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私、異世界で精霊になりました。なんだか最強っぽいけど、ふわふわ気楽に生きたいと思います【コミカライズ&書籍発売中】  作者: かっぱん


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618 夏の旅、前日! 出発の朝!




 こんにちは、クウちゃんさまです。

 今日は7月の14日。

 いよいよ明日から10日間の夏の旅行です。


 いやー、もう、アレですよ、アレ。

 ここ数日は本気で体調が悪くて、ようやく調子が戻って、旅には楽しく出られそうでよかったです。

 もう二度と、48時間働けますか、なんてしないねっ!


 さて。


 旅の前日ではあるのですが――。


 今日は普通にお店を開けています。

 今はお客さんも途切れて暇ですが、さっきまでは忙しかったです。


「んー。なんだったかなぁ」


 椅子に座って背もたれに身を預けながら、私は考え事をする。


「どうかされたんですか、店長」


 棚のぬいぐるみを整理するエミリーちゃんが、振り返って聞いてくる。


「んー。私ね、なにか、忘れている気がしてねえ……」

「旅のことですか?」

「うーん――。旅のなにかかぁ……。なにかなぁ――」

「キャンプ道具は、店長の魔法の箱の中に入っているんですよね?」

「キャンプ道具はバッチリかなー」


 その後もエミリーちゃんから衣服や食料の確認を受けたけど、必要なものはアイテム欄に揃っていた。

 集合場所と時間も、すでに連絡は行き届いているはずだ。

 エミリーちゃん、セラ、アンジェ、スオナ。

 ゼノ、フラウ、ヒオリさん。

 あと、私……。


 リリアさんに耳寄り情報も聞きに行った。

 特になにもなかったけど。


 だけど、妙に、心になにかが引っかかる。


 忘れている気がするのだ。


 考えていると、お腹が空いてきた。

 そろそろお昼だ。


「エミリーちゃん、今日は『陽気な白猫亭』にランチに行こっか。メアリーさんにも挨拶しときたいし」

「はいっ! 店長っ!」


 お店のことは、しばし、ヒオリさんとフラウにお任せしよう。

 2人は朝から、奥の工房にこもって魔道具の製作をしている。

 様子を見に行くと、まだ熱心にやっていた。

 一声かけてから出かけた。


 陽気な白猫亭は、基本的に夜のお店なので、お昼はそんなに混まない。

 普通にテーブルに着くことが出来た。

 注文を聞きに来たメアリーさんは、今日も元気に働いている。


 そんなこんなで――。


 旅行を明日に控えた今日は、あっさりと夕暮れを迎えた。


「じゃあ、エミリーちゃん、また明日ねー」

「はい、店長! お疲れ様でした!」

「では、いつものように妾が送っていくのである。クウちゃん、今夜はゼノと過ごすので帰らぬのである」

「うん。りょーかーい」


 フラウと共に、エミリーちゃんが帰路についた。

 私はヒオリさんと2人になった。


 念のため――。


 ということで、アイテム欄からキャンプ道具等を取り出して、不足しているものがないかを確認する。


 特にはなかった。


 これだけあれば、平気だろう――。


 というわけで、なにか忘れているなぁ、と思いつつ――。


 私は寝たのでした。


 翌日。


 私とヒオリさんは、夜明け前には起きて、朝の支度を整える。

 私はいつもの精霊の服。

 ヒオリさんは、旅スタイルな和風っぽい衣装。


 夜明けに合わせて、大きなバッグを担いだエミリーちゃんがやってきた。

 半ズボンにパーカーを羽織った明るくて元気いっぱいの姿だ。

 お店の前で合流した。

 オダンさんとエマさんも一緒だった。

 エマさんの胸には、生後半年の赤ちゃんもいた。


「クウちゃん、今日からよろしくね!」

「うん。よろしくー」


 今日は仕事ではないので、エミリーちゃんは普通の喋り方だ。


 話していると、フラウとゼノが空から降りてきた。

 フラウは店番している時と同じ、ズボンにシャツ。

 ゼノは、体のラインに合わせた黒服だった。

 2人とも手ぶらだけど、必要なものはすでに私のアイテム欄に入れてあるので問題はない。

 ゼノは自分でも異次元収納を持っているしね。


 さらにアンジェとスオナがやってくる。

 2人はこの旅行のため、まだ学院の寮に滞在していた。

 大きなバッグを足元に置いた2人は、いかにも夏のお嬢さまな雰囲気のするシンプルなワンピース姿だった。


「2人とも、暴れるつもりはないんだねー」

