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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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667 夜の宴!





 こんにちは、クウちゃんさまです。


 私は今、南の島に来ています。


 そして、島に住むエルフとリザードマンを招いて、お祭りという名のお食事会を開いています。

 目的は、お互いの文化を少しでも知ること。


 獲った魚をそのまま生で食べて暮らすリザードマンには、焼いた魚をご馳走して気に入ってもらえました。


 そして今、エルフの女の子がお寿司を食べています。


 サーモンとアボガドとオニオンの上にマヨネーズをかけた、前世の回転寿司でよく食べていたお寿司です。


 エルフは、魚の生食はしません。

 リザードマンと違って、普通に寄生虫に当たってしまうからです。


 それを今回は、黙って――。

 わかりにくくして、食べさせてしまいました。


 怒られるかもしれないけど……。


 生の魚も悪くないものだと、少しでもわかってもらえればいいと思います。



「どう?」


 食べ終えるのを待って、私はたずねた。


「はい……。あの……。これはもしかして……。美味しかったのですが……。生の魚の料理、なのでしょうか……」

「うん。そだよー」


 私がうなずくと、エルフたちが軽くざわついた。


「あ、ちゃんと毒は抜いてあるし、安全にはしてあるからっ! 今夜は特別ってことで味わってほしいなー!」


 失敗したかなぁ、と焦ったのだけど――。


 エルフの女の子が笑顔で言った。


「はい。素晴らしい体験をさせていただきました。私たちは普段、生の魚を食べることはないのですが、こんなにも美味しいものだったのですね」


 よかった!

 社交辞令のような気もするけど、気に入ってくれたようだ!

 他のエルフのみんなも、美味しいと言ってくれた。

 社交辞令でも十分だよね!


「ちゃんと調理すれば、なんだけどねー! 生の魚も、普通にニンゲンやエルフでも食べられるものなんだよー! ちなみに私も大好きで、特に今のお寿司は好物のひとつなんだー!」

「へえ……。お寿司という料理なのですね」

「興味があるなら、一応、作り方だけ、教えてあげようか?」

「はい。ぜひ」


 寄生虫等の危険があるので、ぜひ食べてね、とは言えないけど――。

 エルフの女の子はリリシーダというらしい。

 エルフの巫女で、今夜、芸を披露してくれる子だった。


 この後、さらに料理を振る舞った。


 お寿司と焼き魚に加えて――。

 アンジェの野菜スープに、セラのフルーツサンドに。


 姫様ドッグに姫様ロール。

 数々の屋台料理。


 私のアイテム欄にしまってあったものを、すべて放出した。


 暗くなってきたら、魔法で明かりを灯した。


 余興として、ヒオリさんがリュートによる演奏も披露してくれた。

 ヒオリさんは多才だ。

 ちなみにリュートは、事前に私が木工技能で生成した。


 エミリーちゃんにマリエ、それにセラにアンジェにスオナは、給仕としてテーブルの管理をしてくれた。

 慣れない仕事なのに、みんなテキパキとしていた。

 働かせてごめんよー。

 でも、私とゼノとフラウには、エルフとリザードマンに声をかけるという大切な役割があったので、申し訳ないけどお任せした。

 なにしろ、私たちが声をかけるだけで、大いに喜んでくれるし。

 ここはひとつ、島の平和のために、私たちはどちらの種族も大好きだよということで平等に愛想を振りまいておこう。

 ゼノは、ぶっちゃけ、恐れられていたけど……。

 まあ、うん。

 それはそれで大切な要素だろう。


 芸も見事だった。


 リリシーダさんを中心としたエルフの舞いは、管楽器の奏でに乗って、神殿の儀式みたいに美しくて流麗だった。

 リザードマンたちの太鼓の音色に合わせた踊りも剛勇で素晴らしかった。


 どちらも芸といえば、音楽に合わせて踊るものなんだねー。

 これもまたお互いの理解につながれば嬉しい。


 私はどちらも褒め称え、明日と明後日でそれぞれの島を回って、両方の種族に祝福してあげることを約束した。

 まあ、うん。

 実は最初からその予定だったのさ!

 お約束というものだ。


 余った食べ物は、すべて、お土産で持って帰ってもらった。


 宴は大成功!


 だったと思う!


 エルフとリザードマンの直接の交流はまったくなかったけど、そこまでは最初から目指していなかったしね。


 最後は――。


 一緒にお見送りするため、それぞれの浜から船を持ってきてもらって――。

 私たちは――。

 月と星に照らされる静かな内海を去っていく両種族をお見送りした。


 ようやくロッジに戻ったのは――。


 日付が変わって午前1時のことだった――。


 疲れた。


 私は床にへたばった。


 だけどセラたちは、まだまだ元気のようだ。


 セラたちは、特にリザードマンたちの陽気さに驚いていた。

 給仕をしつつ楽しくおしゃべりできたそうだ。


 エルフたちとは、いまいち、打ち解けられなかったようだけど――。

 島暮らしなのに洗練された所作に感心していた。


 ヒオリさんが言う。


「ここの島のエルフは、今から200年ほど前に、西の大陸から流れてきた一族のようですね」

「西の大陸かぁ。そんなのあるんだね」

「オークの大帝国があるそうですよ。エルフの国は戦いに敗れて、その大帝国に併呑されてしまったようです。彼らは異種族からの支配を受け入れず、新天地を求めてここに来たようです」


 エルフの国では、発展した文化的な暮らしをしていたようだ。

 所作が洗練されているのは、それ故なのだろう。


「へー」


 世界は広い。

 まだまだ知らないことだらけだ。






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