


 店先にいた娘さんを横に退けて屋台から出てきたのは、40代くらいのエプロンを付けた小太りのおじさんだった。

 娘さんにもおじさんにも、犬系の耳がある。

 獣人だ。


「なにかではない! 見ろ! 貴様が売ったバーガーのケチャップがこぼれて彼女の服が汚れしまったではないか!」

「ここよ、ここ! ほんのちょっぴりだけど、ついちゃったでしょ! どうしてくれるのよ!」

「そ、そう言われましても……」

「ふん。おい、当然、弁償してくれるんだろうなぁ?」

「おいくらで……」

「金貨10枚で勘弁してやる」

「そんなご無体なっ! そんな大金っ!」


 おじさんが悲鳴をあげる。

 それを2人のイキリ貴族が完全に見下した顔で見ている。


「この服はね、オーダーメイドなの。金貨10枚でも勘弁してあげているのよ」

「無理ですっ!」

「で、ならどうする気だ? クソ獣人」

「それは……」

「まったく。エリカ王女にも困ったものだ。こんな無能でどうしようもない、臭いだけの連中にまで市民権を与えるとは。おまえ、元は奴隷だったんだろ? だったら奴隷らしく、まずは這いつくばれよ」


 イキリ貴族が、おじさんに土下座を強要する。


「い、イヤです……。そもそも私は、昔からここの市民です……」

「なんだと!」

「ひぃぃぃぃぃぃぃ!」


 まったく、呆れる。


 ジルドリアでは、獣人も普通に住んでいる。

 奴隷になっているのは犯罪者か、他国で買われたか治外法権な場所で捕らえられてしまった不幸な人たちだけだ。

 しかも後者については、イキリ貴族も知ってはいる様子だったけど、すでにエリカが解放した。

 トリスティンのように、獣人イコール奴隷という国ではないのだ。


「……ねえ、エリカ。ジルドリア、もうおわりだよね」

「そ、そんなことは……」

「さっきから、まともな貴族が1人もいないんだけど。あの2人、トリスティン送りにするからね」


「ねえ、アーサークン。これはオシオキが必要じゃない?」

「そうだね、ミリィ。少し教育してやろう。――おい」


 呼ばれて、ボディガードらしき男が4人も前に出てきた。


 さて。


 これ以上は駄目だ。

 許せない。


 と、その時だった。


「バカ者共がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 突然、走り込んできた筋肉のかたまりが、4人のボディーガードをタックルで吹き飛ばした!


「貴様ら! なにをしているかぁ! 王国貴族として、貴様らの行いは決して許せるものではないぞぉ!」


 それは――。


 さっき、私が蹴飛ばした、エリカの元夫候補の筋肉青年だった。


 今はちゃんと立派な服を着ている。






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お?流れ変わったな
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