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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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658 クウちゃんさま、こっそりと開けてしまう



 気になる……。

 正直、ものすごく気になる……。

 悪魔フォグの宝箱……。

 一体、中に、なにが入っているのだろうか……。

 ただ、ゼノの言う通り、罠だったら大変だ。

 みんなに迷惑がかかる。

 でも、開けたい。

 開けちゃいたいね……。


 みんなと合流した私は、そんなことばかりを考えていた。

 一応、宝箱のことは、ゼノと一旦保留にした。

 なのでみんなには言わなかった。

 面倒なことは、旅が終わってからでもいいだろう、と、いうことで。




 島にいた魔物を殲滅して――。

 みんなと合流した後――。


 私たちは、魔物の跋扈していた真ん中の島の、砂浜に降り立った。

 白い砂浜だった。

 青い空と、エメラルドグリーンの海があった。

 キアードくんと過ごした帝国南岸の砂浜も素晴らしかったけど――。

 白と青の純度は、完璧にこちらの方が上だ。


 そのあまりの美しさに、みんながわーっと海に駆けていく。


「クウちゃん」


 ああ、しかし……。

 宝箱か……。


「クウちゃん?」

「あ、うん。なぁに、セラ」

「今夜はここで泊まるんですよね?」

「そだねー」

「テントを立てる場所は、どうしますか? 砂浜の奥はすぐに森になっていて適当な空き地はなさそうですけど……。テントを砂浜に立てるのは、ペグで固定できないから難しいですよね」


 ふむ。


 私、思う。


 この南の島には、何日か滞在する予定だ。

 どこに立てるかはともかく……。

 その間、ずっとテントというのは、ちょっと大変な気もする。

 他の島々も探検する予定なので……。

 現地人がいれば交流して、泊めてもらったり、あるいは普通に宿なんかがあるかも知れないけど……。


 私は、ユーザーインターフェースから……。

 木工技能の生成アイテム一覧を出して……。


「よし。あるね」


 マイハウス用のログハウスを見つけた。

 ちゃんと作れそうだ。

 ついでにマイハウス用の備品アイテムとして、トイレやキッチン、お風呂なんかも生成可能だった。

 木材以外の素材は足りるので、全部、作ってやろうっ!


「なにがあったんですか?」

「セラ、テントは一旦、やめておこう」

「はい。わかりました。でも、泊まる場所は……」

「私の木工技能でログハウスが作れそうなんだよ。材料集めに協力してもらってもいいかな?」

「もちろんですっ! わたくし、なんでもやりますっ!」


 というわけで、みんなにも来てもらって。

 まずは、おうち作り。

 木を切って、持ってきてもらった。


 私は、運ばれた原木を魔法で木材に変えていく。

 地味だけど、けっこう大変だ。


 木を切るのは、ヒオリさんとアンジェが風の魔法でさくさくと。

 運搬は、土魔法で身体強化したエミリーちゃんと、幼女のままでも脅威の怪力を誇るフラウがさくさくと。


 マリエには、焚き火用の枯れ枝を集めてもらった。


 ゼノは散歩に出かけた。

 実質的には、周囲の島々の状況確認だね。


 なんでもやってくれるというセラには、昼食の準備をお願いした。


「えー。わたくしだけ別のことですかー。そんなー」

「なんでもなんでも♪」

「ううー」

「セラ。そこは、せらー、でしょ?」

「……せらー。って、もー。それはやめてくださーい!」


 ぽかぽか叩かれた。

 かわいい。


「でも、セラもこの機会に簡単な料理は作れるようになった方がいいよね。サンドイッチのリベンジしよう」

「……わかりました。そうですね。わたくし、頑張ります」


 前回、セラは、サンドイッチすらまともに作れなかった。

 でも、セラは物覚えが早い。

 今度はちゃんと、作ることができるはずだ。

 私は信じているよっ!

 というわけでテーブルを出して、その上に材料を一式置いて、あとは頑張ってもらうことにした。


 そんなこんなで。


 セラの作ってくれたサンドイッチで休憩しつつ。


 集めた木材の山を前に――。


「生成、ログハウス!」


 私は、最大限に精神集中して木工技能を発動させて――。


 ふう。


 2階建てのログハウスの生成に成功したのでした。


 あとは家に入って、トイレやキッチン、お風呂を生成して、ちゃんと燃料となる魔石もセットして。と。


「ふう。完成です!」


 我ながら、なんとか頑張った。


 で……。


「さすがにちょっと疲れたから、私、少しふわふわしてくるね。水着とか食材は全部出しとくから、みんなも好きにしててー」


 私は空に浮かんで1人になった。

 私はちょっと嘘をついた。

 実は、そんなに疲れてはいない。

 だけど私は、実は、ずっとそれなりに上の空だった。


 ふわふわ。

 ふわふわ。


 ふわふわしつつも、心は落ち着かない。


 宝箱……。


 開けよう……。


 そう。


 宝箱の中身が、気になってどうしようもなかった。


 セラたちから離れた島の反対側の砂浜に、私は降り立った。

 防御魔法、強化魔法を一式かける。

 防御用のアクセサリーは、すべて身につけた。

 我が愛剣――神話武器『アストラル・ルーラー』も腰に装着した。

 万全の体勢だ。


 私はアイテム欄から宝箱を取り出して、砂の上に置いた。


「いざ……」


 緊張が高まる。


 悪魔フォグの宝箱……。


 一体……。


 何が入っているというのか……。


 手は使わず、念の為、銀魔法『重力操作』で、留め金を外して、蓋をゆっくりと持ち上げる。

 蓋は、特に抵抗なく開いた。


 宝箱の中身が、私の目の中に入ってくる。


 十分な量の緩衝材の上に、赤い布が敷かれていた。


 その上に置かれているのは――。


 4つのグラスに――。


 そして――。


 私は、それが何なのか、すぐに理解することができた。


 私は息を呑んだ。


 それは――。


 この世界に転生してから――。


 未だ一度も口にしたことのないモノ――。


 前世の私が愛して――。

 死亡するきっかけとなったモノ――。


 それは――。


 お酒。


 だった。





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― 新着の感想 ―
[良い点] ん?いま何でもするって?\(^o^)/ [一言] 禁断のアイテムキタ━━━━(゜∀゜)━━━━!! 早く封印か破棄しないと、精霊も聖女も勇者も王女もみんな等しく死んでしまう/(^o^)\…
[一言] お酒が原因で異世界に…という設定を忘れてて、ついでに初期のエピソードも気になったので1話から読み直そうと思いましたが、やっぱり書籍版の楽しみにとっておくことにしました。 つまり、書籍版はよ…
[一言] とある光の精霊「魔王なのです!魔王が降臨したのです!さっきの魔力は間違いなく魔王の仕業なのです! 魔王クウちゃんが持つその赤いワインみたいなお酒はきっと悪魔の血なのです!やっぱりクウちゃんは…
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