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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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638 朝っ!




 朝。


 私は、実に爽やかに目覚めた。


 ふわふわの布団、最高でした。

 ベッドのスプリングの硬さ、ちょうどよかったです。

 空調も完璧でした。


 さすがは、ローゼント公爵家のお屋敷。

 隙がありませんでした。


 旅の疲れもパーティーの疲れも、すっとんでしまいました。

 スタミナ全快です。



 マリエとスオナはもう起きていた。


 スオナは水を飲んでいる。


 マリエはパジャマを脱いで、下着姿でストレッチをしていた。

 わざわざ下着姿でしなくてもいいのに……。

 と思ったのだけど。

 ローゼントさんから借りたパジャマを破いたりしたら大変なことになるから、ということだった。

 なるほど。

 たしかにパジャマはローゼント家からのいただきものだ。

 高価に違いないよね。


 ちなみに私とスオナもいただいたパジャマを着ている。


 さらに言うならば、下着もいただきものだ。

 アーレの服屋さんが大量の下着とパジャマを準備して、わざわざ私たちのために来てくれていたのだ。

 あと、ドレスもか。

 まあ、ドレスは返したけど。


 ホント、いたせりつくせりだった。


 というわけで、マリエは下着も破れたら大変だ。

 いっそ全裸でやったら?

