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624 アルくんとミルとの再会




 こんにちは、クウちゃんさまです。


 私は今、空の上にいます。


 ゼノと2人で飛んでいます。


 近くには古代竜の姿に戻ったフラウがいて、セラたちの乗った馬車を抱えて飛んでいるのですが――。

 姿は消してあるので、普通には見えません。


 というわけで。


 ワイバーンくんとお別れして。

 ロックさんたちともお別れして。


 私たちは、計画通りに馬車でネミエの町を出て――。

 少し離れたところで、馬を馬宿に返して――。


 空の旅を始めました。


「ゼノ、さっきはありがとね。助かったよ」

「任せて。みんな、はしゃいじゃって、見ていて面白かったよ」


 ワイバーンくんの騎乗には、実は姿を消したゼノが付き添ってくれていた。

 なので安全なのだった。

 防御魔法もかけたしね。


 馬車の中も、ワイバーンくんのことで盛り上がっているみたいだ。


 ちなみに太陽は、だいぶ傾いている。

 ネミエの町で思いっきり遊んでしまって、予定よりも時間が過ぎていた。

 でも、さすがは古代竜の翼。

 夕暮れまでには、今夜のキャンプ地――。

 街道から離れた森の奥、妖精郷に近い川原に着けそうだった。


「しかし、このあたりの街道って平和でつまんないね。誰も襲われたり殺されたりしていないし。オーガでも連れてこようか?」

「やめようね!」


 娯楽を求めるゼノが怖い提案をしつつも――。


 トラブルなく、私たちは目的地についた。


 石の川原から斜面を上がった土くれの高台にフラウが着地する。

 そこは去年もキャンプで使った場所だ。

 透明化を解いて、フラウが幼女の姿に戻る。


 馬車の中からセラたちが出てきたところで――。


 森の中から、半袖半ズボンにとんがり帽子をかぶって緑色の肌をしたホブゴブリンの青年――アルくんが現れた。

 アルくんの肩には、お騒がせ妖精のミルが座っていた。

 ミルは私たちを見ると、すぐに飛んできた。


「わーい! ゼノさまー! クウちゃんさまー! セラー! ひっさしぶりー!」

「ミルちゃんっ!」


 ミルは私たちのまわりをくるくると飛んで――。

 最終的には、セラの肩の上に乗った。


「クウちゃんさま、ご無沙汰しておりますだ」

「久しぶりだねー、アルくん。元気でやってる?」

「お陰さまでオラたちは元気ですだ。ニンゲンとの取引も上手くいっているだ」

「そかー。よかったー」


 学院が始まって、まったく来れなかったから、実は心配していた――。

 ごめん嘘です。

 正直、忘れていました。

 口にはしないけどね!


 アルくんたちは、今、オダウェル商会と取引をしている。

 他では手に入らない魔法の効果を持った妖精郷の果実と引き換えに、甘いお菓子を手に入れている。

 妖精たちはお菓子が大好きなのだ。


「ゼノリナータさまもご無沙汰しておりますだ。闇の大精霊さまにまたお会いできて光栄でありますだ」

「うん。キミたちも元気そうでよかった。妖精郷は問題ないよね」

「はい。お陰さまで安定していますだ」


 ゼノは、私とは別に妖精郷に行って、境界世界のメンテナンスをいろいろとしてあげていたようだ。

 妖精郷は、ゼノのお母さんであるイスンニーナさんが作った世界。

 末永く使えるようにしてあげたいね。


「あ、スオナって貴女よねっ! 夜にはアクアも来るから! アクア、スオナに会いたがっていたよー!」


 セラの肩からミルが言う。


「そうかい。知らせてくれてありがとう。僕も早く会いたいよ」


 アクアは、スオナが生み出した妖精だ。

 スオナと契約しているけど、スオナが学院の寮に入ってしまったので、今は妖精郷で暮らしている。


 この後、みんなにもアルくんとミルのことを紹介した。


 アルくんはホブゴブリンとあって、最初は警戒されたけど――。

 無害な子であることは、すぐにわかってもらえた。


 ミルは可愛くて人懐っこいので、簡単に馴染んだ。


「さあ、では、テントを立てましょう。暗くなる前に立てないと面倒です」


 挨拶が済んだところでヒオリさんが言った。


 確かに、もう空が赤い。


 夕暮れだ。


 のんびりしていたら、すぐに真っ暗になってしまうだろう。


「じゃあ、オラたちはいったん戻って、みなさまが来たことを里に伝えてくるだ」

「うん。また後でねー」

「んだ! 夜が深くなったら、みんなと一緒に来るだ」

「みんな連れてくるねー!」


 アルくんとミルが妖精郷に帰っていく。


 今夜は楽しいことになりそうだ。


 私はアイテム欄からキャンプ道具一式を取り出した。


「ねえ、セラ。今年は私たちでやろっか?」

「はい。なにをですか?」

「テントの設営。去年は私たち、お料理当番だったし」

「そうですねっ! さすがはクウちゃんです! 挑戦してみましょう!」

「というわけでマリエとヒオリさんはお料理をお願い。エミリーちゃんも予定通り料理の方で。材料は、預かっているのも含めて色々と出すね」

「わたしはいいけど……。クウちゃん、セラちゃん、大丈夫なの?」


 エミリーちゃんに、とてもとても不安そうに言われた。

 とてとてだ。


「へーきへーき! ね、セラ」

「はい。もちろんです!」


 ゼノとフラウは、今夜は妖精が来るということで、万が一のことがないように周囲の安全を確保しに行った。


「クウ、僕は料理の方でいいかい? 自分で火を起こしてみたくてね」

「うん。お願いー」

「なら私はテントを手伝うわね。アンタたちだけじゃ不安だし。といっても、私もそういうのやったことないけど」

「うん。お願いー」


 というわけで。


 私とセラとアンジェでテントを立てて。

 マリエとヒオリさんとエミリーちゃんとスオナでお料理となった。





アルくん初登場回⇒375 新たなる出会い

ミル初登場回⇒377 妖精郷テイネス・リア


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― 新着の感想 ―
[気になる点] アクアは妖精じゃなかったっけ?
[良い点] かっぱん様へ感想の伝え方の不適切さ、誠に申し訳ございませんでした。実はコメント書いた後、実際にイベントが無かったか不安になり確認のため、アルくん初登場回⇒375 新たなる出会いまで遡って読…
[気になる点] 「じゃあ、オラたちはいったん戻って、ゼノさまにクウちゃんさまが来たことを里のみんなに伝えてくるだ」? ゼノさま?テルさまでは? 「じゃあ、オラたちはいったん戻って、テルさまと里のみ…
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