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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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71 精霊界のお話を聞いたり



「ゼノ、こちらに来ているなら、どうして来てくれなかったのであるか?」


 フラウが不満げに言う。


「だってボク、ここがどこにあるのか未だに知らないよ。ここに住んでいた時、外に出たこともなかったしね」

「……言われてみれば、そうだったのである」


「ねえ、精霊がこっちに来るのは禁止されているの?」


 他にはいないよね。


「他の大精霊がうるさくてね。

 バツを与えるとか偉そうに言ってくるんだよ。

 お姫さま、物質界に来ている仲間として、あいつらに何か言ってやってよ」


「ヤダよ。めんどくさい。私、こっちでお店やってるし、精霊界のことに関わっている余裕なんてないよ」

「お店!? 物質界で!?」

「うん」

「ボクだって見ているだけなのに! いいのそんなことしてっ!?」

「なんで?」

「……物質界に精霊が関わり過ぎたら世界が滅びるよね?」

「そんなことはないと思うけど」

「そうなの?」

「だって私、アシス様に導かれてここに来てるんだよ? その時、好きにしていいって言われているし」

「アシス様って創造神の?」

「うん。ゼノたちの事情までは知らないけどね」


 私については問題ないはずだ。


「……関わっていいなら、さっきの男に手を出したかったよ」


 残念そうにゼノが肩を落とす。


「さっきの人、闇の力で変貌したんだよね? ゼノの力じゃないの?」

「ちがうよ。あれは外の世界から侵食してきた邪悪な力。手を出していいなら染め直したかった」

「染め直すとどうなるの?」


「――ボクなら、もっと綺麗な動く屍にできるよ」


 さすがは闇の大精霊。

 微笑む美貌には、思わず息を飲むほどの凄惨さと妖艶さがあった。


「こわ。ゼノこわ」

「その怖いボクを軽くあしらったのがキミだけどね、クウ」

「あはは」

「まさか眠らされてここに連れてこられるなんて。嬉しい反面、怖いよね」


「で、あるな」


 ゼノの言葉にフラウが深くうなずく。


「そ、そういえばっ! 精霊界と物質界って簡単に行き来できるの?」


 このままではこの可愛い私がバケモノ扱いされてしまいそうだったので、私はごまかすようにたずねた。


「簡単かどうかは知らないけど、ゲートをくぐればすぐだね」

「ゲートってどこにあるの?」

「森の中の泉なら、だいたいゲートになってると思うけど……。クウは行き来したことがないの?」

「ないんだよねー。私、最初に出てきてから、ずっとこっちにいるし」

「だから今まで存在が知られていなかったのかな?」


 存在の認知については、たぶん、まだこっちの世界に来て1ヶ月くらいしか過ぎていないからだね、うん。

 ただ、それを言うとややこしくなりそうなので黙っておいた。


「クウは話がわかりそうだし、一度、向こうに行ってさ、女王らしく武力で精霊界を平定してくれると嬉しいな」

「武力なの?」

「属性の違う精霊を束ねるのなんて、武力以外では無理だよね。先代女王はそれはもう苛烈で誰も逆らえなかったって言うよ」

「……そういうものなんだ」


 武力闘争。

 それはそれで楽しそうだけど、今すぐは無理だ。

 なにしろお店があるし。


 ていうかよく考えたら、のんびり話している場合ではなかった。


 ヒオリさんとおじさんがお店で待っているかも知れない。

 かも知れないというか、待っているよね、うん。


「ごめん、帰るね」


 私は椅子から身を起こした。


「どうしたのであるか?」

「実は帝都にアンデッドが湧いてね。それは止めたんだけど、まだいろいろと後始末があるんだよ」

「で、あるか。クウちゃんも大変であるな」


「ゼノは、しばらくここにいるの?」

「うーん。どうしようかな」

「いるといいのである! いてほしいのである! 今までの話をするのである!」

「ならいようかな」


「私もまた来るから、精霊界の詳しい話を聞かせてね」

「ボク、クウのお店を見てみたいんだけど」

「いいよ。来て来てー」


 ゼノとフラウにチラシをあげた。


「フラウ、深夜にいきなりごめんね。ナオにもよろしくお願い」

「わかったのである」


「帰還」


 私は帝国に戻った。

 願いの泉の上に出て、すぐに銀魔法で飛行。

 同時に帝都全域に敵感知。

 反応なし。

 よかった。

 アンデッドのさらなる発生はしていないようだ。


 我が家に戻る。

 一階のお店でヒオリさんに合流する。

 おじさんはいなかった。

 おじさんは十分にヒオリさんと話した後、奥さんが心配するからと1人で家に帰ってしまったそうだ。

 仲良し夫婦だし仕方がないか。

 脅威は去っているし、きっと無事に帰れただろう。


 ヒオリさんとテーブルを挟んで座った。

 ふう。

 一息をつく。


「それではさっそくですが事件と被害者の生活の詳細な報告を――」

「ごめん、やっぱり明日でいい?」


 ダメだ。

 落ち着いたら、急に凄まじい眠気が襲ってきた。

 今夜も私、頑張りすぎた。


 ああ、意識が。

 一気に遠のく。


「店長……? 店長!」

「ごめん、明日……」


 私はテーブルに伏せ、そのまま寝た。



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