「え? ああ……。そうね……」

「どういうことだい? ああ、そうか。去年は衛兵に海賊に、君たちは大暴れしたのだったね」

「ねえ、クウ。動きやすい服は入れてあるからいいんだけど……。剣も持ってきたほうがよかった?」

「平気だよー。私のアイテム欄にあるからー」

「ならいいけど……。って、今年も普通になんかやる気なの?」

「あははー。どうだろー。じゃあ、セラのところに行こうかー」


 銀魔法でみんなを浮かせて、透明化もかけて、空からいつもの集合場所である大宮殿の願いの泉のほとりに行った。


 すでにセラはいた。

 セラは――。

 最初から戦うことも前提にした姿だった。

 スカートに薄手のジャケット姿ながらも、足はブーツ、腰のベルトには細身の剣が差してあった。


「おはうございますっ、クウちゃん! みなさんっ!」

「うん。おはよー!」


 うしろにいた陛下たちとシルエラさんにも挨拶する。

 なんとびっくり、アンジェのおじいさんであるフォーン大司教まで、わざわざお見送りに来ていた。

 朝からありがとうございます。


 ちなみに今年、専属メイドのシルエラさんは旅に同行しない。

 セラ1人だ。


 シルエラさんはセラが学院に入って、そばにいる時間が随分と減っている。

 その分、訓練をしているそうだ。

 セラの旅の間も、サギリさんと共に鍛えるらしい。

 メイドって戦う前提だっけ……。

 と私は思ったけど……。

 エリカのところのメイドも戦闘訓練を重ねているし、今はそういう風潮なのかも知れないね。


 この後は、馬車に乗り込んで――。

 普通に帝都を出て――。

 しばらく普通に旅をして――。

 そして、ネミエの町で馬を宿駅の馬房に返して、あとはこっそりと、一気に、フラウの翼で飛んでいく。


 そんな計画だ。


「さあ、行こうかー」

「おー!」


 私が声を上げて、エミリーちゃんが拳を突き上げると――。

 セラが困ったように言った。


「あの、クウちゃん……」

「ん?」

「マリエさんはどうされたんですか? 体調でも崩されたんでしょうか?」


 …………。

 ……。


 私はようやく、忘れていた、なにかに気づいた。

 マリエは、旅には誘ってある。

 夏に一緒にバカンスに行こう!

 と――。

 ただ、ユイナちゃんの大騒動もあって、それきりになっていた。


「しまったぁぁぁぁぁ! マリエに、今日からってこと伝えてなかったぁぁぁぁ!」

「えええっ!? そうなんですか!?」

「う、うん! とにかく急いで連れてくるよ! ごめん待ってて!」

「そんないきなり、大丈夫なんですかぁ!?」

「へーきへーき! たぶん!」


 マリエは柔軟性があるしね!


 実は今日からだったよー、あはははー。

 なーんだ、そうだったんですかー。あはははー。


 で、解決するはずだ!

 うん!

 そうに違いない!


 マリエは朝からご両親とお店にいた。

 マリエは、形のしっかりした黒いバッグを肩から担いでいる。


「あっ! マリエ、もしかして旅の支度、整ってる?」


 実は話が通っていたのかな。


「え」

「え」


 あれ、ちがうのかな?

 私はこれからみんなで旅に出ることを伝えた。


「あの、クウちゃん……。私、今日は朝から撮影の仕事なんだけど……。この担いでいるのが機材で、これから出るところ……」

「いいからいいから! おじさん、おばさん、すいません、いいですよね! マリエの安全は保証しますので! もう今、セラも陛下もみんな待たせちゃってるから時間がないんだよー!」


 皇女様や陛下を待たせるなんてとんでもないと、おじさんとおばさんは快く承知してくれた。

 仕事はやっておいてくれるそうだ!

 問題なしとのことだった!

 ありがとう!


「でも私、着替えとかー!」

「へーきへーき! なんとかなるさー!」

「ちょ、待ってぇぇぇ!」


 叫ぶマリエを連れて私は飛んだ。


 とにかくこうして。


 この世界で2度目となる、夏の旅は始まったのだった。









リアルはさむさむの冬ですが、異世界はまばゆい夏!

ついに夏の旅編まで来ましたー!

やっほう\(^o^)/

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― 新着の感想 ―
マリエ...不憫すぎる
[気になる点] クウちゃんさま、流石に不味いでしょ、マリエさんのこと忘れるなんて、テヘペロしても駄目ですよ?(笑)
[一言] マリエの災難が始まる!
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