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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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690 閑話・皇帝ハイセルは旅の話を聞く 4




「……それはつまり、布教したということか?」

「いえ、お父様。布教というわけではありませんが……。でも、みんな、しっかりと祈りの言葉を覚えてくれました」


 旅の話はついに、南の島へと移った。

 いきなりの大魔法にも驚いたが、次にセラフィーヌが笑顔で語った話は、さらに俺を驚かせた。

 なんと娘達は、現地の島民――エルフとリザードマンに、精霊神教の儀式を教えたというのだ。

 布教ではないとセラフィーヌは言うが――。

 まさに布教だろう。


 かつて、人間は愚かにも、自らの分を超えて――。

 世界そのものを支配しようとした――。

 故に精霊は人間を見捨て、人間の前から姿を消した――。

 精霊に許しを請うために祈る――。


 それを教えの主とした精霊神教は、この俺、皇帝ハイセルが治めるバスティール帝国でも広く信じられている。

 帝国での精霊神教は、正式には帝国精霊神教といい、皇帝であるこの俺が総大司教という立場にある。

 もっとも、それは肩書きだけのもので、実際には何もしていないが。

 現在、帝国と精霊神教との関係は良好だ。

 帝国精霊神教の実質的なトップであるフォーン大司教は温厚であり、政治に口を挟んでくることもない。

 俺個人としても、昨年の演説会でクウがいたずら半分で行った派手な光の祝福を受けたことによって――。

 精霊に認められた正統なる皇帝として、信者からの支持も得ている。

 聖女ユイリアとの関係も、クウの仲介で完全に改善した。

 聖女ユイリアは、今では気軽に帝国に遊びにくるほどだ。

 しかも、この夏にはセラフィーヌを正式に弟子とし、彼女が体系化した医学知識の伝授を行う。

 帝国が精霊神教との関係に悩まされることは、当分、ないだろう。


 ともかく――。


 遊び半分でお気軽に扱っていい分野でない。

 下手をすれば大火傷だ。


「本当におまえたちは、何をやっているのか」

「あの、お父様。問題がありましたか?」


 つい失笑した俺を見て、セラフィーヌが心配そうな顔をする。


「いや、気にするな」

「でも……」

「あのお、陛下」


 ここでおそるおそるクウが手を上げた。


「なんだ? どうした、クウ」

「私やゼノ的には、なんの問題もないので、大丈夫ですよ」

「そうだな」


 精霊第一位と闇の大精霊が言うのならば、問題はないのだろう。

 そもそも遠く離れた南洋の話だ。

 気にしても仕方がない。


 俺はセラフィーヌに話の続きを促した。


「ともかく、わたくしは頑張ったのです! クウちゃんの巫女として、クウちゃんの伝道師として!」

「……セラはねぇ、すごかったよねえ」

「はいっ! ありがとうございます、クウちゃん!」

「何か別のこともしたのか?」


 俺がたずねると――。

 今度はクウのヤツが、なぜか、ははは、と力なく笑った。


「わたくし、リザードマンの方々に、クウちゃんの素晴らしさを伝道することに成功したのですっ! リザードマンの方々は、真言たる、クウちゃんだけにくう、だけではなく――。クウちゃんを称える賛美の儀式さえも習得し――。クウちゃんの威光と力は増すばかりなのです!」

「あの、セラ……。私、神様じゃないから、信仰されても賛美されても力が強くなることはないからね?」

「はいっ! 大丈夫ですよ、クウちゃんっ!」


 何が大丈夫なのかはともかく。

 クウの意向を無視して、セラフィーヌがクウを祭り上げたようだ。


 アイネーシアが愉しげに笑う。


「ふふ。それはどんな儀式なのかしら。気になるわね」

「お母様、ご安心くださいっ! それについては、夏のおわりに、しっかりとお見せ出来ると思いますっ!」


 どういうことかと思えば――。

 その時の様子を、マリエ・フォン・ハロが映像として記録したのだそうだ。

 夏休みのおわりに、旅の仲間たちが帝都に揃ったところで――。

 みんなで鑑賞しようという話になっているようだった。


「お父様もお母様も、お姉様も! お兄様やナルタスやお祖父様にメイヴィスさんたちも! みんなで見ましょう!」

「ふむ。それは楽しみだ」

「そうですね」


 俺とアイネーシアは視線を交わして笑いあった。


「あの、セラ……」


 だがクウには、どうやら懸念があるようだ。


「はいっ! クウちゃんっ!」

「みんなで見るの?」

「はいっ!」

「いいの?」

「もちろんですっ! みんなで見たほうが楽しいですよねっ!」

「まあ、うん……。そうだね……」

「なんだ、クウ。俺達に見せられないものでもあるのか?」

「あ、いえ……。セラがいいならいいですけど……」

「なら決まりだ。義父上も呼んでおこう。バルターにアルビオ、関わりのある者たちも呼んで構わないな?」

「セラがいいなら……。私はいいですけど……」

「はいっ! もちろん大丈夫ですっ!」


 あるいは映像の中に、クウの様子がおかしな理由が隠されているかも知れない。

 クウの様子から見るに、その可能性は十分にありそうだ。

 当日には魔術師団長や騎士団長も呼んで――。

 目を凝らして、分析することにしよう。


 いっそ事前に、マリエ・フォン・ハロのところにあるという水晶球を密かに借り受けてもいいが――。

 それは、クウだけではなく、旅に関わった者達――。

 特に、賢者ヒオリ、闇の大精霊ゼノリナータ、古代竜フラウニールからの印象を悪くする愚行か。

 やめておこう。


「さあ! というわけで! 本当に、すっごく、いろいろなことがあったわたくしたちの旅でしたが――」


 ここでセラフィーヌが、持参してきた大きな箱をテーブルに置いた。

 蓋を開けると、中には、たくさんの土産物が綺麗に並べられていた。


「じゃーん! お土産でーっす!」







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