704 美食対決! クウのはトマトだ!
さあ!
というわけで!
急遽、準備を整えました!
時刻は正午過ぎ!
中央広場の姫様ロール店前の簡易ステージで、今、第一回料理の賢人選手権大会が開かれようとしている!
観客もたくさん、集まってくれている!
私はマイクを握り、叫んだ。
「皆様、大変お待たせしました!
これより第一回、料理の賢人選手権大会を開催させていただきます!
指定された食材を使って、制限時間内に料理を作る!
美味しかった方が勝ち!
司会は、このわたくし、早食い選手権でもおなじみ――。
クウちゃんさまで、お送りさせていただきます!
では、選手入場の前に!
まずは審査員の皆様の紹介からさせていただきます!」
私はステージ脇の審査員席に目を向けた。
「まず1人目は、最近注目の新興商会! オダウェル商会の代表! この私を誰だと思っているが代名詞! ウェルダン・ナマニエルぅぅぅぅ!」
「うおっほん。私がウェルダン・ナマニエルである。本日、急遽、この大会を開催するに当たって、必要な食材を準備させていただいた者である。このように我が商会では迅速丁寧、そして確実新鮮をモットーに、あらゆる食材を扱って、帝都の台所を豊かにしていく――」
「ありがとうございましたぁぁぁ!」
ウェルダンの語りは、いつも長い。
切り上げさせてもらった。
ただ、食材の準備は本当に助かりました。
ありがとう!
「次に紹介するのは、帝国が誇る大商会の頭取! ゾル・ウェーバー!」
「本日はクウちゃんが主催するこのように立派な大会に審査員として呼んでいただき誠に身の引き締まる思いです。料理対決ということで、しっかりと真剣に味あわせていただきたいと思います」
「ありがとうございましたぁぁぁ!」
さすがはウェーバーさん。
短く切り上げてくれた。
あと、いきなり誘ったのに来てくれてありがとう。
まあ、正確に言えば、ウェーバーさんの方から駆けて来たんだけど。
「さあ、そして最後の1人は! なんと! この大会のために、わざわざお越しくださいました、帝国の麗しき花! 第一皇女! アリーシャ・エルド・グレイア・バスティール殿下です!」
わー!
とはならなかった。
おい、本物の第一皇女様なのか……?
と、みんな戸惑っている。
「皆様、ごきげんよう。アリーシャ・エルド・グレイア・バスティールです。今日は共に楽しみましょう」
アリーシャお姉さまが軽く挨拶して、どうやら信じたようだ。
挨拶の後では、大きな歓声がおきた。
「では、審査員の皆様の紹介も済んだところで!
これより!
料理の賢人の称号を賭けて、料理対決に挑む!
2人の挑戦者を紹介させていただきます!
入場、どうぞ!」
わー!
とはならなかったけど、まばらな拍手の中、トルイドさんとハラデル氏がステージに上がった。
西のサンネイラ。
東のハラヘール。
帝国の両台所からやってきた、次期領主と現領主。
まさに堂々のぶつかり合いだ。
「食の都ハラヘールの現当主、ワシこそが食の求道者、タベルーノ・フォン・ハラデルである! このワシが70年をかけて磨いた料理の腕! 今回は特別に帝都の市民にご披露しよう! 刮目して見よ! 食の美! 食の極! 我が真髄にいくらでも涎を流すが良いぞ!」
ぱちぱちぱち。
「えー。食の都サンネイラから来ました。トルイドと申します。今日は、とにかく楽しく食べてもらえる料理で、審査員の方を笑顔にしたいと思います。どうぞよろしくお願いします」
ぱちぱちぱち。
2人の挨拶がおわって、私はテーマとなる食材を発表する。
すでにステージには、赤い布で仰々しく隠された、箱いっぱいの新鮮なトマトが置かれている。
「今回のテーマはぁぁぁ! これでありまぁぁぁす!」
私は勢いよく赤い布を取った!
「トマトぉぉぉぉぉ!」
さあ、試合開始だ。
ステージには、トマトの他にもたくさんの食材が用意されている。
両者のためのキッチンも、それぞれに置いた。
魔道コンロ、魔道オーブンも設置!
氷も準備した!
なんでも、とはいかないけど……。
いろいろ作れるはずっ!
すべてオダウェル商会が超特急で用意してくれた。
さすがは食の総合商社!
ありがとうっ!
制限時間は30分!
短いけど、これ以上長いと、たぶん観客がダレる。
2人には頑張ってもらおう。




