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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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680 3日目の朝





 ウニが迫ってきた。


 巨大なウニが、私の上にのしかかってくる。


 抵抗は、できない。


 この最強無敵の私ともあろうものが、ウニの前では、身動きできないただのワカメか昆布だった。


 ああ。


 ウニが……。


 下部についた丸い口を開いて、その白い歯で……。


 私を削り取っていく……。


 …………。

 ……。


 目覚めた。


 おはようございます、クウちゃんさまです。


 とんでもない夢でした。


 冷や汗をかいています。


 気持ちを切り替えて身支度を整え、1階に降りると……。

 すでにみんな普通に起きていた。

 タムとリリシーダさんもいるね。

 2人はキッチンにいて、マリエから料理の指導を受けている。

 匂いからして海鮮スープかな。

 楽しみだ。


 キッチンにはセラもいた。

 セラの口からは、また勝負なんて言葉が聞こえている。

 どうやらマリエに料理対決を挑むようだ。

 無謀な。

 まあ、でも、せっかくだし、セラの料理も楽しみにさせてもらおう。


 ヒオリさんとフラウとエミリーちゃんは朝から外に出て、砂で人形を作っていた。

 ゴーレム研究のようだ。


 私は、みんなに朝の挨拶をした後、リビングの窓際に寝転んだ。

 いっぱいの朝日の中だ。

 まるで布団のように柔らかくて暖かくて、眠くなる。


「クウ、アンタ、起きたばかりで何寝てんのよ」


 アンジェの呆れた声が、まぶたの向こう側から聞こえるねえ。


「クウ、一緒に散歩でもどうだい?」


 スオナに誘われて、少し歩くことにした。

 2人で砂浜に出る。


「そういえば、ゼノさんがなかなか帰ってこないね。どうしたんだろう。クウには把握できているのかい?」

「え。あ、うん」


 ヤバい。

 ゼノのことを、またも忘れていた。


「ならいいか。遺跡、深いのかな」

「あー、そうだねー。ゼノは遺跡の調査中かぁ」


 気にはなるけど、まあ、お任せかな。

 今日はエルフのところに行かないといけない。

 ゼノなら1人でも平気だろうし。


 そう。


 この時、この私の……。

 この安穏とした判断が……。

 後に、凄惨極まる事件へとつながっていくことなど……。

 神ならぬ身の私は、想像もしていなかったのだ……。


 そう――。


 それこそがウニ……。


 ウニ連続殺人……。


 被害者は私……。


 というシリアスな世界線は……。

 幸いにも私にはなかった。


 セラとマリエの手料理が完成する頃、ゼノは普通に帰ってきた。


 私はリビングでゼノを出迎えた。


「おかえりー、ゼノ。遺跡はどうだった? 心配してたよー」


 スオナが。


 嘘は言っていない!


「幸いにも、地下もダンジョン化はしていなかったね。かなり深かったけど、墓地として作られた施設みたいでアンデッドの巣窟だった」

「お宝はあった?」

「そんなの興味ないし、いちいち調べていないよ」

「そかー」


 古代のお墓なら、いろいろありそうだね……。

 帰る前に、お宝だけ回収してこようかな……。


「多分、大昔、このあたりの海を治めていた王も眠っているんだろうね。下層は罠だらけだったよ。表層の魔素溜まりも、アレ、わざとだね。地下墳墓を守るために設置したんだと思う。とりあえず、アンデッドが上に来ないようにはしておいたから、お宝目当てで忍び込む、礼儀知らずのバカがバカなことをしない限り、問題は起きないと思うよ」

「そ、そかー」

「なに、その微妙な生返事? まさかクウ、死者の眠りを妨げるバカな行為なんて考えていないよね?」

「ま、まっさかー! この私が、そんなことするわけないでしょー!」

「ならいいけど」


 はい。

 そういうことになりました。


「というか、悪魔連中は漁っていなかったのかな?」

「みたいだね。まずは、魔素溜まりで何かしようとしていたんでしょ。たとえば仲間を呼び出すとか」

「あー、そうかもだねー。トリスティンでは、悪魔同士で連携して組織的に行動していたみたいだし」

「なんにしても、手遅れにならなくてよかったよ。偶然とはいえ――。いや、クウはだからこそ南の島を選んだの?」

「完全に偶然だよー。正直、悪魔関連は、本気で全部、偶然」


 一瞬、その通り!と言いかけたけど。

 ぐっと我慢した私は偉い子だ。


「世界を守れという女神アシスシェーラの意思なのかも知れないね」

「かもだねー」

「また気楽に」


 あっはっはー。


 だって、わからないしね。


 笑っていると、朝食が出来たみたいだ。

 マリエが声をかけてきた。


 フローリングの床に料理を並べて、みんなで囲んで食べる。

 品目は、パンに水に果実。

 マリエが作った美味しそうな海鮮スープ。


 そしてセラが作った、なんか、ごっちゃりと混ぜて炒めたもの。

 気のせいか、やけに黒っぽい。


「ねえ、セラ。この料理でマリエのスープに勝負するの?」


 私は一応、聞いてみた。


「クウちゃん」

「ん?」

「わたくし、言ってもいいですよね?」

「いいけど、なにを?」

「くううううう! しませんー! やめましたー!」

「あはは」


 懸命な判断だね、うん。


 マリエの海鮮スープは絶品だった。

 マリエの料理にハズレ無し、だね。


 セラのごっちゃり炒めは、朝から食べるには味付けが濃すぎたし、炒めすぎて焦げていたけど……。

 それでも食べることはできた。

 うん。

 セラも成長している。

 すばらしいことだ。






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