677 宿命の対決! セラvsマリエ
「負けましたぁ」
うん。
はい。
セラは相変わらず、弱いね……。
ともかく、剣で勝負とかにならなくてよかった。
それならさすがに止めたからね。
というわけで。
セラとマリエの勝負は、いつもの、私のいいところを言い合う勝負で、わずか2ターンで決着した。
マリエの勝ちだ。
「クウちゃん、お願いっ! もう一度、ちゃんとしたチャンスをあげて」
「クウちゃんだけに?」
3連ちゃん的な。
「……クウちゃん、私、今、真面目にお願いしているよ?」
「ごめんなさい」
「お願いっ!」
「うーん。まあ、いいかぁ。マリエにはお世話になっているし、ここはマリエの顔を立てておくよ。ロッジでお話しよ」
「よかった! よかったね、シーダ」
「うう……。ありがとう……。ありがとう、マリエ。私は生涯、貴女の友情を忘れないと誓うわ」
「そんな大げさなー」
マリエに抱きついて、リリシーダがしくしくと泣く。
そんな大げさな。
と私も思ったけど……。
もしかしたら、私が思っている以上に、大事なのかも知れない。
なので黙っておいた。
ただ、だからこそ、適当に巫女認定は出来ない。
まあ、うん。
今回については巫女認定はするけど、その前に、ちゃんと、権威を笠に着ないこととかお話ししなくてはいけない。
セラにもねっ!
今日のセラは、ちょっと暴走気味だよね。
ロッジに戻ると、すぐにヒオリさんたちがもう一度ゴーレム生成を見せてほしいと詰め寄ってきた。
だけどその前に、まずはタムの紹介だ。
タムは昨日の宴には来ていなかった。
みんなとは初見になる。
私が見込んだ子であることを伝えて、タムも元気に挨拶する。
ここで初めて知ったけど、タムは9歳だった。
エミリーちゃんと同い年だ。
「タム、見ての通り、ここには人間とエルフ、それに竜と精霊しかいないけど、怖くない? 大丈夫?」
「うんっ! タム、平気っ!」
「そかー」
いい子いい子。
「タム殿は、某のようなエルフは怖くないのですか?」
膝を曲げて、ヒオリさんがタムに微笑む。
「怖くないよ。タム、エルフにもお友達いるし。ウニのいる秘密の岩場があって大人に内緒で一緒に遊んでいるんだ」
「へー。そうなんだー」
私は感心した。
エルフとリザードマンって、完全に嫌い合っていると思ったけど。
子供同士は、そうでもないんだね。
というか。
ウニ、いるんだね……。
そりゃ、まあ、いるか……。
海なんだし……。
「ウニって美味しいよねっ!」
タムが爆弾発言をした。
食べてるんだ!?
なんだか口に出すのが怖くて、私は心の中でだけ叫んだ。
だって、誰も気にしていないし。
いや、そうか!
セラたちは、ウニがなにかを知らないんだ!
キアードくんのところでも、ウニの料理は出て来なかった!
そういうことか!
私は心の底からほっと胸をなでおろした。
「えっとね、みんな、ウニっていうのはね。海にいる生き物で、」
私は説明してあげようとした。
するとアンジェが肩をすくめた。
「知ってるわよ。黒いイガイガでしょ」
「なんで知ってるのお!?」
「って言われても……。海に行ったことはなくても、一般常識でウニやカニくらいなら知ってるでしょ」
「そうなのっ!?」
「ええ。エミリーも、旅に出る前から知ってたわよね?」
「うん。知ってたよ。ちゃんとわかったのは、師匠にカニと一緒に見せてもらってからだけど」
「ほら」
なんと。
「でも師匠は、ウニは食べられないハズレだって言ってたなぁ……。美味しいなら大発見だね。どうやって食べるの?」
「割って、中身を食べるんだよー!」
「そかー。中身かー」
「黄色くてふわふわで、甘くてとろとろなんだよっ!」
タムとエミリーちゃんが会話をする中……。
ハズレ……。
カメ様なウニ様を、ハズレって……。
私は目眩を覚えた。
「ごめん。みんな……。私、ちょっと疲れたから、上で寝るね。ヒオリさん、タムの面倒を見てあげて。今夜はここに泊まるから」
「はい。わかりました。しかし店長、大丈夫ですか? 顔色は良いですが本当にふらふらですね……」
「大丈夫ー。少し寝れば平気だからー」
「クウちゃん! わたくしが付き添いますっ!」
「ううんー。セラはみんなと、タムに色々と教えてあげてー」
「でも……」
「いいからいいからー」
私は力なく手を振って、1人、階段を上った。
あーでも、そうかー。
帝国では、魚貝を生で食べる文化はなかった。
お寿司も驚かれたものか。
ウニは基本、生食だし、そりゃ、ハズレ扱いにもなるよね……。
でも……。
カメ様なウニ様、食っちゃうんだ……。
ごくり……。
ウニって、美味しいよね……。
わかる……。
特にさ、
こう、
お酒なんかくいっと、しながらだとね……。
くうううう……。
少し寝よう。
私には、思考をリセットする必要がありそうだ。
今日は長期メンテでいつもの時間にアップ出来ませんでした><