 と言ったら、怒られた。

 ごめんなさい。


 私たちの衣服一式は、朝までに綺麗にしておいてくれるということでお屋敷のメイドさんに預けてある。

 ぶっちゃけ、私のアイテム欄に入れれば綺麗になるし、スオナの洗浄魔法でも綺麗にはできるのだけど――。

 やってくれるというのを断るのは無粋だろう。

 ありがたくお願いしておいた。


 私が起きたところでドアがノックされて――。

 メイドさんが、綺麗になった衣服を持ってきてくれた。

 さすがのタイミングだ。


 私は、部屋の洗面所で軽く身だしなみを整えてから、パジャマを脱いで、いつもの精霊の服に着替えた。

 マリエとスオナも服を着た。


 服を着て、少しのんびりしたところで、またドアがノックされた。


 朝食の準備が整ったらしい。


 食堂に入ると、もうみんな揃っていた。

 待たせちゃったかな、と、思ったけど、そんなことはなく、だいたいみんな今来たところのようだった。

 メイドさんがキチンと時間は調整しているらしい。

 さすがだ。


 テーブルには私たちに加えてローゼントさんご一家とブレンダさんもいた。

 なかなか大勢だ。


 あれこれおしゃべりしつつ、豪華な朝食をいただく。


 そして、出立だ。


 お屋敷の前で私たちは馬車に乗った。

 馬車もまたローゼントさんが用意してくれたものだ。


 見送りには黒騎士の人たちも来ていた。

 この旅がおわれば、ゼノがひと夏をかけて鍛えることになっている人たちだ。

 すでにハイテンションな隊長さんたちの訓示を受けているのだろう……。

 ゼノのような少女に教えを請う。

 そのことに対して、反発を抱く素振りを見せる者はいなかった。

 むしろ、早くも緊張している様子だ。


 お世話になったお礼を言って、私たちはお屋敷を出た。

 馬車は、隊長さんを始めとした10名の黒騎士が護衛してくれる。

 私が鍛えた人たちだ。

 完全武装で、かなり大げさだった。


 正直、帰りは、あまり目立ちたくなかったんだけど……。

 襲われたところで平気だしね……。


 でも、ハイテンションに「護衛する喜び」を語られてしまって……。

 断ることはできなかった……。


 ともかく、最初に向かうのはアンジェの家だ。


 黒騎士の先導を受けて家に近づくと、玄関先で待っていてくれたアンジェとその家族にギョッとした顔をされた。

 すみません。


 いったん、馬車から降りて、アンジェの家族にもご挨拶。

 ご両親は昨日のパーティーに来ていたけど、お婆さんは来ていなかったしね。

 お婆さんは足腰が弱いのか車椅子に座っていた。

 1週間前に段差で転んでしまって、足首を挫いて、それから自力で立つのが難しくなってしまったそうだ。

 治癒魔術の力で、腫れや痛みはすぐに引いたそうだけど……。

 年だから仕方ないねえ。

 と、お婆さんは笑っていたけど……。


「ねえ、クウ……。もしよかったらなんだけど……」


 アンジェが申し訳なさそうに言う。

 もちろん治してあげた。

 おばあさんが歩けるようになったのを確認してから、出発。


「ねえ、クウちゃん……」

「ん? どしたの、セラ」

「さっきの治療は、クウちゃんの圧倒的な魔力があればこそ、ですよね」

「そだねえ……。セラが治したいとするなら、お婆さんが歩けなくなった理由を明確にする必要はあったかもだねえ」


 セラでも「ヒール」の魔法で治療できたかも知れないけど――。

 あまり無責任なことは言えないので、一応、症状が重かった時のことを考えて私は伝えた。


「回復魔法は、患者の状態と治療方法を具体的に意識できるほど、効果が上がって消費魔力は下がるんですよね」

「うん。そだねー」


 なので知識が、とっても重要になるのだ。


「わたくし、がんばります。この旅の後、ユイさんの元で、しっかりと医学知識を学んできます」

「うん。がんばって」


 セラなら、きっとできると思うよ。

 私には絶対に無理だけど。


「ねえ、クウ」

「ん? どしたの、スオナ」

「やはりそれは、光の魔力だけのことなのかな? 水の魔力でも、同じことが言えるのだろうか」

「水の力は、光の力ほど治癒力が高くないから難しいかも知れないけど――。意味がないということはないと思うよ」

「勉強する価値はあるのかな?」

「それはあると思うよ。水の治癒だって、力づくにかけるよりは具体的にかける方が効果はあるだろうし」

「ありがとう。僕も勉強してみることにするよ」


「ユイさんから学ぶ知識を、共有できるといいのですが……」


 セラが申し訳なさそうに言うと、スオナは肩をすくめた。


「セラ、それは本当に嬉しい話だけど……。聖女様の知識は至宝。迂闊に人に教えるべきではないよ」

「クウちゃんはどう思いますか……?」

「んー。そだねー」


 セラから聞かれて、私は返答に困った。

 で、こう答えた。


「そこは、陛下の判断次第かな」


 うむ。

 丸投げだ!


「そうですね……。そういう話でしたね……」


 セラは残念そうにうなだれるけど、これについてはしょうがない。

 ユイの影響力は凄まじい。

 ユイはお気楽に、好きにしていいよー、と言っていたけど……。

 迂闊なことをすれば、どうなるか予測がつかない。


 ここでヒオリさんがドヤ顔で言った。


「水の魔術と医学の融合については、すでに某の方で研究を進めております。近いうちに論文を出しますので、スオナ殿はそれを読んでいただければ。我ながら水の治癒に革命を起こすと思いますよ」


 おお。

 さすがはヒオリさん。


 ヒオリさんの場合、私の工房の武具受注マニュアルもそうだけど、本当に実用的に完成させるからすごい。


 さらにフラウがドヤ顔を決めて、


「本来なら有り得ない話であるが、他ならぬクウちゃんずの事案故、妾が知識を与えたのである」

「ついでに言うとボクもね」

「はい。論文の完成は、まさにお二人の協力あればこそです」


 ふむ。


 古代竜と大精霊の協力って、何気にとんでもないことではなかろうか。


「わたしも手伝ったよ!」


 元気よくエミリーちゃんが手を上げる。


「エミリーは優秀な助手なのである」

「そうですね。特に、地味なデータ整理が得意なのは助かりました。学院に来る日が今から楽しみです」


 おお。


 ヒオリさんとフラウが、エミリーちゃんを認めている。

 これもまた、何気にとんでもないことではなかろうか。


「論文、楽しみにしています」


 スオナが言う。


「スオナ殿は、興味があるなら某の研究室に来てもいいかも知れませんね」

「へー。研究室なんてあるんだー?」


 知らなかった。


「はい。学院でもいろいろな研究をしていて、生徒が参加することもあります。ただ魔術に関わる研究が大半なので……。魔術科の生徒以外には、ほぼ関わりはありませんが……」


 なるほど。


「ヒオリさん、いえ、ヒオリ先生。よろしければ、ぜひ参加させて下さい。僕も一緒に研究がしたいです」

「ええ。歓迎しますよ。二学期になったら某の部屋を訪ねて下さい」

「はいっ!」

「クウちゃんずの一員であれば、工房の研究に参加しても良いのである。いいのであるよな、クウちゃん?」

「うん。いいよー」


 フラウに聞かれて、私はもちろんうなずいた。


「そちらもぜひっ!」


 珍しくスオナが興奮している。


 ただ、残念ながら、寮生には門限がある。

 なので夜は無理だ。

 そして。昼は授業。

 残念ながら、工房での研究に参加するのは難しそうだった。


「くぅぅぅぅぅ! そうかー! 悔しいなぁ!」


 クウちゃんだけに?

 そかー?


 と言いたかったけど。


 スオナが珍しく感情的になっていたので、言うのはやめておいた。

 私はちゃんと空気が読めるのだ。






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